「一千個を一週間で――売りつくすんですよ…同僚も強力しないのに…同窓生が全部買ってくれると…」

「だから!-誇りも捨てて色目を?」

「今…何と?私を…なんだと…思ってるの?」

「安い女」
テヒは涙を流しながらヨンシクの頬を平手打ちした。

「なんてこと言うのよ…さっきはどういう状況だったのかちゃんとわかって言ってるの?!」

「男は商品を買ってやると口説いて、女はそんな目にあってもじっと耐えてる、もうちょっと上手い事言われたら誘いに乗りそうだという状況じゃないのか!?家族と平凡に暮らしたいんでしょう?その目標の為にやってるのがあんなことなのか」

「わたしはね目標達成の為なら向こう見ずな事もするわ。でももっと思い切った事をする時だってある。あなたみたいに世の中の事なんかわかってないくせに知ったふうな口をきく人に会った時よ!そんな時は何にも考えずにくってかかるわ!さっきあなたが割り込んでこなかったらあの男にも思い知らせてやる所だったのよ!」

 

「……」

 

「アウト?何様のつもりよ。あなた会長様?神様?人の首を切るのが趣味?辞める時は、こっちから辞めるわ、最低ね!」

「おせっかいでしたね」
「なんだと?!あのおばさん、なんであそこまで怒るんだ俺が何した!」
「ぶたれて当然ですよ。」

 

「え?」

「あの男との会話をずっと聞いていたんです。男に一方的に口説かれてましたけど相手にしてませんでした。あの男に『病院に行け』って罵っていたくらいですから。もう少しで殴りそうな所で、本部長が割り込ん…」
「おまえ!もっと早く言えよ!」
「そんなひまは」

「!………っ」

 

 

 

 

 

 

「誕生パーティーなんて煩わしい。いや、顔だけ出していくか顔だけ…」
そーっと部屋を覗くとテヒが仕事をしていた。テーブルにはパーティーハットや誕生日ケーキ、オレンジジュースが置いてある。

しかし他の部下はいなかった。


「びっくりした」

「もう帰ったの?」

「ハイ、こんな時間ですから。みんな二時間以上待ってたんですけど帰りました

「それならそうと言ってくれればいいのに」

「お偉い方だからお忙しいに違いない、って、みんな、そういってました」

「確かに忙しいけど、ホントに忙しいけど、パーティーだって言うから仕方なく来たんだ」

「そぉですか、せっかくの誕生日なのに、悪かったですね~」


「いいけど…待ってる人が…たくさんいるから…」

「そおですか」

「あれ、もしかして、誕生日ケーキ!?」

「ハイ」

「じゃせっかく買ってきてくれたし、これ・・・食べようか…」

 

「………」

「だって悪くなっちゃったら、勿体ない、よね…」

「そおですね」

テヒは立ち上がり、ナイフで切ろうとすると

「あっちょいちょいちょい!」

 

「…」
「…ろうそくは…」
ろうそくをケーキにさしゆっくり火をつけるヨンシク。

そしてフッとマッチの火を消し後ろのごみ箱に放り捨てた。

しかし、完全に火は消えてなかった。

「…暗くしよう」

「ええ?そこまでしなくても。適当に消して食べて帰ってくださーい」

「あ~ホントに冷たいなー。じゃ、歌も歌ってくれないの?」

「…」
「誕生日♡」
「誕生日・・・・うぅぅうん!〇っぴバースデーとぅーゆー。〇ッピバースデーとぅーゆー、ふんふふーんふーんク本部長~。〇ッピバースデートゥーユー」

面倒くさそうにテヒは手をぺちぺち叩きながら適当に歌った。
「わああああああ」

歌い終えたテヒはすぐに手をおろした。
「・・・・」
ヨンシクが拍手しろ、というよーに自分で拍手した。

しかしなかなかテヒは拍手しようとしない。

めげすにヨンシクは拍手すると、また面倒くさそうにテヒはパンパンと拍手した。

そしてろうそくの火を吹き消すと・・・・

 

 

 

 






「ちょっと待って!」

「すみませぇん、この上に座ってもらえます?シートが塗れちゃうんで、洗車が…」
「…はい」
「すみませぇん」



「秘書の方ー連絡つきませんか?」
「ホントにつかない。五時過ぎると電話に出ないんだ」
「それじゃ車は?」
「今日はバイクで来たんだよ。こんな格好でバイク乗ったら風邪ひいて死んじゃうだろ!
「それなら専用機とかヘリとか呼んだらいいじゃないですかー。そんじょそこらのお金持ちじゃないんだから。「安い女」が運転する車なんかに乗って」
「根に持つんだ」
「すごく根にもつんです。恩は返せなくても恨みは必ず返す、がモットーですから」
「ひどいなー誕生日にわかめスープも食えなかったし」
「苦労して産んだお母さんが食べるべきね」
「さっ、寒いからヒーターガンガンにかけて!」
テヒはぎろっとヨンシクを睨みつけた。
「・・・・・・この間は…誤解して…ひどい事を……そっちのせいだけど!・・・・・とにかく…誤解だったし…まあしょうがないけど」
「あら、謝りたいの?」
「一方的に謝ることじゃないけど…でも…」
「謝りたい?」
「ハイ!」
「うーん、なかなか言えないのね」
「・・・・・・・・」
「私も叩いてごめんなさい」
「…」
「誰かの大事な息子なのに」
「大丈夫。そんなに大事にされてないから」