食卓には ハルが頼んでくれたデリバリーの中華が たくさん並んだ。
私が好きな エビチリも…ちゃんと頼んでくれてる。
こんな時じゃなかったら ウキウキたくさん食べるのに。
でも 今は 食欲なんて ちっともない…。
「はな?ちゃんと食べとけよ?」
しゅうちゃんに言われて エビをひとつ口に入れたけれど 飲み込めない。
苦しい。
吐きそう。
噛んでも 噛んでも 飲み込めない。
吐きそう。
「はなちゃん。おいで。」
苦笑いのアキくんに促されキッチンへ行った。
「出していいよ。無理に飲み込まなくていいから。どうせ 吐いちゃうだろ?」
口の中のものをシンクに吐き出すと アキくんは
「一食くらい抜いても大丈夫だよ。」
って…。
泣きながら うがいをして 席にもどった。
それからは もう なにも口に入れる気になれなくて 時々水を飲みながら ごまかした。
しゅうちゃんもハルも 私のそんな様子は気にする素振りもなく いつも通りに時々笑いながら話をしてる。
この人たちは 鬼に違いない。きっとそうだ。
鬼! 鬼兄弟!!
…でも しゅうちゃんたちを鬼にしちゃったのは 私だ。私って いっつもこう。
なんで こんなことになったんだっけ…。
私は 目の前の美味しそうなご飯をぼんやり見ながら 今日のことを思い出していた。
階段から落ちそうになった あの瞬間を思い出したら 急に怖くなった。
もし あの時 あのまま 落ちてたら… 
ケンちゃんが 落ちていくのは スローモーションみたいに見えた。本当に死んだかと思った…。
歩きスマホをケンちゃんに注意されて 子ども扱いされてるみたいで 頭にきたけど やってることが子どもみたいなんだから しょうがない。
ううん。子どもだって 階段から落ちたりしない。
私 子ども以下だ。あんなに危ないこと平気でやってて 注意されてもやめなかったんだから。
事の重大さが ようやくわかって ゾッとした。
そんなこと ちょっと考えればわかるのに。
ケンちゃんにケガさせちゃって 謝って済むことじゃないのに。
そのことを アキくんもハルも教えてくれようとしてたのに それなのに私ってば 謝っても許してくれないハルを イジワルだと思ってた。
イジワルなんかじゃなかったのに。
私 全然 反省なんてしてなかったんだ。
ハルに 頭を冷やせと言われた意味が やっとわかった。
厳しくされて当然だ。
罰は 受けなきゃいけない。私が悪い。
でも 怖いよ。あれは… 本当に苦しいから。
痛いのは 我慢できる。でも 苦しいのは… 冷たくされるのは… 辛すぎる
みんなの食事が終わる頃 私は心臓がバクバクして 寒くもないのに 身体が震えていた。
怖いよ。
本当に怖い。
苦しい。
でも 罰は受けなきゃいけない。
「はな。ちゃんと反省しような。」
箸を置いたしゅうちゃんに言われて 返事をしようと口を開いたけれど カラカラに乾いた口からは 声が出なかった。