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*―*―*―*―*―*―*―*
文月

腹立たしいんでィ

ずっと心の隅で願っていたのに

もし、チャイナと仕事ができたら
もし、チャイナと一日過ごせたら
もし、チャイナが・・・


ずっと傍にいてくれたら


けれどそれは独り占めなんか
できるはずなくて

彼女を取り巻く事情を知らない
隊士たちを目の橋に捉え

俺は小さく溜息をついた

…このモヤモヤは一体
何だっていうんでィ

***

私はまだ“神楽”の格好である
チャイナ服だったので
屯所の裏口から入る事にした

サドは今すぐやりたいことが
あるらしいので表の門から
入っていったみたいアル。

『誰も…いない…よナ??』

私は用心深く回りを見る

よし!今ネ!!!

駆け足で廊下を走り抜けると
急いで自分の部屋に戻った。

『おっし!
誰ともすれ違わなかったアル!』

私は頭のボンボリを外すと
紅色のチャイナ服を脱ぎ捨て
真選組の制服に腕を通した

その時、手首につけていた
ブレスレットが目に入った

“本当でィ。可愛いでさァ”

沖田の言葉が頭の中でこだまする

ボフンと頭の中で何かが爆発した

『かかか可愛いって…きっと
“アクセが”って事だよな!??』

私はそうやって、
自分に言い聞かせた

最後に机に置いてあった、
伊達メガネを付けると
すぐさま部屋を出た。

「あ。神奈さん!!
みんな外で飲み食いしてますから
後できて下さいねー」

瓶を小脇に抱えている平隊員
が親切に教えてくれる

『あ、そっか今日は
七夕だっけ、』

今回も酒が入って暴露しないよう
気をつけなきゃネ!

進められても飲まないように
しないと・・・なぁ。

私もその平隊員と
一緒に外へ出た

「お、神奈ちゃん!
日頃の嫌なことは
飲んで食って忘れてくれ!
今日は無礼講だ!!!」

ゴリラはお約束の全裸で酒を飲む

「近藤さん。。。
自分が今裸だということは
忘れて欲しくないんだが…
神奈さんだっているんだから…」

その隣で苦笑している土方

大丈夫アル
ゴリラの股の汚物は見慣れたネ。

「織姫と彦星に乾杯だ!!」

ガハハと笑うゴリラ。

…もうほっとこう。

空を仰げばすっかり日が落ち
ぽっかりと満月だけが
輝き、辺りを照らしていた

星という星があまり見えず
目に映るのは赤やら青やらの
天人ののる船のライトだけ

「俺たちの田舎の方が
もっと綺麗に見えたんだけどなぁ
天の川やら星やら。」

少し寂しそうに土方が
ポツリと話す

「お、田舎といえばトシ。
もう“済ませた”のか?」

意味ありげに近藤が
土方に問いかける

…?

“済ませる”って・・・?

一体何を。。。?

「ああ。
あとは総悟だけだ。」

皮肉そうに笑う土方

土方は窄めた唇から吐き出された
煙草の煙が夜の夏の風に
流されるのを眺めていた

『?
隊長がどうかしたアルか?』

イマイチ内容が付いていけない
のが気になり、聞いてみる

「うんにゃ、コッチの話だ
神奈さんが気にする事ァねーさ」

吸殻となった煙草を消すため
地面にほっぽり靴で踏みつけた

「あれ、
そういえば総悟は?」

土方はキョロリと周りを見る

言われてみれば確かに
沖田の姿が見えない

どこいったんだ?

ま、どーでもいいネ

『そんなことより
とにかく食おう♪』

私は長いテーブルに
置いてあった肉に手を伸ばした

「神奈さん神奈さん、」

料理を女中さんと運んでいた
山崎が話しかけてきた

『ん?何アルか??』

右手に持ったスペアリブを
ヒョイと口の中に放り込む

ん。なかなかウマイ
万事屋の味付けには劣るけどな

「あの…沖田隊長に
聞いてくれましたか?」

ジミーが声をひそめて話す

『え?何をネ??』

アイツに聞くこと?
うーーん……
全く覚えてないアル。

「何をって、アレですよ!!
沖田隊長の誕生日で欲しい物
ないか聞いてほしいって奴です!
…まさか…聞いてないですか?」

山崎がじぃっと凝視する

あー、ソレかー!!!

