ヒトの細菌性病原体であるヘリコバクターピロリは、ジェノトキシック(遺伝毒性)的性質を有しています。ピロリ菌が上皮細胞でDNAの二重鎖切断(DSBs)を誘導する時、それを惹起するのは、宿主のDNA修復しようとする努力です。今回著者らは、なんとピロリ菌が誘導するDSBsが変異を非相同末端結合により修復することを見つけました。このDSBsを誘導する遺伝子群を調べるためにゲノムワイドのスクリーニングを行うと、それはピロリ菌のIV型分泌システム(T4SS)に必須な遺伝子群でした。それらの遺伝子発現の抑制とDSBsによって亢進されたNFκB発現の抑制はDSBs形成を止めることが出来ました。また、DSBs誘導にはβ1インテグリンのシグナルも必要でした。DSBsは、ヌクレオチド除去修復のエンドヌクレアーゼであるXPFとXPGがRelAと一緒になってT4SS依存的に行っていました。興味深いことに、そのDSBsは、NFκBの標的遺伝子群の発現と宿主の生存を促進していました。つまり、ピロリ菌が誘導するXPF/XPGによるDNA損傷はT4SS/β1インテグリンシグナリング軸の活性化を通して起こり、NFκBの標的遺伝子群の発現と宿主の生存を促進していました。(Cell Reports 13, 70–79, October 6, 2015)
ピロリ菌でDNA損傷が起こるんですね。知りませんでした。怖いですね。しかし、その実体はヌクレオチド除去修復、つまり私たちの体が能動的に細胞を生存へと向かわせるための反応だったということです。その分子メカニズムは、まさに宿主由来成分と細菌由来成分の共同作業。。。宿主-細菌軸だそうです。前に、インターフェロンを利用して、感染効率を上げているウィルスの話をしましたが、ヒトは細菌やウィルスとの戦いが長すぎて、敵なのか仲良しなのか、最早分からない状況ですね。昔、北斗の拳でケンシロウさんが、最大の隙はその拳にあると言って、拳に秘孔をついて、ラオウさんを倒しましたが、そんな感じですかね。ストリートファイターII的に言うと、受け投げですね。あたかも仲良く踊っているかのように病原体を制する。これこそ、免疫系の究極奥義ではないでしょうか。ではまた。