【245話】受け入れがたい現実と向き合った木部 | 恋心、お借りします

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(自称)水原千鶴を応援する会の会長。
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【245話】受け入れがたい現実と向き合った木部

 

はいどーも!甲楽わんです。かのかり楽しんでますか?

 

ここ数話いい感じの和也と千鶴は、まぁ実際付き合っているのに等しいでしょう。木ノ下家や学内では二人は付き合っているということになっているし、千鶴は和也の『彼女』でいられるし、本物の彼女なるために進み始めたわけですからね。

 

和也と千鶴の恋人関係は嘘だった。和也にずっと嘘をつかれていたんだ。245話は、そう知った木部の心境が描かれた回になりましたね。

 

和也が見栄を張ってついてしまった嘘。木部は、水原が本物の彼女であると信じて、ずっと自分と水原の幸せを願ってくれていた。それを知りながら和也は本当のことが言えなかった。ずっと木部を自分の身勝手な嘘に巻き込んでいたのです。

 

 

 

◆もう前みたいな関係には… 245話

 

もう前みたいな関係には…

 

ハワイアンズで嘘がみんなにバレてしまったとき、木部はこれ以上嘘を重ねないようにと忠告してくれました。それもすべて和也を最低の嘘つきにしないため、和也を思ってのことです。木部を怒らせたことも、騙して嘘につき合わせたことも、すべて自分のせい。

 

ごめん!木部!

ちづるの事 ずっと嘘ついてて…!

 

和也は木部に頭を下げて謝ります。木部が和也のことを大嘘つきの馬鹿野郎とだと思っていても当然。これまでと同じように親友でいられないかもしれない。

 

しかし、木部はこれ以上和也を責めることはしませんでした。

 

 

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◆『幼なじみ』より大切に思うくらいで丁度いい そう考えたら納得もいった 245話

 

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◆今はもう 別れたらチェーンソーで胕抉り出すくらいにしか思ってない 245話

 

『幼なじみ』より大切に思うくらいで丁度いい そう考えたら納得もいった

 

今はもう 別れたらチェーンソーで胕抉り出すくらいにしか思ってない

 

そう言って、嘘をついていた和也に理解を示し、これまでと変わらず水原との関係を応援してくれたわけです。

 

 

幼馴染である和也の幸せを願い、はっきりとした物言いで、人生の教訓のような言葉を残してくれる木部。『理想の友達』の人物像を彼に重ねた人もいたかもしれません。しかし僕には、むしろ木部ちゃんもまた普通の人なんだなと改めて思いました。僕には彼が、認めがたい現実にぶつかりながらも、必死に折り合いをつけ、自分を納得させ、生きて行こうとする普通の人間に見えました。

 

今回は初めて木部の視点でかのかりを振り返ってみようと思います。彼の目線で彼の外側に広がる世界を見つめてみれば、あなたの知らない木部芳秋に出会えるかもしれません。

 

 

 

  千鶴と和也の幸せを願い続けた木部

 

木ノ下家の人たちと同じように、木部もまた和也と千鶴の幸せを強く願い続けた一人です。なぜなら、木部にとって和也は幼馴染であり、『いい奴』だからです。

 

木部は、下田の海で和也と千鶴が別れるつもりだと知ったとき、こう語っています。

 

 

◆でもさ… 時々才能なんじゃねぇかって思うよ バカみてーに夢見続けられんのとか… 13話

 

でもさ… 時々才能なんじゃねぇかって思うよ

バカみてーに夢見続けられんのとか…

 

それは和也と木部が小学生の時のお話。木部は間違って和也が育てていたアサガオの鉢をひっくり返してしまいました。植えた種はどこに行ったのか分かりません。案の定、その鉢から顔を出したのは、明らかにアサガオの芽でではない、ただの雑草。学校の先生からも、アサガオではないから諦めようと言われてしまいました。

 

しかし、和也はそれがいつか花をつけると信じ、ずっと水をやり続けた。その結果、和也の育てた『アサガオ』は誰よりも綺麗な花をつけたんです。

 

