栄監督と伊調選手のパワハラの問題で見逃してはいけないのは、伊調さんは何といってもオリンピック4連覇の実績を持つ実力者で国民栄誉賞にも輝く有名人だ。

 彼女をバックアップする人は沢山いる。現に強力な協力者が彼女の現状を含めて協会の対応を見るに見かねて、代わりに声を上げてくれた。ハラスメントの事件発覚としては極めて異例で特殊なケースだと知らねばならない。

 彼女と同じ扱いを受け、輝かしい戦績を残せず、ハラスメントの屈辱に耐えきれず、夢をあきらめただけでなく、人生に目標を失い特別な体験を強いられて精神を病んでいった人が、声になってはいないが少なからずの人数いたと想像できる。

 私がハラスメントは罪だという理由はそこにある

 確かに傷害や表立った事件としては扱われていないが、あえて被害者といえる弱者が、レスリング界だけでなく、加害者の横行に苦しんだり、渦中にあると考えた時、この事例のような「告発」が隠れたハラスメント(犯罪)を解決する有効な方法であることが今回明らかになった。

 しかし、伊調選手ほどの実績があり、二年後も期待される実力者は被害者としては特別で、大抵のハラスメントの被害者はバックアップしてくれる取り巻きは少なく、しかも微力であることが多いから結果、我慢し泣き寝入りすることになるのが悲しい実情だ。