キーンコーンカーンコーン

その言葉を掻き消すようにチャイムが鳴った。


ジュン「うぉっヤバイ!!」

ジュンは我に帰り、慌ててドアに手を掛けた。


教師「まっ待て!!お前3組か…名前は??」


ジュン「安達…ジュンです。」


教師「そうか…俺は阿部だ。今日からお前ら3組の担任になる。そして『競歩部』の顧問だ。」


ジュン「き…競歩??」

阿部「ジュン、お前は遅刻だ。罰として放課後、1人で職員室まで来い。」


ジュン「1人で…??阿部先生…///」(ゴクリ)



ちなみに、この白山高校は男子校である。(ゴクリ)


EDテーマ「男キッス」みうらじゅん
その教師の一言には何か不思議な力があった。

その教師の前では、まるでヘビに睨まれたカエルのように「反抗」という概念を忘れてしまうようだった。


ジュン「くっ…」


教師はまだ後ろでジュンを見ていた。


ジュン(教室まではあと50メートル足らず…ダッシュでいけば15秒くらいで着くか…しかし後ろには担任がいる…歩いていくには間に合わない…あぁどうしよう…初登場がこんなじゃクラスのみんなに…)



ゴンッ!!


ジュンは頭から壁にぶつかった。
いつの間にか廊下の突き当たりまで来ていたのだ。


ジュン「ってぇ!!!なんだっ??」



ブワッ…


パサッ…パサパサッ…


教師の持っていたファイルが落ちた。

いや、正確には突風に飛ばされた。

教師の目は驚きに満ちて唖然としている。


教師「お前…」

教師は見た。ジュンが走るでも歩くでもなく、「競歩」しているのを。

教師(こいつ、歩いても走ってもいけない状況で無意識に、本能で「競歩」したってのか…しかも、奴の足が床から離れる瞬間、窓の開いてないこの廊下で俺のファイルが飛ばされる程の突風が起きた…)

教師「お前なら、もしかしたら…ストロングウォーカーに…」
ジリリリッ!!!


目覚ましが一人鳴り続ける朝。
外では朝の日差しの中小鳥たちが1日の始まりをささやかにさえずる。


バッ…

(布団から飛び出し、寝癖のままの泣き顔の少年)


「ね…寝坊したっ!!!」



OPテーマ「メーデー」BUMP OF CHICKEN

『strong walker ジュン』


これは、競歩に汗と涙の青春を賭けた少年達の熱い競歩ドラマである…

第1話 初登校


ダッダッダッ…

「マジかよっ…高校初登校から行きなり遅刻ギリギリなんてっ!!」

彼の名は安達 ジュン
今日から白山高校に入学する事になった、高校1年生である。

ジュン「あーどんな部活に入ろうか迷っちゃって、昨日寝れなかったからなぁ…やっぱサッカーとかテニスとか。バスケもいいなぁ。」

ジュンの家は白山高校から徒歩5分の場所に位置している。彼がこの高校を選んだのはそのためだ。


ジュン「今日から俺の夢の高校生活が始まるぜっ」


足早に校門を通り抜け、すぐに上履きに履き替える。

ジュン「確か俺の1年3組は3階の一番奥だ。チャイムまで後2分…
ダッシュで行けばまだ間に合うっ!!!」


ジュンはさっそうと走り出した。さすがに初登校日ともあり、遅刻ギリギリのこの時間に他の生徒の姿は見えない。

ジュンが30秒たらずで階段を駆け上がり、残るはあと、50メートル程の直線廊下が続くだけとなった。


…が、そのとき


???「コラ!!廊下は走るなっ!!!!」


大きな声が3階中に響き渡る。それはまるで獣の咆哮のようだった。

ジュン「!?」

???「お前1年か…初登校から遅刻ギリギリで来るとはいい度胸だな。」


振り替えると角から教師がやってきていた。細身だが、なかなか筋肉質の27歳くらいの男性教師だ。顔つきもよく爽やかだ。いわゆるイケメン教師である。

ジュン(ヤバイ…教師だ。しかも手に持ってるファイルに3組って書いてある!!コイツが担任かよ!!)

ジュン「すみません先生!!急いで行きますっ!!」


ジュンは後ろの教師にそそくさと一礼し、また走り出した。

???「バカ!!だから廊下は走るなっ!!!」


ジュン「くっ…!?」

いつもならそのまま走り出していたジュンだが、その教師の一言はなぜかジュンを従わせた。