和也は、馬鹿で優柔不断で、他人にばっか頼るくせに『なんとかなる』と言い張るような奴で、一見したらクズに見えるかもしれない。でも、現実に挫けず夢を見続けられるとても素敵な人なんです。木部は、和也に憧れや尊敬の念を抱いているとさえ言ってもいいかもしれません。

 

 

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◆飲み会で君が和ちんを庇った時に思ったんだ 13話

 

飲み会で君が 和ちんを庇った時に 思ったんだ

やっと和ちんの良さに 気づいてくれる人が 現れたんだって

 

和也の良さに気づいて欲しい、和也に幸せになってほしい、そう願っていた木部からしたら、彼の良さに気づいて認めてくれる人が彼女になってくれたことが嬉しかったし、千鶴さんが本当に素敵な人に見えたわけです。

 

だから和也が『和也さんを信じている』と言った千鶴さん(10話)を裏切って、元カノにふらふら靡いてしまったとき、それが許せなかったわけですね(12話)。

 

 

 

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◆あいつ 悪いヤツじゃねーんだよ きっとあんたのこと 最後は幸せにしてくれると思う 13話

 

和也のクズさに嫌気が差したってだけなら

もう少しチャンスをくれねーか?

あいつに腹が立ったら俺が代わりに殴るから…

あいつ 悪いヤツじゃねーんだよ

きっとあんたのこと 最後は幸せにしてくれると思う

 

木部は和也と別れるつもりでいると言う千鶴さんに、もう一度彼とやり直してくれるようお願いします。

 

 

◆当然でしょ 彼女なんだから 15話

 

当然でしょ 彼女なんだから

 

木部の願いは叶い、和也は千鶴さんとの交際を続けることになります。和也は千鶴さんを助けるために海に飛び込み、別れると言っていた千鶴さんは『彼女宣言』。これを見た木部は、ホッとしたはずです。

 

 

 

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◆今じゃ式場で礼服着たお前の横に花嫁姿の千鶴さんが立っててもそう不思議には思わねーよ 181話

 

木部から見て、幼馴染である和也は、馬鹿で優柔不断なところもあるけれど、真っすぐで、夢を諦めず、大切な物のためには命すら投げ出せるいい奴です。一方千鶴さんは、単に美人というだけでなく、和也の良さに気づき、彼を好きでいてくれる素敵な人です。そんな二人だからこそ、木部は不甲斐無い和也を叱ったし、二人の幸せを願っているんですね。

 

 

 

  幻想だった和也と千鶴の幸せ

 

それから一年以上の間、和也と千鶴さんは何事も無く恋人関係を続けていました。しかし、突如その願いは泡沫のごとく消えてしまいます。和也と千鶴さんが付き合っているというのは嘘だったんです。

 

 

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◆千鶴さんはレンタル彼女 220話

 

和也の良さに気づき彼を庇ってくれた千鶴さんも、彼のことを信じていると言っていた千鶴さんも、すべて作り物の演技だった。千鶴さんを守るために海へと飛び込んだ和也も、最高の彼女ができて幸せそうにしている和也も演技だった。

 

 

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◆あれも全部 『レンタル』だったって言うのかよ…っ 223話

 

二人の嘘に木部も和さんも踊らされ続けてきたのです。和さんは、ただただ和也の幸せを願い、自分の孫に素敵な彼女ができたと喜んでいた。だからこそ、小百合さんを亡くしたとき本気で千鶴さんを心配して苦しんでいた。それなのに、二人はずっと嘘をつき続けてきたのです。

 

木部の目の前にいるのは、真っすぐで嘘なんか付けない和也ではなく、和さんと自分を騙してきた大ウソつき野郎。和也の良さに気づいてくれた素敵な千鶴さんではなく、ただのお金儲けのためにその嘘に協力していたレンタル彼女です。

 

木部は、和也を殴り飛ばし、声を荒げ怒りをぶつけます。

 

 

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◆和也 テメーは知らねーだろ!? 和さん 旅行前に一度 病院に運ばれたんだぞ! 223話

 

和也 テメーは知らねーだろ!?

和さん 旅行前に一度 病院に運ばれたんだぞ!

小百合さんを亡くした千鶴さんに自分は何もしてやれないって

一時期 ずっとヘコんでて!