『う・・・。
申し訳ないアルが…』

ごめん山崎。
地味過ぎて覚えてなかった
地味過ぎて。

そういえば、奴の誕生日って
七夕の次の日だから…

『…誕生日。。。
数時間後じゃんかヨ!!』

「そうなんですよ!
…どうしよう…案外あの顔で
毎年楽しみにしてるからな…」

へぇぇ。
お祝い事に興味持たなそうな
あのサドが??

『それじゃ、
直接隊長に聞いてみるか…』

しょーがない。
探しに行くとするか

ん…ちょっと待てヨ??

短冊にもしかしたらアイツの
“欲しい物”が書かれてるかも!?

わっほい!
我ながらナイスアイテムアル♪
(それを言うならアイデアね。)

そうと決まれば笹を見に行こう!

「じゃ、宜しくお願いします!
頼みましたよ!!!」

山崎は軽く頭を下げると
他の隊員達の所へ戻って行った

『ええと…笹。。。か』

中央にある笹には沢山の隊士達の
短冊が飾られている

近くまで寄り、見上げると
思わず息を漏らした

全ての短冊が満月の光を受けて
水色に発光していて綺麗だった

『わぁ……
まるで天の川みたいアル』

・・・って、
感心してる場合じゃないアル!!

…こうして見ると…

この中から沖田のを探すのは
結構大変アルなァ。。。

屯所の人全員の中から一つを
見つけるなんて完全無理っ!!

量が多すぎて途方に暮れていると

「アラ、
神奈ちゃんどうしたの?」

通りかかった女中さんに
話しかけられた

しかも結構仲のいい人。

ラッキー!この人なら……

『あの…実はかくかくしかじかで
沖田隊長の短冊を
コッソリ見たいんだけど・・・
……ダメアルか?』

両手を顔の前で合わせて
所謂“お願い”のポーズをする

「えっと…あ!!
沖田隊長さんのなら、さっき
笹から取り外してたわよ?
しかもご自分で。」

『えええ!??』

雷打たれたような感覚

ま…まじでか。

くそぉ~
唯一の手がかりがぁ。。。

くうっと悔しさの意味を
含めた声をあげた

『…隊長。。。どこに居るか
知っているアルか??』

もしかして…
それが帰る時言っていた
今すぐやりたいことなのか??

それで帰りの際は笹から近い
表の門から入ったってことか。

「えーと…
ちょっと待ってちょうだいな
今思い出しそうだから」

記憶の糸を探るように顎をさする

数秒後「あ!」と声をあげる

「自分の部屋に行ったと思うわ。
厨房から食事を運んでいる時、
部屋に入って行く沖田隊長を
お見かけしたから。。。」

自分の部屋…?

『分かったアル!
教えてくれてありがとヨ!!』

女中さんに笑顔でお礼を言うと
小走りで部屋へと向かう

…でも何でわざわざ、
笹から短冊を取ったんだろ?

私はうーーん…と
頭の中で悶々と考える

ドタドタと部屋に通じる
廊下を駆け足で通る

もしかして。。。
他の人に…その願い事を、
見られたくなかったからとか?

もし仮にそうだったら。。。
聞き出すとか…ダメかな?

そんな事思っていたら
もう部屋の前まで辿り着いていた

沖田の部屋の襖をノックする

『隊。。。
…サド~?いるアルか??』

一枚の襖の向こうからは
音が一つもしない

・・・人のいる気配もないし

ゆっくりと襖を開ける

『ありゃ、やっぱり居ないアル』

前回みたいにまた
寝てるのかと思ったネ

『ん、コレもしかして
あいつのケータイアルか?』

机の上には置き忘れたのだろうか
彼の携帯電話があった

万事屋はあの時(アニメ第230話)
以来、ケータイを携帯していない

『万事屋と違って真選組は
こーいうもん持ってないと
仲間と通じ合えないんアルな!』

羨ましくなんかないアル!
断じて!!

