杵柄元就=も/神保篤麻=あ


も「んあー疲れた疲れた」

あ「兄さん、今日の生徒会はこれで終わりだよ」

も「あーもう文化祭の季節かあ」

あ「今年は生徒会役員以外の有志さんにお任せだよね」

も「やりたい生徒がいたんだね、びっくりだよ」

あ「執行委員かあ」

も「生徒会も本格的に要らない組織になってきたね」

あ「確かにこういう有志さんが居るだけで何でも進むね」

も「篤麻はどうしたい?」

あ「え?」

も「飛び級してまだ2ヶ月くらいで生徒会副会長だし、転部もして進学希望だし、部活も瀬下君が引き継いでくれたから放送部も廃部、本当ならまだまだ楽しめるのにって」

あ「放送部は兄さんが居なくなったから興味が無くなったし、瀬下君が適任者だから俺が居なくても」

も「強制加入は撤廃されたけど、何か好きな部活に入ってみるとか」

あ「ええと」

も「俺はね、放送部じゃなくて文芸部に入りたかったんだ」

あ「あの男子柔道部と和気藹々で鍛練に励む文芸部に?」

も「ううん、純粋に文学系の活動をしたくて」

あ「何故放送部に」

も「よく分からないんだよね、でも先輩方に恵まれたかな、高瀬先輩と一ノ瀬先輩が凄い方々だったから」

あ「橘先輩は」

も「2人の先輩方に先に仕事を教わってたから、特に副部長の高瀬先輩に。だから自分が現部長なのにって嫉妬とかの八つ当たりしか出来ないだけで」

あ「先代生徒会長としてもどうだかと思うよ」

も「水泳部と硬式野球部を復活させたからいいんじゃない?」

あ「俺は血判を初めて目にして新鮮だったよ」

も「あはは、俺も~」

あ「血判のあれ、親指の指紋だからやっぱり」

も「部長さんから聞いたよ、犬歯で親指を噛んで血を出して押すように言われたって、その後の部活動で手が痛くて大変だったとか」

あ「犬歯で?」

も「篤麻が真似したら親指を食いちぎっちゃうからやめてね」

あ「ああそうか、皆さんは多少なりとも加減をして血を出す程度に噛む力を制御したんだね、124人が」

も「じゃあリストを学院長に届けながら帰ろうか」

あ「金庫に鍵をかけるよ」

も「ありがとう篤麻」


も「ただいま帰りました」

あ「ただいまです」


苗字は違えど、2人は家族です。

色々ワケアリの。



今江俊樹=と/杵柄元就=も


と「何、その弁当」

も「母さんの手作り弁当だけど?」

と「いや、海苔で文字がさ」

も「最近の流行りだってさ」

と「流行ってんの?殺害予告が」

も「うん、俺も最近知ったんだけど、この他の文字の意味」

と「思い切り『もう死んでみ?』と書いてあるじゃん」

も「海苔を切る技術が秀逸だよね」

と「1人息子にそんな弁当作る母親がいるのかよ」

も「前に、デスってあって意味が分からなくてさ、ですますのですをカタカナにしたのかなとか」

と「えーと、ゲームじゃない?」

も「瞬殺する黒魔法だね」

と「へえ…」

も「あと、ザキ」

と「それもゲームじゃね?」

も「一個体を即死させる呪文だね」

と「殺す気満々かい」

も「流行ってるみたいで」

と「殺害予告が?」

も「たまーに小さくザオラルとかついてくるよ、半分の確率で蘇生させる呪文」

と「へ、へえ」

も「今江はまた仁科さんの手作りお弁当だね」

と「寮母さんが作ってくれるのに断って罪悪感」

も「仁科さんはタコさんウインナー好きだね」

と「前に聞いたんだよ、手抜きじゃないらしくて」

も「仁科さんが手抜きをする筈がないよ」

と「タコって海にいるじゃん?」

も「居るね」

と「海の生物ですいすい泳ぐってやっぱ鮫とかシャチとかクジラとかさ、飛び魚とか」

も「そういう皆さんはなかなかお弁当で再現は難しいよね」

と「らしいんだよ」

も「鮫となったらモロサメとか、シャチはちょっと駄目だけど鯨肉って固いしお弁当に不向きかな、飛び魚をお弁当に入れる人は少ないよ」

と「うん、代表格がタコさんウインナーだからって」

も「今江は水泳部の部長だし、仁科さんも女子水泳部の部長だし、同じ部活でしか逢えないから余計に何か共通点を見つけてくるって感動だよね」

と「…でもダブルブッキングで将棋部潰しちゃったじゃん…五馬が副部長だった将棋部」

も「気にしないでいいんじゃない?もう強制的に部活加入しなくていいんだからさ」

と「杵柄は放送部、部長だったのに即辞めたよな」

