・・・続いて、江戸川弁護士は机の上にあるA不動産会社の自宅の「不動産査定報告書」を手に取り、1ページ1ページじっくりと中を見始めました。
江戸川弁護士は何故か2~3ページ目にある自宅周辺の町内地図と区画図をじーっと見ていました。
この「不動産査定報告書」には、自宅の査定額が算出されています。
他にも自宅周辺の地図や区画図、所有者情報などのページもありますが、これまでの法律相談では弁護士はだいたい自宅の "見積もり金額" だけちらっと見て確認するぐらいでした。
(?????
このおっちゃん、さっきから何で地図をずっと見てるんだろ?? 何に食いついてるんだろ??)
江戸川弁護士「あなたのお家は○○番地だから、この区画で間違いない?」
私「あ、はい、この角のところですね」
江戸川弁護士「お隣さんは三谷さんと村山さんですね? こちらはどのような家族体系なの?」
私「どちらも年配の老夫婦の方です。村山さんは私たちが引っ越してくる前にご主人が亡くなられたようでお一人です」
江戸川弁護士「そうなんですね、どんな方たちなの?」
私「あ、すごく親切で優しい方たちです。たまにお野菜もらったりもしていました。
特に村山さんはお一人なので、昨年大雪の日、夫はお家の前まで雪かきをしてあげていたり… 仲良くさせてもらっていたと思います」
江戸川弁護士「そうでしたか。
・・・で、この右の側道、あなたの家に接している道は… 細いけど公道?私道?」
私「あぁ、それはいちおう公道なんですが、車は通れないんです。でも駅までの抜け道や近所の人の散歩ルートで人や自転車はよく通りますが…」
江戸川弁護士「・・てことは、このあなたのお家の前の道が~ に突き当たって、~~ にぶつかるわけね。
突き当たりになるわけだ」
「そもそもさ、何でこの町に土地を選んだの?誰かご親族でも?」
・・・・江戸川弁護士の尋問が続きます。
(あの~~、それ、何か法律的に関係あることなの?? さっきから、えらい地図とか区画図に食いついてるけど… 世間話みたいな感じだし…
そのへんのページは一般情報だから、どうでもよくない??
・・・このおっちゃん… 大丈夫かな… )
私はだんだん心配になってきました。
もっと不動産のお金の事とか専門的なアドバイスが欲しかったから。
見積もり額の妥当性だとか、残金がきちんと私の口座に返金される可能性だとか、気を付けるべきこととか…
さっきから江戸川弁護士が私に聞いてくるのはおおよそ専門的ではない、個人情報ばかりなのです。
・・・・・・
すると、
「う~~~ん」
と言って、江戸川弁護士は天を仰ぎました。
私「・・・あの…?」
江戸川弁護士「う~~~ん、なんだかなぁ~」
「所長、それがどうかしました?」
今度はしびれを切らした天海弁護士が訊ねました。
江戸川弁護士「・・・な~んかにおうんだよねぇ、これ」