『ちょっとくらい弄っても
バレないアルよな!』

好奇心に負けて私は
携帯電話を手に取った

ふむふむ、
待ち受けは意外に普通アルな

『ん、メールに新着。。。
っていうかフォルダ?』

何気なくそのファイルを開くと
どこかで聞いたことがある
男3人の会話が保存されていた


―――――――――――

「旦那戻りましたぜ」

「フン。真選組の奴等には
見つからなかっただろうな」

「はい、もちろんッス!」

「そうか・・・・
それではお前達の。。。
任務はもう終わりだな。」

「「え・・・?
だ…旦那!?何で銃口を向けッ」」

ズドン

「こんな盗聴器など付けられて
馬鹿な奴らめ。
下種(げす)共を向かい入れる
船などわしは用意した
覚えはないのでな。」


・・・ピーー

7日7日、午後7時23分

―――――――――――

『え・・・。
今の…何アルか?』

今日カフェで私の
席の後ろに座ってきた
天人の顔が脳裏に浮かぶ

『もしかして。。。』

・・・殺された?

弾丸の音がまだ頭の中で
残っている

平気で仲間を殺す連中に
そよ姫ちゃんは。。。?

怒りと不安で胸いっぱいになり
冷や汗が噴き出る


「だめじゃねーか、
勝手に人の携帯見ちゃ
警察に訴えるぞコラ
…あ。俺警察か。」


するりと手から携帯が
抜き取られる


『のわッ!?』


思わず声をあげて振り向くと
少し不機嫌顔のサドがいた

風呂上がりなのだろうか
髪に雫が残っている

『あはは…ゴメンアル
好奇心に負けて。。。』

笑って誤魔化そうとするが
軽くスルーされる

「コレ、聴いたのかィ」

コツンと人差し指で自分の
携帯を軽く叩く

『・・・。』

無言で首を縦に振った

「そうかィ
お前には聴かせたくなかった
だけでィ。出来れば。
…別に隠そうとした訳じゃねー
んだけどなァ。
・・・不安になったろィ?お前」

『…うん。』

不安だ。

その一言。

今この瞬間殺されていたら
どうしようなんて考えが
頭の中でぐるぐると回っている

「……どうやら俺達の敵は
想像以上にヤベー奴みたいだな」

彼は重いため息を吐くと
それを飲み込むかのように
机にあったお茶を喉に流し込んだ

「で、どうしてチャイナが、
俺の部屋にいるんでィ?」

いきなり話題が変えられたので
少し戸惑いを隠せなかった

ニコッと笑うが目は笑ってない
所謂黒笑ってやつ。

『え~っと。。。
それはデスネ…』

冷や汗が頬に垂れる
泳ぐ目線を巻き取るように
彼は凝視する

「…最近山崎と何かコソコソしている
って言う噂を聞いたんだけどねィ
一体何を隠しているんですかィ?
さっさと白状しやがれィ。」

『う゛ッ・・・』

“誕生日プレゼント何が欲しいか
探るために部屋に入ったアルー!”
…な~んて言えるわけがない。

言ったらサプライズじゃ
なくなっちゃうアル!!

心の中でそう叫ぶが
もちろん相手には届かない

『・・・そよちゃんに
ついての事だけアル。。。ヨ?』

声が冷や汗のせいで震えて
説得力がない感じになってしまう

「本当に?」

とっさに考えた嘘も
念を押す様な鋭い声に
直ぐに打ち壊されてしまう

逃れられないような
視線につい、たじたじとなる

『本当…アル。。。』

声が小さくなるに連れ
自信も小さくなった様な
気さえ感じた。

「ふーん。そーかィ」

お。。。?

納得して貰えたアルか!??