も「適任者が居れば大丈夫な部活だったし、俺も晴れて帰宅部に入部出来たし」

と「帰宅部は入部しないよ」

も「え、部ってあるじゃん」

と「顧問の先生いないじゃん」

も「放送部にも顧問の先生は居なかったよ?」

と「うっそ」

も「元OBの先輩がやらかした事件がきっかけで誰も顧問になりたがらない放送部だったからね」

と「へえ…」

も「高瀬先輩と一ノ瀬先輩が居れば顧問の先生が居なくても平気だったしね」

と「卒業しちゃったからなあ」

も「だから俺も卒業したんだよ」

と「自分が放送部辞めたかったから、生徒会長として部活強制加入制度の撤廃を実現したのか?」

も「俺は後付けだよ。名前は出せないんだけど、部活に入りたくないって生徒がかなり居て、アルバイトしたいとか、放課後はもっと有意義に過ごしたいとか、進学の為に塾行きたいとか、好きな習い事に時間を割きたいとか、色々な意見、希望が寄せられててさ」

と「かなり?」

も「かなりだね。で、アルバイトも個人の自由性を優先して、出来るようにもしたんだ。学院長が寛大でよかったよね」

と「そうなんだ…」

も「今江は水泳部のエースだから学院長も鼻が高いと思うよ?あと7個試合があるでしょ、夏までに」

と「あるけどさあ」

も「仁科さんと2人でエース同士切磋琢磨でさ」

と「そ、そう?」

も「嬉しいじゃん、クラスメイトが有名になるって」

と「それは俺達の台詞だよ」

も「え?」

と「まさかうちのクラスから生徒会長がとかびっくりだよ」

も「世襲制だからってさ、俺は断れたら断ってたよ」

と「杵柄がならなかったら誰がなってたんだか」

も「先代が卒業まで続けるとか」

と「聞きたくない」

も「みんな嫌がってたの?」

と「一番の被害を被ったのはうちのクラスだよ、それ以上に杵柄自身だろ、ああもう何なんだよあいつ」

も「一番辛かったのは今江と町田だよ、今江は水泳部部長なのに怪我させられて見学ばかりだったし、町田も左足首捻挫が長引いたし」

と「うちらよりお前」

も「俺は平気だけど?」

と「…はいこれ」

も「何?」

と「さっき買ってきた飲み物」

も「…」

と「牛乳じゃないから。」

も「良かったよ、もう少しで今江をぶちのめすところだったよ」

と「牛乳じゃないから!」

も「俺にブツを送りつけてくるのは例の組織だけでいいよもう組織崩壊したらいいよ」

と「身長高いと辛いな」

も「死にたいよね」

と「死なんで」

も「今江に30センチあげるよ」

と「俺が2メートルを超えるわ」

も「確かに…今江は178センチだしね」

と「…生徒会長怖い」

も「俺はブツを消したい」

と「食べ終わったら?」

も「歯磨き行ってきます。」

と「あはは、女子力高いな~相変わらず」

も「今江」

と「ん?」

も「俺は対人恐怖症、特に女性が死ぬ程苦手ね」

と「克服したまえ生徒会長」


杵柄君はお弁当の後に、歯磨きをして洗顔をして爪を磨いてハンドクリームを塗る、ルーティンが辞められない。




今江俊樹=と/五馬無動=む


と「おっはよーん」

む「相も変わらず平和か」

と「兄ちゃんが居ないだけで俺は幸せになれるんだよ」

む「悲惨」

と「何してんの朝から」

む「今度の全国模試の日程確認」

と「うちのクラスで全国模試受けてるの五馬だけだしなー」

む「自分が今どこら辺か解るぞ」

と「分かりたくない」

む「偏差値とか」

と「知りたくない」

む「受験生にあるまじき」

と「俺は今、目が醒めた」

む「おはようさん」

と「おはよう~」

む「だからその俺の背後に挨拶すんのやめてくれないか」

と「んー」

む「俺の背後に居る、多分女性、とやらはどんななんだよ」

と「お」

む「は?」

と「うん、女性だ。」

む「何した」

と「髪の毛だらーだから顔が見えなかったんだよ、髪の毛長いから多分女性って俺も認識してたんだ」

む「何した」

と「髪をかきあげた」

む「で」

と「女性だよ」

む「どんな顔」

と「美人系」

む「年の頃とか」

と「ちょい年上?」

む「何でそんな微妙な情報しかくれないんだよ」

と「だって消えたりくっついたりまちまちだからだよ」

む「…」

と「そういやさ、町田の後ろにも居るんだよね」

(町田=クラス副委員長の女子)

