猫背気味のホソダマネージャーが小さい声で挨拶しました。
「マネージャーのホソダです。
奥様、どうも初めまして。
あ、ともきくん、どう?  転職して元気でやってる?」

一体本当に心配してるのかしてないのか判らない無気力な軽い感じで、ともきのことを訊ねられました。
 

私「えぇ… まぁ…  
あの、そのことで本日ご相談がありまして… 
ちょっと、ここでは何ですが… 」
 
ホソダさん「え? あぁ、じゃあ2階の会議室に参りましょうか。こちらへどうぞ」



ホソダマネージャーに案内され、私は2階の会議室へ通されました。



私「改めまして本日はお忙しいところお時間いただき、すみません。
実は、少し、ご相談と言いますか…  困っていることがありまして…
突然伺って申し訳ないんですが…」


ホソダさん「何でしょうか?」
 

「実は・・・」と、私は事の詳細をかいつまんで話しました。
5月20~21日に隣県のB県に夫が旅行に行っていた。その直後から体調不良に続き、精神的に突然おかしくなった。別居、家の売却、離婚を切り出され大変困っている。
そして一緒に旅行に行ってたのはタナカさんだと聞いている。

何か急激に都合が悪くなった理由が判れば教えて欲しい。
タナカさんに電話でいいのでお話を聞くことは可能か、許可をいただきたいと伝えました。



離婚やら売却やら別居やら、重々しいワードを出してしまったのでビックリされるかと思ったのですが、ホソダさんは一瞬ポカンとして



「はぁ、、、 ともきくんはそういえば昔も二日酔いとかで体調不良の時ありましたね、飲み過ぎとか?  そんなんじゃないすか?」


と相変わらず気の抜けたような気だるい感じで言いました。




私は若干 (いやかなり) イラッとしましたが、
「あの… 体調不良というか精神的なところを心配しております。ご存知かと思いますが、主人は穏やかで温厚なタイプの人間です…
離婚、新築の家の売却を勝手に押し進められ、私は家を半強制的に追い出されたんです!
驚かせて申し訳ありませんが、あの主人が人格豹変した状態です。本当に困ってます。
直前まで会っていたのが御社のタナカさんだと聞いていますので、何か知っていることがあったら教えていただきたい、そういう気持ちで今日伺いました」
と怒りを噛み殺してなるべく丁寧に伝えました。






ホソダさん「はぁ・・・」
「で、どういう意味ですか?」






・・・・・・
会話を始めておおよそ5分。
これは一生噛み合わない。
私はここでえらいものをひいてしまったと激しく後悔しました。

(せめて感情を分かってくれる女性社員だったら・・・)






誰か言っていました。
「最初に感じた違和感というものはたいてい正しい」と。



また、夫が1年ほど前に職場の話をしていた時
「今の上司がさー、なんか"使えない人"なんだよ。悪い人じゃないんだけど、なーんかピントがずれてるんだよね。
連休前の1番忙しいときにコロナの濃厚接触者になったり、社長と面談の日に車がパンクして遅刻したり、キャリアはあるのにクレームがよくあがってるし…  ま、悪い人じゃないんだけどねw」
と言っていたのを秒で思い出しました。
 


 そして、私は今、この目の前にいる男こそが
まさに当該人物 「使えない人」 であることを100%、いや1000%確信したところです。