「男の部屋に入ったってことは
“その気”があったって解釈して
いいんですよねィ?」

『・・・は??』

―――グイッ

彼は自分の腕を強く
掴み取り、体を引き寄せた

『きゃっ』と驚きの声と共に
相手の体に密着する形となる

そして
妖しい笑みを浮かべて
顔を近づけさせた

『ちょっ!?なっ
はァ!!?』

相手の行動にテンパりながら
じたばたと身動きをする

しかし壁側まで追いつめられ
逃れることが出来なかった

濡れた髪からシャンプーの
甘い匂いが漂い鼻をくすぐる

『う。。。ぁ・・・?』

何も考えられなくなり
頭がボーっとする

頭を動かせばぶつかるぐらいの
距離にまで近づく

「なぁ?どーなんでィ??」

滑らかな声を耳元で囁かれ
一気に心拍数が上がる

『~~~ッ!!
ふざけるのもいい加減にしろ!』

ドゴッ


顔面に一発拳をお見舞い

「ぐぁあああ!」殴った所を
手で覆いその場で転がる

あぁッもう!!

冗談もほどほどにするアル!!!

「え、違うんですかィ?」

彼はゆっくり起き上がりそのまま
ニヤニヤしながらこっちを見る

――ブチッ

太い血管が切れる音が体に響く

絶対分かってて言ってやがるな
コイツ・・・

・・・もう一発やってやろーか?

震える拳と込み上げる
怒りを抑えて、
ふぅとため息をつく

『しゃーないネ。
サプライズになんないけど
全部言うアルヨ』

面倒くさくなり、
全て白状することにした



*

「フーン。そんで
“欲しいものが書かれた短冊”
を探すために俺の部屋に
来たと言う訳ですかィ?」

風呂で火照た体を冷ますように
団扇を仰ぐ沖田。

『そうアル!
変な勘違いしてやんの
ププ、恥~ずかしッ!!』

わざとウザく嘲笑する

「あー。。。
そーいや捨てて無かったっけ
短冊。」

懐から一枚の短冊を取り出す

あ、確か今日の月に照らさないと
文字が浮き出ないんだっけ。

『それ見せるヨロシ!』

よこせとばかりに手の平を広げる

「見てどーするんでィ?」

『え?』

「短冊に書いた願い事が
“叶った”から外したんでさァ
だから見ても意味ねーよ?」

『・・・。』

「・・・。」

『はぁぁぁぁあああ!??
まぢでかぁぁぁ!???』

がっくりと肩を落とす

サプライズがバレたうえに、
プレゼントも用意できない
なんて。。。

本日二回目、
途方に暮れた。

「まぁ、この短冊は
お前が入隊してすぐに
かいたものだからねィ
その間に叶ったって訳でさァ」

『…他に。。。
欲しい物とかないアルか??』

「欲しい物ねぇ…
今は特にねーなァ。」

『そう…アルか。。。』

気を落とすとともに力が抜けた

「大丈夫でさァ。
皆が祝ってくれるだけで
俺はもう満足でィ。」

『・・・。』

手に持っていた短冊を
空になったコップの傍に置く

「そんじゃ、
俺たちも戻ろうかねィ」

慰めるかのように私の
撫でる様に頭を軽く叩き、
部屋の扉口まで行く

『ぬぁっ!待つネ!!』

その場から立ち上がり
追いかける様に同じく部屋を出た

*
『みんなー。
沖田隊長いたアルヨー』

私の声で振り返る
近藤と土方

「おお。総悟!
何処行ってたんだ?
探したんだぞ??」

土方のおかげか近藤は
服をちゃんと着たらしい

見慣れてるからあんま
気にしないんだけどネ。

「すいやせん、あ。
もうやっちゃいやしたかィ?」

「いいや。
お前が来るまで待ってた。」

『??』

……えーーと。。。?

