アキさんが 手にしたものを 軽く振り下ろすと ビュンッッと 懐かしい 恐怖の音がした。

「懐かしいな。そんなの まだ持ってたんだ?」

興味津々の柊二さんが ダイニングから移動して来て オレを良く見下ろせるソファに座った。

まったく この人は……。
結局 楽しむ気かよ。

「うん。懐かしいだろう?とっておいて良かったよ。想い出の品だし…。思い出の品だし またいつか 使う機会があるかもって 思ってさ。…ハル 頭とお尻 逆向いて。頭がこっち。お尻はあっち。」

オレが180度クルリと向きを変えると アキさんは ブンッ ブンッと 素振りを繰り返しながら オレの横に立った。

ケツを剥き出しで四つん這いのオレの 左に立つアキさん 右に座る柊二さん。

懐かしいポジショニング。

「ハルも 懐かしいだろう?乗馬鞭。」

ベルトなんかよりも はるかに 痛い。
そして アキさんにとっては 打ちやすい …らしい。
本来の用途が 鞭なのだから そりゃあ 当たり前だ。
ベルトを鞭代わりににするよりも 扱いやすくてダメージは強烈。

反抗期真っ盛りの高校生の頃までは 頻繁に登場していたけれど 大学生になる頃には 乗馬鞭が必要になるくらい叱られることは 少なくなって。
大学を卒業した日に「コレは もう必要ないよな」と 卒業したはずの 乗馬鞭。

あれ以来 目にすることは無かったから てっきり 処分したのかと思っていたけれど…。


ここに来ての 再会。
うれしくはないけど。 

会えると思っていなかった コイツとの 再会。
全く うれしくはない。
 

先端をピタピタと尻にあてられると これで痛めつけられた時の 息もできなくなるほどの激痛の記憶が一気によみがえった。
冷たい感触に 鳥肌がたつ。



「久しぶりだし ちょっと 試してみていい?」

アキさんは 軽く聞いてくれるけど…
 試し打ちなら 何も オレのケツじゃなくても…と思わなくもないが…

コレも全て オレの不甲斐なさが招いたことだと思うと 当然 異論などない。

「はい。」

どうぞ 好きなだけ。
覚悟を決めて 歯をくいしばる。

アキさんが ビュンッと振り下ろした乗馬鞭が ビシッッとケツのまんなかに当たって 飛び上がるほどの あの痛みに襲われた。

ケツが焼けるような 全身が震える あの痛み。

アキさんは それから3打 少しずつ 場所をずらして 鞭を振り落とした。
その度に 鋭い痛みが身体を突き抜ける。


「うん。大丈夫そう。勘が戻ってきた。ハルのお尻もあたたまったし じゃあ 始めようか。」





オレは ギリギリと 歯を食いしばった。