実は私は、人種問題だの差別問題だのを扱った小説は、読まない。
楽しくないのだもの。
「差別はいけないことだと思いました」
「2度とあってはならないことだと思いました」
そんなギフンにかられないとならない感じ、
とりあえずそう言っておけばよい感じが、
とにかくイヤなのだ。
こちとら、いい加減、学校で読まされたのだ。
とうにいっぱいいっぱいだ。
もう読みたくない。
なのだけれども、これは面白かった。
面白いのかつまらないのかわからないが、
なぜか、つい読み進んでしまう話というのがある。
『あの夏が教えてくれた』は、
まさにそんな感じで話がはじまる。
主人公は ボーディ・サンデン、
ミズーリ州の田舎町で暮らす15歳の少年だ。
時は1975年・・・・・・といってもピンとこないだろうが、
カセットテープが普及しはじめる頃である。
カセットテープが最新のトレンドで、
かっこいい、とがった、
まだ恵まれた人しか持てないような代物であった時代だ。
ボーディ・サンデンってどこかで聞いたような名前・・・・・・
アレン・エスケンスの本をいくつか読んだ、
勘と記憶力の良い方ならお気づきだろう。
えー、あの?!
あの作品、この作品に出てきた、
あのボーディ・サンデンが主人公なのである!
・・・・・・
・・・・・・
申し訳ない。
実は私はすっかり忘れていた。
そういえば、そんな人がいたような?
という、見事なうろ覚え状態で読み進めたのだ。
えーと、えーと、ボーディって、
たしかあんな人だったようにうっすら記憶しているけれど、
ふーむ、人には歴史があるのねーと、
描きようにうなずきも感心もしたのである。
さすがアレン・エスケンス、
うまく描くなあと感心したのだが、
それもそのはず、
作者が20年の歳月をかけて書いた話なのだ。
『わたしは本書、『あの夏が教えてくれた』を、(・・・・・・)一九九一年に書きはじめました。(・・・・・・)この小説を棚上げにしたのは、二十年、取り組んだ後のことです。(・・・・・・)ついにこの小説を書けて、本当によかった。』 (冒頭)
「では、他の作品を読んでいないと、面白くないのではないの?」
当然の疑問だが、心配ない。
初めて読む作品がこれでもいっこうに障りなく、面白い。
たしかに、他作品を知っていればさらなる楽しみがあるだろう。
「へー、あの人にこんな過去がねえ」
「え、あの人もこの話に!」
「こんな場面、あの話でもあったような・・・・・・」
そんなこんなは、後で他作品を読んだ時におぼえればいい楽しみだ。
現に、見事なうろ覚えの私が、非常に面白く感じた1冊なのである。
初めてアレン・エスケンスを読むにもよい1冊だ。
さらに私は、私にしては非常に珍しい表現も加えて、
この本を薦めようと思う。
『高校生の読書感想文におすすめ』
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アレン・エスケンス他の作品はこちら。