「神奈。
この後笹とか短冊はどーするのか
知っていますかィ??」

みんなの前なので“チャイナ”
ではなく“神奈”と呼んだので
一瞬反応が遅れる。

『知らないアル。』

「燃やすんでさァ。」

『ぅええッ!??』

「地域によっては違うみてーだが
笹と短冊は燃やすっていう
風習があるんでさァ」

『何で燃やしちゃうアルか??』

そう尋ねるとサドの隣にいた
土方が代わりに答えた

「詳しくは知らねーが
大雑把に説明すると、
煙と共に願いよ天に届けー
とかそういう意味みたいらしい。
まぁ、日本では川に流すのが
ベストらしいんだがな。」

『へぇー!物知りアルな!
流石マヨ方アル!!』

感心して頷く

「・・・え?何?マヨ方??」

あえてツッコミはスルーしとく。

すると中央でがやがやと
人々がざわめき始めた

「えー、
それでは全員揃ったよーなので
焼いていきたいと思いまーす」

ゴリラが拡声器を持ち
隊士たちに告げる

近藤の近くに土方が寄り
持っていた棒に火をつけ
大きな松明(たいまつ)となった

その松明を竹の根元に近づけると
火はそれを飲み込むかの様に
竹を包み込んだ。

「おぉっ!」っと辺りから
隊士達の歓声があがる

パチパチと拍手の様な
音を立てて燃え上がった竹。

やがて竹の節からは白い煙が出て
空へともくもくと立ち上った。

まるで一本の天へ繋がる道の様。

キャンプファイアーを連想させる
ような火に思わず魅入った。

『ごっさ綺麗アル。。。』

あ。そーだ、

『うおーい、ジミー!』

遠くでほかの隊士達とカバディを
していた山崎を呼ぶ

「ん、神奈さんどーしました?」

『隊長、今は欲しい物ないから
皆がお祝いしてくれるだけで
それでイイって言ってたアル』

「あー。確かに…
隊長が今望んでいるのって、
アレだもんなァ。」

山崎は意味有り気に笑う

『それってどーいう意味アル?』

アレって何だヨ。

「アハハ、
隊長と過ごしていればすぐに
分かりますよ、」

何だか皆は解けてるのに
自分だけ答えが分からない
っていう感じの感覚。

『…フーン???』

…アレ?でも何か前にも
こんな感じしたことあるよーな…

「おーい山崎ィ」

先程までカバディを楽しんでいた
隊士たちは再び山崎を呼ぶ

「あ。神奈さん、
呼ばれてるんで行きますね。」

ペコリと会釈すると飛ぶように
さっきの場所まで戻って行った

さて、私も楽しもうかな

夏の夜の涼しい風を受け
光り輝く竹を眺めながら
時を過ごした。

*
午後10時は迎えただろうか

周りを見ると
酔い潰れている者までいる。

私がその辺の隊士たちと
立ち話をしていた時

「チャーイナ。」

『ぬぉあッ!!?』

急に視界が閉ざされ
驚きの声をあげる

誰かが急に私を背後から
目隠しをしているということに
気づくまで少し掛かった。

自分の目を覆い隠している手を
振り払い後ろを振り向く

私を“チャイナ”って
呼ぶ人物は一人に決まってる…

『何するネ!沖田隊長!!』

周りに人がいるので一応
“隊長”と呼んでおこう。

「すいやせん。
隊士たちと何を話してんのかな
っと思ってねィ」

何が可笑しいのか
首を傾げながらへらへらと笑う彼

・・・あ。。。れ?

なんかいつもと雰囲気ちがくね?

暗くてよく見えないが
調子が違うというのは分かる

『何話してんのかなって
言われても・・・
ただの世間話アルヨ?』

アハハと笑い上手く話を
かわそうとした瞬間

私に寄りかかるかのように
抱きついてきたのだ。

『!??』

い…いきなり何アルか!?

『た…隊長!?』

うぐぁああああ!!?
何してるアルかコイツぅぅう!
みんな居るのにィィイイイ!!

今気づいたんだけど…
コイツの体温。。。
異様に高くねーか??

『…もしかして。。。
どこか具合でも悪いんじゃ…?』

「なーに言ってるんでさぁー
もー、逆にいい気分~ヒック」

…ヒック。。。?

