日本にて新緑まばゆい山道を散策していた時のこと。もう少し早い時期なら蕗の薹や土筆が楽しめたのにと思っていると、やわらかな蓬を発見。周りには熊笹が繁っているし、これは笹団子を作れとの自然界からの仰せに違いないとばかりに、蓬の葉をせっせと摘んだことがあった。一方熊笹といえば、葉自体はそこそこ大きいのだが、どこかが枯れていたり、欠けていて、団子を包むにはあまり適していないと思われ、その場では取らずじまいだった。

当初、笹の葉に包まれた俵型の餡子の入った草団子を作りたいと思っていたのだが、笹を別途探しに行かねばならなかったし、餡子も作っていなかったので、取り敢えずは蓬を入れた丸い団子を作ろうとなった。実はこれが大成功。

蓬はしっかりと茹でた後でも意外に硬い繊維があって、篩でへらで濾そうと試みたが、とんでもない、包丁で細かく叩く必要があった。それでも、粉と混ぜると、鶉の卵のように斑になってしまい、もう少し丁寧に包丁で叩くべきだったと後悔した。

しかし、驚くなかれ。なんと茹で上がった団子は、ちゃんと綺麗な緑になってくれるじゃあないか。更に、もっと驚いたことに、時間が経つにつれ、その緑の色の濃度が増すのであった。これが感動せずにいられれようか。そして、味も蓬のほのかな香りが、ぐっと増していくのだからたまらない。

団子も上新粉と餅粉の配分を変えることで、歯応えが変わることが楽しい。数日たって、固くなった団子を口に含んで、飴のように楽しむのも一興。こうして、日本ですっかりと蓬団子の虜になってしまった私が、フランスに戻って、バッタ達に作ってあげたいと思わぬはずがないではないか!さて、フランスでの試みは次回のお楽しみ。