「理解されなきゃ生きていけない」

少女は叫ぶ
涙の溜まった瞳には他人など少しも映らない

手のひらに爪が刺さるほど
強く強く握った拳は
自分を傷つけるとともに相手を威嚇する


少女は傷を癒すつもりなどない
被害者でい続ける幸せを知っているからだ
外に救いを求める楽さを知っているからだ


「喚くんじゃない
 大人しくしていろ
 命が終わるその瞬間を、
 ただただ待ち続けろ

 お前、変わる気無いだろう
 わかりやすい苦しみに酔っているだろう

 だいたいみんなが知ってる苦しみだ
 分かり合える苦しみだ
 良かったじゃないか」


少女は声が聞こえる暗闇を睨む


「臆病ね
 姿を現すこともできず、
 そんな暗闇でしか威張れないなんて」


瞳から一粒涙が溢れる
小さな小さな雫は地面に吸い込まれ、
あっという間に消えてゆく


少女の挑発に乗り
"あいつ"はゆっくり暗闇から現れる


「理解されたいのは何のためだ
 お前はどうすれば満たされる

 知っているんだろう、
 だから逃げるんだろう」


少女の足元にパタパタと雫が落ちる


「強がらなくて良いから
 弱いままで良いから

 お前が笑っていてくれたら
 それで十分なんだ」