2度の優しいビンタは 私の怒りを 増幅させた。

もう 我慢できない。
こんなの 許さない。

私は ガタンと立ち上がると ケンちゃんを押しのけ ズンズンと歩き 私としゅうちゃんの寝室のドアを 叩きつけるように開けた。




部屋の隅のデスクでパソコンに向かっていたしゅうちゃんは 振り返って 私を見ると

「ん?なに?」

と なんでもないように いつもどうりの調子で 笑顔を向けた。


私は いろんな気持ちが ざわざわと溢れ出し しゅうちゃんの足元に座り込むと 泣きながら

「ケンちゃんがビンタした。コーヒーちょっとこぼしたら 2回も。わざとじゃないのに。2回もビンタされた。ヒドイ。わざとこぼしたんじゃないのに。わざとじゃないのに 2回も。痛かった。すごく。ものすごく痛かった。痛くて悔しい。」

と一気に訴えた。

私 メチャクチャ言ってる…
メチャクチャだ…
本当は全然 違うのに…
そう思いながらも 自分を止められない。

目の前にある しゅうちゃんの脚をドンドンと叩きながら

「悔しい…。悔しい…。ヒドイ…。なんで?わざとじゃないのに…。悔しい…。ケンちゃんキライ。すっごく痛かった…。」


だめだ 止まらない。

どうやったら 自分を止められるのか 分からなくなっていた。

「悔しい。痛い。なんで こんなこと されなきゃいけないの?悔しい…。」


しゅうちゃんは イスからおりると 黙って私を抱きしめて 背中をさすってくれた。