宇野選手の引退を受けて(もう選手呼びではないのは重々承知ですが)、後編です。

 

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3:誰からも愛される……?

この言葉、個人的には美辞麗句だと思ってます。

極端な例ですが「膨大な数のファンがいるけれど、心から信頼できる人(友人・恋人など)は誰もいない」「周囲に集まってくるのは、ビジネスか金か名誉に便乗したいだけ」の人と、

「ファンの数は控えめだけど、心から信頼できる人がいる」「ファンが知らないプライベートの部分で、周囲との関係が良好である」人。

これ、前者でも「誰からも愛される」と評されますからね。自分は後者を好むので、マスコミの美辞麗句は鵜吞みにせず、可能な限り観察と考察をしてしまいます。

 

今回、彼の引退に関して印象に残ったものをいくつか。

 

コーチであるステファン・ランビエール氏がインスタグラムにあげた写真…ステファン氏と、山田満知子氏と、樋口美穂子氏と、宇野選手。

…このお写真、宇野選手が新旧コーチどちらとも良好な人間関係を築いていないと、撮ることができませんし、3人とも宇野選手を愛していたからこそ、引退の時にステファン氏が選択したのでしょう。

氏のお言葉に「昌磨の周りにいる人々が、コーチとして仕事をするための環境をつくってくれた」、宇野選手も「出会う方に恵まれた」と語っていたので、良好な人間関係の中、競技生活を送れたのだろうと推察します。

(ここで思い出しましたが、裏方さんのyoutubeチャンネルがありますね。ああいうのを「やろうよ!」となれる雰囲気だったんじゃないかな)(職場でも部活でも、雰囲気の良いところはそういうノリがあります)(楽しいですよね)

 

後、コラントッテのイベント…の山本草太選手。

宇野選手について調べていくと、必ず彼の名前が出てきます。自分が沼っていた頃は、丁度怪我をしていた頃だった(はず)ので、表には出てきませんでした。

 

ジュニア時代はお互い切磋琢磨していたのに、片方は世界のトップで闘い五輪メダリスト、もう片方は怪我の予後が悪く、試合すら満足に出られない。無関係の外部の自分からすれば、「ギクシャクするよなぁ…」と誠に勝手ながら思っちゃう訳です。どっちがどうとか関係なく、状況的に。

自分がノータッチだった数年の間に、山本選手は見事に復活を遂げており、心配されていたファンの方の心中を思うと、誠に勝手ながら(2回目)感動の拍手を贈りたくなる自分がいます(我ながらうざいですね…)。

 

宇野選手の強い推薦で、コラントッテとアドバイザリー契約を結んだ件。

 

涙腺が緩みました。宇野選手がスケートリンク貸し切り練習時に、山本選手も参加させてもらえた良いお話に加えて、若き頃宇野選手にベランダに締め出されたといううっかり笑えるお話……「そら、周囲との良好な関係を築けるよな!愛されるよな!」と至極納得です。

こういう話を、マスコミによって「いかにも!」と美談風に語られるよりかは、「ほとんど取り上げられないけど、日常的に転がっているささやかな優しさ」風に、じわじわ知る方が、自分的には心に大きく響きます。

 

コラントッテ契約選手、フィギュアスケート選手が爆増していて驚きましたが、山本選手の件を見るに、まさに宇野選手の人徳ですね。

一番若いのはジュニアの中田選手ですが、宇野選手より11歳も下(冷静に考えると、彼の人生の年数半分以上は全日本表彰台にいる訳だから…)。この年齢差は高橋大輔氏との年齢差に近く、彼もそういう年齢なんだなと。ということは、宇野選手を憧れと公言している鍵山選手も中田選手も、きっと自身を憧れとする下の選手が出てくるでしょう。

 

コラントッテのアスリート一覧を検索すると、宇野選手筆頭にフィギュアの男子選手は前の方に出てくるので、コラントッテ側もかなり気合が入っているのだろうと感じます。フィギュアファンは年齢層が高めの女性が多く、購買力に期待できるので、宇野選手を起点として、フィギュアスケート男子選手と多く契約するようになったのは、先見の明があるというか何というか…。

