小出裕章『原発のウソ』に対するツイットのレベルが低すぎる
小出裕章『原発のウソ』に対するツイットのレベルが低すぎる
小出氏の
原発は温暖化対策に寄与するというが、原発から海へ温排水が流されることによる環境問題がある
という主旨の批判に対して、
ツイッター上では、
温排水の問題は、火力でも同じだろ
という内容の発言が、多く見られます。
しかも、
原子力と火力とで、エネルギー変換効率に違いがない
と思い込んでいるようなのです。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw70751
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とんでもない誤解ですので、ご存じない方は以下のサイトを読んで、きちんと勉強しましょう。
Wikipedia 日本語版「コジェネレーション」の「ガスタービンエンジンシステム」の項→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%8D%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3#.E3.82.AC.E3.82.B9.E3.82.BF.E3.83.BC.E3.83.93.E3.83.B3.E3.82.A8.E3.83.B3.E3.82.B8.E3.83.B3.E3.82.B7.E3.82.B9.E3.83.86.E3.83.A0
同上「コンバインドサイクル発電」→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB%E7%99%BA%E9%9B%BB
東電のサイトより「1,500℃級コンバインドサイクル発電」→ http://www.tepco.co.jp/tp/howto_h/macc/index-j.html
Wikipedia ドイツ語版には、Wikipedia 日本語版の図より詳しく、また、東電の図よりも大きくて見やすい図が載っていますので、そちらも紹介しておきます。
(画像クリックで拡大)
出典は http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/40/Prinzip_Gas-und-Dampf-Kombikraftwerk.svg
さて、この「コンバインドサイクル発電 (ガス‐蒸気コンビ発電、CC発電)」の発電効率ですが、ガスの温度に依存します。
高温で稼働するシステムのほうが、高効率。
現在稼働しているシステムでは、高温型の場合、60%に近い効率となっています。
ドイツの電力会社 E.ON の Irsching (イルシング)発電所では、60.3%の効率での運転を予定しており、今年(2011)の試運転では60.75%に達したそうです(システムは Siemens (ズィーメンス、ジーメンス、シーメンス)社製)。
(情報源は
Wikipedia ドイツ語版「Gas-und-Dampf-Kombikraftwerk」→ http://de.wikipedia.org/wiki/Gas-und-Dampf-Kombikraftwerk
同上「Kraftwerk Irsching」→ http://de.wikipedia.org/wiki/Kraftwerk_Irsching
同 英語版「Combined cycle」→ http://en.wikipedia.org/wiki/Combined_cycle
および 東電の既出サイト
)
原発に比べて、倍に近い発電効率です。つまり、供給出力あたりの廃熱は、原発のほうが CC発電の倍近くになる、ということです。
こういう基礎知識もなしに知ったかぶりで得意げにものを言うのは、痛々しいものです。今は、情報収集が簡単にできるのですから、公に発言するのは、少し物を調べてからにした方が良いでしょう。
と、原発擁護の皆さんを批判しましたが、返す刀で脱原発派の皆さんにも一言申し上げなくてはいけません。
あなた方は、CC発電についてご存知でしたか?
もちろん、以前から知識を持っていたという、意識の高い方もおられるでしょう。けれども、「今までは知らなかった」という方は、小出批判派の発言をどう受けとめましたか? もし、スルーしてしまっていたとしたら、それは問題です。
小出さんのような立派な人がおっしゃっているのだから、間違いないはずだ。一般人のツイットなんか、無視。
そういう姿勢は、「専門家」や推進派政治家などの言い分を鵜呑みにして「原発をなくすと経済が大変」「生活レベルが下がる」論を妄信している原発固執派の皆さんと、なんら変わるところがありません。
仕事や家事が忙しくて、なかなか情報を集められない
という事情の方も、大勢いらっしゃるでしょう。
けれども、
暇なときにちょっとずつでも知識をつけよう
という意識は持ち続けていただきたいと思います。
「分からない問題に対しては、無理に急いで結論を出さない」「自分の好みに合う言説に飛びついて信じ込まない」というのは、大切なことです。
最後に、ドイツのフランスからの電力輸入について、良い情報を紹介します。
これについても、結論だけに飛びつくのではなく、「なぜ、そういう結論が言えるのか」というところを、きちんと納得してください。
ドイツ・フライブルク市在住の環境ジャーナリスト村上敦(むらかみ あつし)氏のブログ
ドイツの急速な脱原発は、フランス原発に依存か? 1 2 3 4 5
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