む「みんな背負ってんのかよ」

と「俺が兄ちゃんを背負うかの様だよ…」

む「意味が異次元だが」

と「お、澄の後ろの人は分かる!」

(澄=クラスの武闘家女子)

む「誰」

と「アントニオ猪木。」

む「本人に言ってやれ、死ぬ程喜ぶ」

と「何で」

む「お前それでよくクラス委員長やってんな」

と「面白いよ」

む「ああそうかい」

と「五馬は風紀委員じゃん、楽しいか?」

む「役職を楽しむ人間じゃない」

と「書き終わった?」

む「一応。土曜だし暇だし」

と「え、土曜日暇なの」

む「俺が居た将棋部を潰してくれた相手に敬礼だな」

と「…」

(将棋部を潰したのは今江君の彼女)

む「水泳部はどうよ」

と「めっちゃ楽しい。」

む「おめでとさん」

と「今年の夏で引退だよ…塩素との別れ」

む「大会ってあといくつ」

と「7個」

む「学業との両立出来るって才能だよな」

と「塩素が俺を呼んでいる」

む「何で塩素が好きなんだよ」

と「匂い?」

む「何故疑問計」

と「昔がぶ飲みしてさー」

む「やめてくれないか」

と「カナヅチ克服迄のがぶ飲みだよ、今となっては味も思い出せないね」

む「何歳の時」

と「2歳から始めたらしいんだよね、カナヅチ克服したのがすぐらしいんだよね」

む「無意識か」

と「体育でたまーに水泳だと俺は嬉しかったよ」

む「お前のあだ名知ってるか」

と「え?」

む「あだ名。つけたのが誰かは言わないが」

と「え、知りたい」

む「人魚王子」

と「…え」

む「リアルマーメイド王子」

と「え」

む「水泳貴族」

と「何それ」

む「水を得た貴公子」

と「だ、誰がそんなあだ名を俺に」

む「よく考えれば解る」

と「えー」

む「提出してくる」

と「待ってれば郷戸先生来るじゃん、ホームルームそろそろだし」

む「たまには歩かないと」

と「ん?徒歩通学じゃん」

む「最後の年だし、しみじみ歩くんだよ」

と「おー…」


む「俺の背後が気になってテンパリだよ」

(今江俊樹は霊感がめっちゃ強いらしい)