ちなみにコラントッテは、関西ではまぁまぁ有名な様で、「フィギュアの宇野昌磨くんがつけてるやつ」も言われましたし、部長からは「(阪神の)岡田監督がしてるやつ!」と言われました(違います・笑)(調べましたが別メーカーでした・笑)。

コラントッテつけているのは、阪神なら大山選手と梅野選手ですね。

 

引退発表直後には、あちらこちらで競技生活を「完走した」ねぎらいの記事が出ましたが、その記事から宇野選手の性格的な温かさが感じられたのは、書き手も宇野選手の人柄の良さを高く評価しているからこそでしょうか。それとも、ただの自分の贔屓目でしょうかね。

 

4:努力の先に見えるのは…

自分が宇野昌磨というアスリートを通して一番学んだこと。

努力を積み重ねると、何が見えるのか。答えは「成功」…は、自分は求めていません。「努力すれば、絶対に夢は叶う」「人の持つ可能性は無限大だ」…このような言葉を、自分は端から信じていません。

 

自らの意志で努力を重ねる姿は、たとえ達成できなくとも周囲の人々の感情…「この人の為に何かできないか」を、動かすことができる。

 

トリプルアクセル習得は、まさにその一例で、宇野選手の凄まじい努力が、先輩スケーター無良氏の「4回転やってみたら?」を引き出したこと。

継続した努力は必ずしも成功を導くとは限らない、けど今後の自分の力になる。

その力の一つは「周囲の人々の応援・協力」

 

加えて、これに外せないのは

「自分の環境は恵まれている」=「自分の成功談は他の人に当てはまらない(当てはまることもあるかもしれない、と考える程度)」が、宇野選手の意識の根底にあること。

 

例え自ら努力をして成功を掴んでも、「自分はこれだけ努力したからできた」と自身のお手柄に依存していると、「だからお前も頑張れ、できるはず」と良かれと相手に押し付けてくるんですよね。

時代が変われば状況も変わる、運もある。人一人の努力だけではたかがしれています。

 

宇野選手は、努力を重ねて成功を掴んだアスリートですが、そもそも「フィギュアスケートという金銭的負担が大きい競技を続けられるほど、ご家庭に財力があった」恵まれた環境の持ち主。多分に彼はそれを自覚している。

彼の言う「周囲の人に恵まれた」は、まさにこの意識から出た言葉でしょう。

 

「自分は、周囲の人・環境に恵まれている」と自覚しているからこそ、他者への感謝・配慮・思いやりがきくし(鍵山選手など、実際日々会っていた後輩選手たちから「優しい」との評)、2018世界選手権筆頭に「誰かの為に踏ん張れる」訳で、周囲からも信頼され愛される(コラントッテイベントの友野選手の「漢」は納得しすぎて震えました…あの世界選手権を目の前で観てましたもんね…)。

思い出に残った試合の理由を「ステファンが喜んでくれたから」て…それ…もうね、自分で惹きつけているんですよ、「自分を愛してくれる人たち」を。

 

ご自身に確固たる「自己愛」があるから、ブレないし、他人に対して素直に称賛と愛情を伝えることができる訳で…2018世界選手権プレカンで、聞かれてもいない(質問はネイサン選手について、だった)3位の「コリヤダ選手が人として好きです」発言、自分は忘れていませんからね(笑)。

 

2022年夏の甲子園で優勝した仙台育英の須江監督の言葉(流行語大賞特別賞)

「青春って、すごく密なので」

がありますが、宇野選手を中心とした男子フィギュア選手にも、それに近いものを感じました。自分1人ではなく、誰か仲間と共に目標に向かって努力した・頑張った時間と空間。

 

名も無きモブ国民その1として、最大の拍手と賛辞を送ります。

ありがとう。

 

(で、まだ余談が続きます…)