目を覚ますと ケンちゃんが いつもの調子で 笑いかけてくれた。


「あ 起きました? びっくりしましたよーー。大丈夫ですか?どこか 痛いところありませんか?」

「顔……。」

「あぁ それはね…。あれだけ殴られればね…。ほかには?大丈夫ですか?」

「うん… わかんない。  …あ…」

「はい?」

「ココロ…。」


ケンちゃんは  ハハッと笑い 大丈夫そうですね と言った。




「しゅうちゃんは?」

姿が見えないことに気づいて たずねたら

「ハルさんと 揉めてます。」




しゅうちゃんは 夕食後に ハルから一部始終を聞いて 激怒したらしい。私にも ケンちゃんにも。

で  ふたりともぶん殴るって息巻いたのを ハルが ふたりは罰は充分に受けたからって止めて。

それでも 怒りが静まらないしゅうちゃんは じゃあ ケンちゃんは  ベルトで100発 そしたら 私のことは許す と ハルと約束したらしい。

なんて約束…ガーン


ハルは  わたしを殴らないように念を押して しゅうちゃんの言う通りに ケンちゃんをベルトで打った。

ケンちゃんは その話をハルから聞いて 全部分かってて ベルトを受けた。


それなのに しゅうちゃんが 私にビンタしたから それも けっこうな強さで…  それで

「約束が違う!」

と 今度はハルが激怒し 今に至る… と。





「ハルさんさーー  いつもはオレに はなさんを甘やかすなって散々言ってるくせにさーー 自分はどうなんだって話ですよねーー。はなさん守るために オレを売ったんですよー。ベルト100発って ヒドすぎでしょ。数減らすくらいの交渉してくれてもいいのにさ。しかも 途中で 10発追加って。意味わかんねーー。」


「あ…   それは私が… 」

「ん??」

「しゅうちゃん 怒らせちゃって… 」

「はぁぁぁ?なんすか それ?オレがはなさんのために 痛い思いしてる時に よりによって 柊二さん怒らせて回数増やしたってことすか?」

「うん。まぁ… そんなとこ…。」


「なぁにやってくれちゃってるんですかーー!ベルトって マジで 痛いんすよ。どれだけ痛いか知ってます?できれば 1発でも減らして欲しいところなのに…それを…プンプン  はなさんも 一回打たれてみますか?この痛みを知れ!」

カチャカチャと 自分のベルトを外そうとする ケンちゃん。
ケンちゃんが本気じゃないのは知ってるけど…


「はい…。そうしたがよければ…。遠慮なく打っていただいて… 」


むしろ 打ってもらった方が 私の気持ちは楽になるって思った。


「いやいや 冗談ですから…。嫌がってくれないと 調子狂うじゃないですかーー。だいたい あれはねーー 強烈っすよ。はなさん 1発も耐えられませんって。はなさんなんて ぜったいまた 気絶します。」

やっぱりね。打ってはくれない。

ケンちゃん 笑って話してくれてるけど 本当に痛かったと思う。笑いごとじゃなくて。

ケンちゃんの こういうところも 好きだなぁ。





「それにしても 気絶するビンタって どんだけだったんですか?すげーよな 柊二さん。女にそこまで するなんて。さすがにまねできないわーー」

「うーん…。ビンタで気絶したってわけでもないと思うんだけど…。」

「そうなんですか?」

「うん…。なんかね ホッとしたっていうか… 張りつめてたものが 切れたって感じ?」

「ビンタされてホッとするって あるんですか?」

「えっとね… なんか あー やっと終わったーって感じ?ほら 今日は ずっとハルが怖くてビクビクしてたでしょ?ずっと…。 でも 最後 ここで 怒られたら 終わりーーっ みたいな。」

「あぁ… 柊二さん ラスボスですもんね。」

「そうそう。それ!で、終わってホッとした  みたいな。」

「あぁ それだったら なんとなくわかります…。そういう意味では オレ まだラスボスに行き着いてないからなぁー。まだ続きがあったら まじ折れる…。」

ケンちゃん さりげなく話題変えてくれてる…。

はははって笑いながら やっぱ ケンちゃんのこういうとこ 好きだなぁって思った。

 

でも…