 

それでも、和也は嘘を隠そうとします。

 

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◆だって 付き合ってるのは 本当なんだ…っ! 224話

 

だって 付き合ってるのは 本当なんだ…っ!

 

それは明らかに嘘。和也は間違いを認めようとせず、また嘘を重ねて皆を騙そうとしている。木部はさらに憤ります。

 

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◆ここで嘘ついたら 終わりだぞ 全部 全部! 224話

 

お前… 分かってんのか…? 自分が何しようとしてんのか…!

ここで嘘ついたら 終わりだぞ 全部 全部!

 

木部は和也のことを大切に思っています。だからこそ、和さんにも自分もに嘘をついて欲しくなかったし、これ以上嘘を重ねさせたくなかった、そんな馬鹿野郎になってほしくなかったんです。

 

 

 

  木部の認めなければいけない現実

 

ところが、真実は木部の想像通りではなかったんです。和也は嘘を重ねたわけではなかった。今和也と千鶴さんは本当に付き合っていたんです(もちろん木部の視点ではそう見えるということです)。

 

 

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◆キス 227話

 

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◆今は正真正銘 和也さんの彼女です 227話

 

和也は涙を流しながら千鶴さんを庇い、大好きだと言います。千鶴さんも和也にキスまでしたうえ、和也を好きになった経緯を打ち明け、今は正真正銘の彼女なんだと言います。レンタル彼女の仕事の範疇を明らかに超えてしまったキスを見せられれ、二人が付き合っていると皆信じる他ありません。

 

千鶴さんは小百合さんに嘘をついていたわけではないし、今は本当に好き同士で付き合っている。結局その事実を知った和さんは、本当のことを明かさずにいた二人を許すことにします。

 

千鶴さんと和也はレンタル彼女と客という関係として出会い、今は本当に付き合っている。すべてはこれまで通り。一見何も問題ないように見えます。

 

しかし、すべてを水に流せるほど、木部の心中は簡単ではありませんでした。ずっと信じていたものを失ったことには変わりがないのです。

 

 

◆正直 しんどかったよ ずっと嘘つかれてたんだと思うと 245話

 

正直 しんどかったよ ずっと嘘つかれてたんだと思うと

超絶美少女連れて歩くお前には 僻んだりもしたけど

それなりに歓迎してたし

どこか「お似合い」だとも思ってた

お前とは 「正直」を通り越して 下品なくらい「本音」で話せるとも信じてたし

「水原千鶴」で検索すらしなかった自分が 滑稽にすら思えた…

 

一番の親友で嘘なんてつけない真っすぐな奴だと思い、憧れや尊敬さえ感じていた和也がずっと嘘をついて自分を騙していたのは事実。嘘をつくくらいなら自分を信用して本当のことを話して欲しかった。和也とはそんな強い信頼関係があると信じていた。しかし和也は、木部には本当のことを打ち明けてはくれなかった。和也にとって自分は嘘をついたって構わないくらいの、大したことのない人間だったんだと、木部が感じてしまって当然です。

 

 

 

それでも木部は、和也と向き合います。

 

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◆『幼馴染』より大切に思うくらいで丁度いい 245話

 

でもさ 今は もう「彼女」なんだろ? だったら2人の絆は確かなんだろうし

幼馴染より大切に思うくらいで丁度いい そう考えたら納得もいった

まぁ 誰だって大切なもののために 嘘つく事だってあるだろ 

 

誰だって大切にできるものの数には限界がある。和也が大切な彼女を守るために、幼馴染の自分が犠牲になったとしてもそれは仕方のないことだ。大切なものを守るために嘘をつくことも時には必要だ。そう言って木部は、認めたくない現実にぶつかりながらも、自分を納得させるのです。それはすべて、和也がいい奴なんだと信じたいし、幼馴染の関係を失いたくないし、和也の幸せを願っているからです。

 

 

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◆今はもう 別れたらチェーンソーで胕抉り出すくらいにしか思ってない 245話

 

今はもう 別れたらチェーンソーで胕抉り出すくらいにしか思ってない

 

そして、千鶴さんを悲しませるなよと伝えるように、こう言います。木部は、和也に騙されていたと知った後も、和也の幼馴染でありたいと願い、彼の気持ちを理解しようとし、変わらず彼の幸せを願っています。

