今回はオーバーシュートとプレパレ―ションについてです。
「オーバーシュート」「プレパレ―ション」は人間のクセです。ボカロにはありません。「名前のない怪物」のカバーで有名な「タカオカミズキ」さんが、取り入れている技術です。(このボーカルはどちらかと言うと、ピッチが常にフラフラしているというのがすごく印象的ですが。)

以前「しゃくり」は人間らしさの要であるという話をしましたが、「オーバーシュート」と「プレパレ―ション」も人間らしさを出したり、表情を出したりするのに非常に有効です。


「オーバーシュート」
音高変化直後に、目標音高を超える瞬時的な変動

「プレパレーション」
音高変化直前に、変化とは逆方向に振れる瞬時的な変動


詳しい解説は、ググってもらえればいくつか記事が出てくると思います。
「「好きだから」-7(周波数ゆらぎ~プレパレーション・オーバーシュート)」こちらのサイトでは分かりやすく解説されています。


私はタカオカミズキさんのVSQを拝見したときに初めて「オーバーシュート」「プレパレ―ション」について知りました。私は、たまにボーカルのピッチ補正をやるんですが、確かにこれらの現象があるなと、すぐにその存在を実感しました。あ、その後は、オーバーシュートとプレパレ―ションは残したままピッチ補正を行うようにしています。




オーバーシュート

「GUMI My special day」歌声はこちら


上図はボーカロイドでオーバーシュートを入れたものです。赤色い矢印のところに入っています。音高が目標の高さ(長音「-」が打ち込まれている音符の高さです)に達した瞬間、一瞬高くなっています。

オーバーシュートは跳躍音で生じやすいです。跳躍音があったらオーバーシュートを入れてみてください。小さな音高の揺らぎなのであまり効果を感じないかもしれませんが。人間らしさを出すには有効です。





プレパレ―ション



上図の青色い矢印がプレパレ―ションです。高音に移動する直前に一瞬低音に移動しています。プレパレ―ションを入れてみると、「人間らしいな」と感じることが出来ると思います。効果が分かりやすいです。


プレパレ―ションは高い音から低い音に移行するときも同様に生じます。
ボーカロイドに入れてみます。



こんな感じです。





ここまでは、人間らしさを出すことができますよというお話でしたが。
より大きな揺れ幅のプレパレ―ションを使えば、歌唱表現として使えます。


「プレパレ―ション」で魂のあるボーカルにする


生き生きとしたボーカルにするためには、「しゃくり」のつぎに「プレパレ―ション」が非常に有効です。



「鏡音リン Calc.」歌声はこちら


このように揺れ幅の大きなプレパレ―ションを入れてみましょう。音高が次の音符に移行する前に一瞬大きく下に沈みます。



高い方から低い方に移行するときは、一瞬大きく高音に跳ね上がります。



「巡音ルカ 氷の翼」歌声はこちら

サビのトップノート(一番高い音符)に入れると、感情的に歌っているように聞こえます。


なんとなく気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが。一瞬大きく高音に跳ね上がるこの歌い方は、ボカロで「声が裏返る」というやつです。
この声が裏返えるというのを、いたるところに入れた調声をに見かけます。(ボカロは基本自由なので、そういう調声を否定する気はありませんが。)
私が聞いて自然だなと思うのは、低い方に移行する寸前です。

トップノートの直後から次の音符に移行する寸前にこのプレパレ―ションを使ってみてください。


プレパレ―ションがボーカルに魂を与える理由
プレパレ―ションはボーカルに魂を与えてくれます。生き生きとした表情を与えてくれます。
理由は、音楽的にどうこうではないと私は考えています。
人間がノリノリで感情をこめて歌ったとき、自然に生じる現象がプレパレ―ションだからだと思います。冷静さを失って歌の世界に入り込んでいくほど、この人間のクセがはっきり表れてくるんだと思っています。

だからプレパレ―ションが入っているボカロは、歌を自分のものにしている、ノリノリで歌っている、感情的に歌っている、そういう印象を聞き手に与えることができます。




以上、オーバーシュートとプレパレ―ションでした。

是非一度試してください。