娘の大好物、さくらんぼ、
ケチんぼおかん、箱入りを奮発。
娘の笑顔を見られるなら安いもんです。
箱入りのさくらんぼを見ると思い出すことがある。
夫の母が亡くなったのは、
梅雨真っ盛りの今の時期。
仕事帰りに病院に寄った夫が
「そろそろ帰るね」と義母に声をかけた直後急変して、
義父と夫が揃う時を待つかのように息を引き取った。
長患いの末、まだ60代の真ん中だった。
おばあちゃんがいなくなったことと、
亡くなる直前から葬儀が終わるまでの間に、
伯母たちのわがまま放題で、義父や私に心無い言葉を浴びせられたり、
私が下女扱いされているのを見て、子供たちは随分心を痛めていたようで、
その後、それが原因で娘は目が見えなくなったことがあったくらいだった。
愚痴も言えない娘が一番大きなダメージを受けていたのだろう。
葬儀のあと、疲れ果てて帰り着いたのが夜中、
もう何日も殆ど寝ていなかったので、
翌日は昼くらいまで昏々と眠っていた。
目が覚めるとすぐにゆうパックが届いた。
差出人は亡くなったはずの義母。
まるで私たちが起きるのを待っていたかのように送られてきたさくらんぼ。
もう10ヶ月ほどは、義母はひとりで何もできない状態だったはずなのに、
一体どうして?
義父もこんな気の利いたことが出来る人ではないので、
しばらく頭の中には家族揃って????が浮かんでいた。
そう言えば、その一年前、さくらんぼが大好きな娘が
種を流しに飛ばしている姿を見て義母が笑っていたのを思い出した。
「ぷ~ちゃん、そんなにさくらんぼ好きなんね?おばあちゃんがさくらんぼ送ってあげるけんね」
それから2ヶ月後、再発して手術をしたけどもう手遅れだった。
まさか、孫との約束を忘れずに果たしていてくれたとは思いもしなかった。
義母は自分が病気になると何もできない人だったので、
おそらく約束してすぐに来年のさくらんぼを予約していてくれたのだと思う。
予約した時に、義母は来年の孫娘が種を飛ばしている姿を楽しみにしていたんだろうにね。
夫が「ほら、おばあちゃんからお兄ちゃんとぷ~ちゃんにありがとうって届いたよ」
義母とは色々あったけど、孫はほんとにかわいがってくれた。
ポロポロ涙が出てきて止まらなかった。
鼻水をすすりながら食べたさくらんぼは上等で美味しかった。
今年も娘はさくらんぼを見て嬉しそうに
「おかーさん、どうしてそんなにいっぱい買ってくれたん?私が頑張ってるけん?」
「そうだよ~」
「うわ~、どんぶり4杯もさくらんぼ食べた~」
さすがに種飛ばしはしなくなったけど、
さくらんぼを見るととびっきり嬉しそうな顔をするのは今でも変らない。