寒くなってもまだ蚊はいるもんじゃな。
部屋の中にいたら蚊が飛んできてな、わしの腕にとまりやがる。
血を吸う気じゃなと思い、吸われてなるものかと
もう片方の手でバシッと叩いてやった。
そしたら、逃げもせずに簡単につぶれてしまいおった。
これが夏じゃったら、すばしっこく逃げて、
こちらを発狂させていたはずなんじゃがなあ。

そのあっけなさに、なんだかかわいそうなことをした気になってな、
もう短い命じゃったら、わしの血を吸わせてもよかったかな、
なんて思ったりもしたんじゃ。
夏の元気な蚊には、憎しみは感じても、哀れみなど感じんのじゃが、
寒い季節の蚊はなんだか哀れでなあ、
つい助けたくなってしまうんじゃ。
変な心理よのお。