「One More マシュマロ通信」山本ルンルン先生にインタビュー!その5 | コンペイトウ書房★日本の小粋な大人のための無料コミック

「One More マシュマロ通信」山本ルンルン先生にインタビュー!その5


山本ルンルン先生(以下、ルンルン):
新聞部のメンバーは、最初の設定では7人ではなく5人だったんです。 
さらに、今はいないキャラもいたんですよ。
メンバーのキャラ設定も、今とはちょっと違うものでした。
例えば、クローブは音楽オタクじゃなくて何でもメカを作っちゃうとか博士みたいなキャラ。
ジャスミンも見た目黒髪のもっとくるくるした髪型だったし
もう少し普通の……気立てのいい普通の女の子も出すつもりでしたね。
クラウドは魔法使いで、魔法のステッキみたいなのを振ると
7人の神様が出てきて願いをかなえてくれるという設定でした。

コン平(以下、コン)えっ、そうなんですか!?
なんでこんなに設定が変わったのですか?

ルンルン:最終的に、なんでこうなったのか忘れちゃいましたが(笑)
結果的には、シナモンが一番暴走しましたね
あそこまでいっちゃってる子にするつもりは無かったのですが‥?。
作っていくうちに、それぞれのキャラの濃さが
だんだんと過剰になっていきましたね。

糖子:でも、この街で起きる不思議な現象に
彼女のキャラクターが一番マッチしていますよね。

ルンルン:確かにそうかも。
ただクラウドは自分でもいじめすぎたかなあって思います(笑)
読者の方がイラストを描いてネットにアップしてくれているのを拝見することがあるのですが
イラストのなかで、クラウドはよくサンディにいじめられてますよ。
みんなクラウドを見たらいじめたくなる気持ちが
むらむらとわき上がるんじゃないですかね。

糖子:漫画の中のマスコットキャラって
それほどにひどい目に合うことはないと思うんです。
むしろひどい目にあうのは主人公、というケースが多いように思いますが‥?

ルンルン:確かに。突然やってきたマスコットキャラに
使命を託されたり、お願いをされたりして、やたらと振り回されるのが普通ですよね。
それと全く逆のことをやっていたんだ(笑)、全然気づかなかった。

コン:ドラえもんだったら未来に帰ってますよ。

ルンルン:やっぱりそこがクラウドの可愛いところなんですよね。
本人も何で来たのか分かってないし
帰りたくてもどこに行けばいいのか分からないし。

糖子:役立つわけでも役立たないってわけでもなく
四次元ポケットもないし飛べるわけでもないし

コン:ただ可愛いだけの生き物ですね。

ルンルン:本人もそこにすら気づいてないですもんね
自分が果たして可愛いのか。

コン:でも最終話では、クラウドはちょっと重要な
ポジションにいますよね。 

ルンルン:サンディにとって、
特に役にも立たない、可愛いだけのクラウドが来てくれたことで
何が起きたかというと、彼女はすごく人間的に成長できたんです。
そういう気持ちをみんなにも味わってほしいし
あわよくば、読んでいるあなたのところにも来るかも? 
という思いも、最終回にこめました。

コン:他の新聞部のメンバーが大人になったその後についても
触れられていますよね。

ルンルン: ルンルン: 新聞部のみんなは、
みんな自分のやりたいことが明確なので、迷いがないですね。
実際はもっときっと悩んだり、興味の対象が変わったり、
いろいろあると思いますけど。
あと、これを描いていたときと、今現在と、
世の中の状況も変わっていますよね。
昔ほど外国とか都会に憧れて、
なにかを成し遂げたいって気持ちを抱いている人は減って、
地元で、家族を大切にしながらゆっくり生きたいって人が
増えているという話も聞きます。
実際はどうなんでしょうね。

コン:二極化している気がします。
やりたいことをやるために頑張っている子もいれば
早く会社をやめて、お嫁さんになりたいって子もいる。
もちろん、それぞれ大変なこと、幸せなことがあるし
決して比較できることではないですが、
夢中になれることが見つからない人は多いんじゃないでしょうか。

ルンルン: ルンルン: 中には「好きなことを見つけたい」って
頑張っている子もいますよね。
みんながみんな、好きなことや夢中になれることがあって、
それに向かって突き進むべき
なんて、脅迫観念的にそう思ってるのだとしたら、
つらいです。

コン:ないはないでいいと思うんですよね。
不思議なのは、みんなどこかで
「何者かになりたい」っていう欲求だけは持っている。
夢中になるものがあるべきだって。

ルンルン: 「マシュマロ通信」を書いてたころは、
そんな気持ちもあったと思うんですよね。
みんな好きなこと頑張ろうよ、という気持ちが強かったように思います。
でも今はちょっと違うかな?
「こうあるべき」なんてことはひとつもないと思うし良い悪いもないので
人と違うことであせったり、危機感を覚えたりすることはないと思います。

コン:今回の「One More マシュマロ通信」にも、そういう回がありましたよね。
バジルが好きな男の子に振り向いてもらいたくて、
でもそのために自分を変えるのは……っていう。

ルンルン:あれは、当時の路上詩人ブームがちょっと嫌で、
いじわるな気持ちで描いたふしがありますね(笑)。
路上詩人の人が嫌ってわけじゃなくて、
むしろ詩を書ける人にはあこがれがあるんですけど、
ブームになると、それを茶化したくなってしまうんです、すみません。

糖子:新聞部のみんなは、強烈に自分を持っているキャラたちですね。
ジャスミンの「うそやごまかしをいいたくなかった」というセリフにも
よくあらわれていますよね。

ルンルン:漫画家になり立ての頃って、
自分の書きたいことしか見えてなくて
あんまり読んでくれている人のことまで気が回らなかったんです。
でも「マシュマロ通信」を書くようになって変わってきたかなあ。
小学生って、自分が通ってきた道でもあるけど、当時自分が感じてたこととかを
今の小学生の子たちにもリアルに感じてもらえるか、気にするようになってきて。
でも読者の子からのお便りを読むと、友達のことで悩んでいたり
学校や家庭で楽しいこと、悲しいことについて書いてあったり……。
その内容が今も昔もさほど変わらなくてほっとしました。
読んでくれる人のことを気にしすぎてもいけないけど、そのへんはバランスですね。
自分がおもしろいと思ったことを、同じように感じてもらえたらうれしいです。

コン:そんな多感な時代を過ごしている小中学生や
自分探しに疲れた人にも読んでほしい漫画だなあと思います。 

糖子:今回収録した7作+かきおろし以外にも
じつはまだ9作未収録作品があるそうですね。
「それが載った続刊が出るかどうかは売上しだいとなるようです」
と、あとがきにありますが…(笑)

ルンルン:ホント、世知辛い話ですみません。
オールカラーなので、どうしても赤字になりやすいんですよね。
10巻が前の出版社さんから出せなかったのもそれが理由で…。
この本を出す時も、9巻が出てから7年もたってるので
読者の方に受け入れてもらえるか、すごく心配だったんですが、
ツイッターなどを通して応援をたくさんいただいて勇気が出ました。
いまは今回収録できなかった作品も、ぜひ世に出したいと思ってます。
よろしくお願いします!

コン: この本は、大人が子どもにプレゼントしても面白いし
大人が大人にプレゼントするのもありですよね。
先生、すてきなお話ありがとうございました。

ルンルン:こちらこそありがとうございました!