『もしかして…隊長。。。
…酔ってるアルか??』

再び彼の顔色を見ると耳まで
赤く帯びてなっており、

仄かにアルコールの香りがする

「あああ!隊長!!だから
そんな飲んではいけないと
言ったんっス!!!」

慌てるように駆けつけてきたのは
ビン底眼鏡でお馴染み
神山である。

『隊長…
どのくらい飲んだネ?』

酒のせいで二日酔いになった
銀ちゃんを散々見てきた
自分にとっては気になること。

大人はどんだけ飲んだら
あんな風になるのか。
本当に疑問だ。

「瓶を数本程…ですね…
そうだ!神奈さんの事で。。。」

『?私のこと??』

尋ねるとそのまま言葉を繋げる

「はい!神楽さんと神奈さんは
同一人物なんて面白い冗談を
言ってたっスしねー。。。
その時には既にはかなり
酔ってたんではないんスか?」

神山さんがハハハと笑う一方、
私は口元を引き攣らせる

何バラしてんだボケぇぇぇぇ!!

思わず口に出そうなったのを堪え
心の中で怒声をあげた。

『神山さん、
隊長、部屋に連れて行くので
皆にお伝え宜しくアル。』

「了解しましたっス!!」

盛大に唾を散らしながら敬礼する
神山の横を通りすぎる。

引き攣りながらも笑顔を
保っていた私は瞬時に
キッと沖田を睨みつけた

千鳥足になっている相手を
助けるように肩を貸して
私達は部屋へと向かった

***

沖田の部屋へ戻ると既に
敷いてあった布団に彼を寝かせる

「気持ち悪ィ…」

弱々しく布団の中で呟く

ざまぁみろネ

私は沖田の見えない所で
小さく嘲笑した

『何でそんなに飲んだアルか。
何か嫌なことでもあったネ?』

んー… と沖田は唸ると
ボソリと言葉を零した

「なんつーか。。。
お前を見てたらイライラして…」

なぁっ!?

…私沖田をイラつかせる
ようなコトしたっけ。。。?

『もしかして今日のお出かけ
楽しく無かったアルか?』

「いや、楽しかったですぜィ。」

柔らかい笑みを零す

「けれど…」

眉を少し寄せると
そのまま言葉を続けた

「言われてみれば
この前から変なんでさァ」

心の奥底から引き出すように
一つ一つ言葉を紡いでいく

「水道のところで土方さんと
お前が話してる所とか」

「山崎と世間話している姿とか
見ていたら急にイライラして…」

つまり“ヤケ酒”という訳か。

なんで、ただ私が他の人と
お喋りをしていただけで…??

うーん・・・?

よく分からないアル。

『・・・ま。いいや
そんじゃ、私戻るから』

なんだか部屋へ行ったり来たりで
面倒くさいアルなぁ。。。

フゥと深い溜息を吐き出し
その場から立ち上がろうとした時

「待ちなせェ」

そう呟くと彼は引き止める様に
私の服の裾を引いたのだった

『きゃっ!??』

驚きで声をあげるとそのまま
布団の上へと倒れこんでしまった

『いててて。。。
わっ!ごめんアルっ!!』

瞬時に頭を上げて
体勢を整えようとする。

しかし。
沖田がさらに強く私の肩を
掴み、そして彼の方へ抱き寄せた

『・・・え??』

今の状態が理解出来ない。

ええと。。。

今…私は。。。
コイツに・・・


抱き締められて居る??


『ねぇ、サ…
沖田。。。?
一体どうしたアルか??』

自分の顔が相手の胸に
押し付けられているので、
表情を読み取ることもできない。

それにしても今日のコイツは
とても変だ。

彼自体も“変”と認識している
ようだけれど・・・

土方や山崎や他の隊士と
話しているだけで
イラついていたり。。。

誰もいない公園で
複雑な表情をしたり。

柄でもなくお出掛けに
誘ってくれたり。

前回部屋に行った時も変だった。

「分かんねェ。」

どこか寂しそうに沖田は、
掠れ声で自分の耳元で囁く。

「けれど…」

付け足すようにまた
途切れとぎれに言葉を発する

「怖いんでさァ。」

彼はより力を込めて服の布を掴む

まるで、何かに縋るように。

『何言ってるアルか。
お前に怖いもんなんかあるかヨ。
江戸のチンピラ警察だろーが
何も怖いことなんか…』

「怖いんでさァ。
・・・お前が、神楽が。。。」

そう言い終わると
また私の肩を掴み、
今度はゆっくりと遠ざけていった

『それってどういうことネ?』

怖い。。。?私が??