 

 

 

木部の和也に対する気持ちは、親が子供の幸せを願う気持ちに似ているように思います。子供のありのままを素直に受け入れることができれば理想ですが、現実はどうしても親は自分の理想像を子供に押し付けてしまいがちです。たとえば、高校、大学と順調に進学して、就職して、素敵な人と結婚して安定した暮らしをして欲しいと思っていたのに、突然息子(娘)に上京して漫画家になると打ち明けられ、その事実を受け入れられなくて素直に応援できなかったり。はたまは、サッカーが大好きで将来サッカー選手になると言って息子(娘)が、サッカークラブを止めたいと言い始めてしまい、それを許せず「そんなことではサッカー選手になれない」と叱ってしまったり。息子(娘)が不幸になる姿が見たくない、幸せになる姿がみたいと思うからこそ、深く話し合うこともせず自分の描く『幸せ像』を押し付けてしまうときがあります。

 

木部は和也の幸せを願いながらも、同時に自分の理想像を押し付けてしまっていたのも事実で、それが幻想だと知った時には深く傷ついてしまったわけです。木部が和也と千鶴が本当は付き合っていないんだと知ったときの憤りは、『理想』と『現実』のギャップが生み出していると言っていいでしょう。たとえば、大学に進学して安定した職についてくれるだろうと思っていた息子が、勝手に大学を止め、まともに稼げるのかも分からないYouTuber活動に学費をつぎ込んでいたと知ったときの親の気持ちに近いのかもしれません。こう例えると、木部の気持ちもなんとなく想像できる気がします笑。

 

 

 

正直、個人的には木部ちゃんはあまり好きなキャラではありませんでした。いや、正確に言えば、今回木部というキャラを振り返る前までは、好きになれなかったんです。和也推しである僕からしたら、怒りに任せて和也を殴り話を聞こうとしない木部に否定的な印象がありました。また、僕自身、家族や友達にはありのままの自分を受け止めて欲しいと願っているので、理想の和也像を押し付けてくる木部は身勝手だとさえ感じていました。

 

しかし、木部の視点で物語を読み直してみると怒ってしまうのも理解できますし、人間なんてそんなもんだと思い直しました。こうあって欲しいと誰かに期待しない人間なんていない。実際、僕も木部と同じように、「和也の友達にはこうあって欲しい」という『理想の友達像』を木部に押し付けてしまっていたのです。それでも人は、本当に大切なものを守るために、相手を理解しようとたり理由付けしたりして自分を納得させ、受け入れがたい現実と向き合うんだと思います。今回の木部は、これまで通り和也と友達でいるために、そして和也の幸せを願うために、現実と折り合いをつけているように見えます。

 

245話を読んで、「木部ちゃんは『理想の友達』だ」と言う人もいますが、僕にはむしろ、木部もまた受け入れがたい現実を簡単には認められず、それでも懸命に受け入れようとする、普通の人間に見えました。そうやって和也と友達でいたいと願う木部ちゃんを、今はいい奴だなと思っています。

 

 

 

という感じで245話を振り返ってみました。

 

最後に千鶴は、和也を小百合おばあちゃんのところに誘ったわけですが、それは具体的にはどこなんでしょうか。高校生のときまで小百合おばあちゃんと一緒に住んでいた家なのか、それともお墓なんでしょうか。

 

たとえば千鶴が遺品の整理のために和也をおばあちゃんの家に呼んだとすれば、もう『彼氏扱い』ですかね。和也は只で働いてくれる何でも屋さんではないんだから、気軽に雑用を頼んじゃうってどんな関係なんだろうと思っちゃいますね(にやり)。

 

千鶴は、小百合さんが亡くなる間際、映画を作ってくれた感謝を和也に伝えて欲しいと話していたのを聞いています。だから和也にその話をして改めて感謝を伝えたいのかもしれません。また千鶴は、和也に本心を打ち明けられず小百合さんの気持ちを裏切ってしまったことを後悔しています。天国にいる小百合さんと話して、改めて和也の彼女にならないといけないなと感じるのかもしれません(妄想)。楽しみにしておきましょう。

 

では、また次の記事で!