「・・・な~んかにおうんだよねぇ」
江戸川弁護士が天を仰ぎながら言いました。
(この人、、、さっきから何を言いたいの???)
私「あの、、、何でしょうか?」
江戸川弁護士「あ、いやね、ここ、ちょっと見て」
江戸川弁護士は「不動産査定報告書」の地図、区画図のページ、3ページ目の左上を指差しました。
私たちは一斉にそちらに注目しました。
3ページ目の左上、区画図の枠外に小さく、およそ2mmにも満たない小さな文字で
「202306061417」
と12桁の数字が記してありました。
新木弁護士「・・・これは… 日付? のようですね」
天海弁護士「ええ… そのようですね」
私「あ! ほんとだ… (今まで全然気がつかなかった… )
えっと… 2023年6月6日、、、これは… 14時17分てこと?!」
江戸川弁護士「…ええ、この区画図が出図された日時だと思いますよ」
「通常、不動産の個人情報っていうのは機密情報として取り扱われる。よってこういったの資料は必ず出図した日時が入ります。
このA不動産会社内では、どの端末から誰がログインして出図したかまで判ると思いますよ。
そして通常、こういった個人情報資料の出力は即日発行… って訳にはいかないでしょう…」
江戸川弁護士は小さくため息をついてから言いました。
「私が何を言いたいかと言うと、ご主人はこの資料が出図される6月6日の数日前… もしくは1週間ほど前にA不動産会社へ見積もりを依頼したのではないか、ということ。
・・・奥さん、あなたが家を出た(追い出された)日は何月何日でしたか?」
私「…5月29日です」
だんだんと心臓がバクバクと速くなっていきます。
何だか見てはいけないパンドラの箱を開くようで…
江戸川弁護士「ちょっとカレンダー取ってくれる?」
新木弁護士「は、はい!」
新木弁護士は急いで立ち上がり、カウンターにあった卓上カレンダーを持ってきました。
江戸川弁護士「えぇと、5月29日は… 月曜日ですか」
私「は、はい」
江戸川弁護士「まぁ、おおよそ1週間前ねぇ…
にしても臭いなぁ、、、
どんな事情があったとしても、これまで一緒にいた奥さんが突然家を出て行ったら…
大抵の人間は、大変動揺するはずです。
とてもじゃないけど、普通の精神状態でいられるもんじゃない。
冷静に自宅の見積もり依頼なんてできませんよ。普通はね。
そもそも、県内に多数ある不動産会社の中で、どうしてこの "A不動産会社" を選んだんでしょうか。
いや、もちろん悪いところではないように思いますが、一般的に考えると事前にいろいろと不動産会社を調べますよね? 自宅の売却なんだから。
ただ… いつの間にこの会社にたどり着いて、この会社のことを調べていたんでしょうか。
・・・そして本当に1人で調べたのでしょうか。
奥さん、あなた5月22日まではいつも通りで、翌日の5月23日にご主人が突然全て変わってしまった… とおっしゃいましたね。
それからたかが1週間程度で、どうしてここまでできるのか… 少し奇妙ですね、、、
う~ん、例えば仮説ですが、豹変する数日前…
5月20日とか21日とか…冷静な精神状態の時。
つまりこの旅行中に既に何か企んでいたんじゃないんですかね?
自宅を見積もり査定に入れるだなんて、動揺したり落ち込んだりしている心理状況下で冷静にできることではありません。
…まるでこうなることを予想していたような動きだ。
・・・そして、本当に "1人で" ここまでやったのかなぁ… 」
!!!!!!!!!!!
(ま、まさか、あいつ、、、、、、、、、)
江戸川弁護士「あぁ、すみません、あくまで私の仮説ですがね、、、
・・・にしてもな~んかにおうんだよねぇ」
♪チャラチャーラーラーチャラ チャーラララ~
・・・その時です。
名探偵コナンのテーマ曲がどこからか流れてきました。