オレは葬祭会社に勤務しているんだが・・・入社したての頃に世話になった先輩から聞いた話。 

15年くらい前に、先輩は「筋ジストロフィー」で18歳で亡くなった女の子の葬儀を担当した。

 物心ついた頃から病気で満足に動く事も出来なかった彼女を不憫に思い、

先輩は普段ならやらないようなサービスもしてやり、誠心誠意、

女の子の通夜・葬儀のサポートを勤めたそうだ。

 

通夜・葬儀も無事に終わり、初七日の翌日・・・

先輩は夢を視た。 

先輩は、真っ白な何も無い空間にポツンと一人で立っていたんだが・・・

前方からテクテクと誰かが先輩の方に歩いてくる・・・よく見ると、その女の子だったそうだ。 

思わず「〇〇ちゃん・・・良かったねぇ・・・自分の足で歩けるようになったんだね・・・本当に良かった」と、

女の子に声をかけると、彼女はこれ以上はないっていうほどの笑顔を先輩に見せて深々とお辞儀をすると・・・

スーッと消えたそうだ。 

先輩は「ハッ」として飛び起き、時計を見ると・・・午前二時だった。 

 

数日後、女の子の四十九日の打ち合わせで彼女の家を訪問し、

彼女の父親と相談している時、たまたま夢の話をしたそうだ。

 すると父親の顔色がスッと変わり、

「それはいつの事ですか?、時間は?」

と身を乗り出してきた・・・

先輩は「初七日の翌日・・・時間は夜中の二時頃です」と答えると・・・

父親は「ああ・・・これでやっと繋がった」と、呟いたそうだ。 

先輩は「?」と思い、「どういう事です?」と、聞くと・・・

父親は「実は初七日の翌日の夜中に・・・娘はお世話になった人達の所へ行ったらしいんです・・・

午前零時は女房の所へ、午前一時は僕の所へ、午前三時は嫁いだあの子の姉の所へ、午前四時は僕の妹の所へ、午前五時は最後まで友達でいてくれた幼馴染の所へ・・・

でも、午前二時だけ抜けていて・・・

『何処へ行ったんだろう?』と話していたんですが・・・

そうでしたか・・・〇〇さんの所へ・・・そうでしたか」と、涙ぐんだそうだ。

 

オレは「心霊」だとか「幽霊」だとかは信じないが・・・

人の「優しい想い」や「感謝」とかは・・・或いは死後もずっと

現世に残るのかもしれないな。

 
 
 
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