【ソウルで見つけた小さなパスポートの大きな可能性】

 

2026年9月、ソウルの国立古宮博物館に「国家遺産訪問キャンペーン ソウル広報館」が新しくオープンしました。

今回、私がここを訪れた目的は、一冊のパスポートを受け取ることでした。

海外旅行に使うパスポートではありません。韓国各地の国家遺産を巡りながら、専用のスタンプを集める「国家遺産訪問者パスポート」です。

最初は、スタンプを集めるための記念帳だと思っていました。しかし、実際に広報館を訪ねてみると、この小さな冊子には、韓国の歴史と文化を旅するための大きな仕組みが隠されていました。

 

 

【景福宮の隣に誕生した、国家遺産の新しい案内所】

 

ソウル・景福宮のすぐ隣にある国立古宮博物館。

私は今回、その1階に新設された広報館を訪ねました。

館内を歩きながら場所を探していると、カフェの奥に目的の広報館を発見しました。

「ああ、ここにあったんだ。」

2026年9月10日から、この場所で国家遺産訪問者パスポートを直接受け取れるようになりました。

これまでは仁川国際空港が主な受取拠点でしたが、ソウル市内にも新たな窓口が設けられたことで、旅行者にとって利用しやすくなりました。

特に景福宮という韓国を代表する歴史観光地の隣にあることには意味があります。

宮殿を訪れた人が、その場所の歴史に興味を持ち、さらに韓国各地の国家遺産へと関心を広げられるからです。

 

【クイズを解きながら、景福宮の知らない一面を発見】

 

広報館で私が興味を持ったのは、パスポートの受取窓口だけではありませんでした。

館内には、デジタル技術を活用した体験スペースが用意されています。

私もタブレットを使い、景福宮に関係する動物を探すクイズに挑戦してみました。

画面に登場したのは、韓国の伝説上の動物「ヘテ(獬豸)」です。

景福宮では建築や彫刻にさまざまな動物の姿が見られますが、普段はその意味まで意識することがありません。

ところがクイズに答えながら学ぶと、見慣れた宮殿にも、まだ知らない物語が隠されていることに気づきます。

ここでは歴史を一方的に説明するのではなく、訪問者自身が問題を解きながら発見する仕組みがつくられていました。

次に景福宮を歩くときには、建物だけでなく、その周囲にいる動物たちにも目が向きそうです。

 

【76か所から100か所へ――広がる国家遺産の旅】

 

今回、私が受け取ったのは、国家遺産訪問者パスポートのシーズン2です。

対象となる訪問地点は、これまでの76か所から100か所へと拡大されました。

国家遺産訪問キャンペーンは、韓国各地に点在する文化遺産をテーマ別のコースで結び、旅行者が実際に訪問しながら歴史と文化に触れることを目的としています。

訪問者は各地の指定された場所でスタンプを集めながら、韓国のさまざまな地域を巡ることができます。

韓国には、ソウルや慶州のような有名な歴史都市だけでなく、地方にも重要な文化遺産が数多く残されています。

私自身、韓国の文化遺産を取材する中で、一つの場所を訪れたことが、次の旅につながる経験をしてきました。

このパスポートの魅力も、まさにそこにあります。

単に訪問記録を残すのではなく、これまで知らなかった土地へ足を運ぶきっかけをつくってくれるのです。

 

【外国人旅行者にも開かれた、韓国文化への入口】

 

パスポートの受取方法にも注目しました。

韓国在住者はオンラインで事前申請し、受取場所としてソウル広報館を指定できます。

また、外国人観光客は1日50人を上限として、現地での申請も可能と案内されています。

韓国の文化遺産に関心があっても、どこから訪ねればよいのか分からない旅行者は少なくないでしょう。

そのような人にとって、テーマ別の訪問コースとスタンプという仕組みは、歴史への入口になります。

さらに、デジタル体験やフォトゾーンを備えた広報館は、専門知識がなくても国家遺産に親しめる場所となっています。

歴史を「難しいもの」から「自分で発見するもの」へと変える工夫が、ここにはありました。

 

【小さなパスポートが、韓国という大きな物語へつながる】

 

広報館を訪れる前、私はこのパスポートをスタンプ収集のための冊子だと考えていました。

しかし、実際に体験してみると、その役割はもっと大きなものでした。

クイズを通して宮殿の新しい一面を知り、パスポートを開くことで、まだ訪れたことのない韓国各地の文化遺産に興味が広がっていきます。

スタンプは旅の目的であると同時に、次の場所へ向かうための小さな動機にもなります。

韓国の歴史は、一つの宮殿や寺院だけで完結するものではありません。

各地の文化遺産を結びつけていくことで、時代や地域を超えた大きな物語が見えてきます。

今回、私がソウル広報館で見つけた答えは、一冊のパスポートが、その物語を読み始めるための入口になるということでした。

韓国という国を一冊の本に例えるなら、100か所の国家遺産は、それぞれ異なる歴史が記されたページなのかもしれません。

そして、この小さなパスポートは、そのページを一枚ずつめくるための旅の道しるべです。

次はどの国家遺産を訪ねようか。

広報館を出るころには、私の関心はパスポートを受け取ることから、次の旅へと移っていました。