五馬無動=む/杵柄元就=も


む「読書家さんよ、何か好きな小説とかないのか」

も「あるよ、小松左京先生の短編集にある、霧が晴れたとき、とか…」

む「あああれか」

も「し、知ってるの」

む「読んだことはある」

も「霧がさ、敵か味方か分からないから不思議なんだ」

む「敵か味方、か」

も「家族を奪う敵か、むしろその方がよかったからの味方か」

む「ん?むしろ、の意味は」

も「母親と娘が後々不幸を連れてくるみたいな?」

む「成程」

も「五馬は」

む「同じで不思議だな」

も「何が不思議?」

む「何故登山計画が出来てたか」

も「え」

む「しゃあない、前提条件で登山だからそれはしゃあない」

も「それはってことは別にも」

む「何故避難小屋が出てきたか」

も「山には、あるんじゃないの」

む「にしては用意周到だなと」

も「実は俺、登山の経験は無いんだ」

む「俺もしてる暇無かったな」

も「でも本とかを読む暇は、暇と言うか、時間はあったんだ?」

む「起きてるにはちょうどいい時間潰しになるからな」

も「そう」

む「後は何故、男だけが見回りに出たかだな」

も「熊とか出てきたら大変だし」

む「別段男尊女卑してる訳じゃなく、ほれ、小屋に戻ると料理してたみたいな記載があるだろ、家庭的な奥様とそれを手伝う健気な娘っぽい」

も「確かに」

む「でも居ないだろ」

も「そうなんだ」

む「だから何故霧がその日に限って、とも考える」

も「天気予報は外れるよ」

む「山の天気は変わりやすいしな」

も「な、何か経験者みたい」

む「いや、登山経験は無い。たまにテレビで登山家番組見てたからその気にはなってたが」

も「テレビっ子」

む「俺の代名詞の1つだな」

も「本は読むし、テレビも見るし」

む「起きてるにはちょうどいい時間潰しになるからな」

も「ちなみにさ、まだ謎はあるの」

む「霧の正体とか」

も「敵か味方かとか?」

む「それもあるけど後味の悪さとかな」

も「後味の悪さ?」

む「結果的に残された父親と息子のみの世界になってるだろ」

も「確かに下山すると誰も居ないね」

む「そのまま時が進むとどうなる」

も「え?」

む「いずれ父親は寿命で死ぬだろ、人間だから」

も「死ぬね」

む「残るのは誰よ」

も「息子さん」

む「孤独死する未来がチラッと見えないか」

も「…見えた」

む「だから後味の悪さがな」

も「女性は強し、とか思った」

む「人間は男女揃わないと繁殖が無理だろ、つまりは時が進んで、もし霧が連れ去ったかも知れない他の人を戻さなかった場合、息子1人では人類滅亡しかないかなと」

も「返してくれるのかな」

む「まだ霧が犯人と決まった訳じゃないから後味の悪さが際立つ」

も「他に誰も何も居ないよ」

む「逆だよ」

も「逆?」

む「不都合的に世界から抜粋されたのが、父親と息子かも知れない線」

も「え?」

む「しゃあない、視点が二人の目線だから主役がこの二人かなと最初から思わされてるし」

も「主観が客観、みたいな?」

む「後味の悪さだよ」

も「不都合なのは霧が置き去りにした、二人の方?」

む「もしかしたらだよ」

も「其処まで考えてなかった」

む「逆転の発想みたいなやつ」

も「でもそうなると、居なくなった皆verが読みたくなる」

む「なるよな」

も「でも、」

む「無いから後味の悪さよ」

も「他には謎がある?」

む「謎というか、何故あの話をお前が読んだかだな」

も「たまたま目に入って」

む「文庫本か」

も「うん、ホラー系は知らなかったから」

む「黒い装丁がシックでいいよな」

も「確かにあそこら辺は黒い本ばかりだったよ」

む「そういうジャンルだから黒い装丁でズラリよ」

も「他にはどういう話とか読むの」

む「手当たり次第」

も「読書家だね」

む「起きてるにはちょうどいい時間潰しになるからな」

も「例えば何が好き?」

む「好きな作家さんでは、吉本ばなな先生がいる」

も「好きな理由は?」

む「じわーっとラスト前くらいと読み終えて余韻に浸る時にめたくそ泣けるから、か」

も「な、泣くの」

む「泣くよ」

も「うっそだあ」

む「人間は涙を流して強くなる」

も「…え?」

む「俺はありとあらゆるものから泣かされ喚かされ、今の俺になったんだ、泣いては泣き止み、その都度少しは成長出来たか、と考えたりもする」

も「深い」

む「吉本ばなな先生では、ムーンライトシャドウが一番泣けるかな俺は、後は代表作、キッチン。白河夜船も泣くしな、つぐみも泣けたな」

も「読みたくなってきたよ」

む「貸すか?」

も「え、持ってるの?」

む「そら室内で読むから買うわ」

も「図書館で借りたりとか」

む「悪いが悠長に図書館に寄ってる暇が無い、学校の授業中だったら図書館に行く暇はあるが」

も「ええと」

む「ハードカバータイプと、文庫本タイプ」

も「え」

む「え?」

も「ふ、二つもあるの?」

む「保管用と持ち歩き用に適してるんだが」

も「同じ作品なのに?」

む「たまーに編纂されて改編されて別な話が入ったり抜かれたりという小説文庫版があるんだよ、それにハードカバー仕様だとオリジナリティ感満載でいいぞ」

も「す、すごいね」


楽しい二人の会話。





前の病院に復帰大作戦でした。


主治医はド忘れしてました。

紹介状を依頼したことを。


「2月から来てないんだから、薬をちゃんと飲まないと駄目だよ」

「…」

転院したことを忘れられている。

返す言葉が無かった。


薬剤師が来て、

あーだこーだと文句の嵐だった。

エビリファイならうちでも出してた筈とか。

違いますー、

エビリファイはエビリファイでも、

私はOD錠なんですー、

普通の錠剤や液剤だと頭痛が酷いんですー。

意味不明なんだが。


ジェネリックじゃないワイパックスとジアゼパムを貰えた…

しかも再診扱いだった…

28日分出して貰えた…


クエチアピンはジェネリックだけども、リスペリドンもあるけれども、ベルソムラ、

…あれ?

悪夢見るから此れは要らん、

と言ったのだが、

主治医は左耳から右耳にすり抜けさせたのか…

でも28日分はでかーい!

安泰…