二人の視線絡みあう

いつも悪戯な色で満ちた彼の瞳が
どこか怯えている目付きだった。

「俺の知っている

チャイナが、

神楽が」


彼の手が私の頬に触れる


「誰かに取られそうで

どこかに消えてしまいそうで
怖いんでさァ」


夜風に当たっていたせいか
指先が冷たい。

まるで、

氷に触れているような感覚


誰かに取られる?

自分が消える?

何を馬鹿なことを。

大体

『自惚れんなヨ
私はお前のモノじゃないネ
勘違いも甚だし…「そういうことじゃねーんでィ」

「違うんでィ。。。
俺もよく分からねェが。」

『なんだヨ それ』

そんなこと言って苦笑したが
私だって“自分が消える”感覚が
無いことなんて・・・

・・・ない

早く銀ちゃん達と他の皆の元へ、
万事屋へ帰りたい

早くこんな堅苦しい服を
脱ぎ捨てて公園を駆け回りたい

早く“神楽”として
コイツと・・・

ケンカしたり
いがみ合ったり

馬鹿なことをしていたい。


ーーー・・・あ。


(「俺ァ、神楽としてのお前と
来たかったからねィ。」)

(「このブレスには神楽って
文字を入れて下せェ。」)

『もしかして、だから…
今日チャイナ服で来させたり、
このブレスを買ってくれたり
したアルか??』

神楽としての、私が私を
忘れないようにするために…?

そう答えに辿り着くと、
相手はゴチンと自分の
おでこ同士をつけた。

『痛ッ!何するネ!!』

「気付くのが遅ェんだよ。
ばかぐら。」

『うっ、うるさいアルっ!!』

あ。

『そういえばまだ、
よく分かんないのがあったアル』

「んー…
何ですかィ?」

『他の人たちとおしゃべり
しているだけでなんで
そんなに怒ってるネ?』

「さぁ…な。」

眠いのか、
力なく消えそうな声で呟く

『…なぁ。』

もしかして
もしかすると

『嫉妬。。。アルか?』

なんて
あるわけないのに

「!
・・・。」

一瞬反応するがそれ以外は
動きを示さなかった

『じょ…冗談アルヨっ』

「・・・かもな。」

『へ?』

彼がそう小さく言うと

静かに沖田は私から伊達眼鏡を
外して畳の上へ置く

『?』

「あの・・・さ。
俺、前にこの部屋に来た時
欲しいものは特にないって
言ったよな?」


『え・・・うん。』


「悪ィ…今夜だけ。。。
こうしてて良いですかィ?」


『・・・。』

コクンと頷くと彼は
やんわりとほほ笑んで
眠りに落ちていった


柄にもないこと
言ってんじゃねーヨ。

酔ってなかったら
こんなことしないんだから

まぁいいアル。

静寂に包まれた部屋の中
すっかり夢の中にいる
沖田の耳元で囁いた


『今日の私はいつもより
優しいんだからな』


…言い訳にもならないか

そう思って忍び笑いをする


***

部屋の隅に置かれた卓袱台

そこに置いてあった
一つの和紙が

障子の隙間から洩れた夜風に
揺られてくるくると舞い
そして地面に落ちた。

やがて月の光を浴びると

まるでホタルの様な
光の色の文字が

魔法のように
浮き出てきたのだ


“チャイナにあいたい。”


とある少年の願い事は


江戸を温かく照らす満月
だけが知っている。

*―*―*―*―*―*―*―*

これ描き始めたの一昨年頃でしたが
『ばかぐら』公式キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

前回の話を読み返ししたら
文章の拙さに“oh…”って
なりました・・・(今もだろ)

今も読んでくれてる方って
いるのかしらねー(;´・ω・`)

今回も読んで下さり
有難うございました!

次回⇒≪執筆中≫