2023年6月24日(土) 晴れ
約束の13時直前に着くように、自宅に向かいました。
今まで掃除なんてしたことがなかった夫が、珍しく家中、掃除機をかけてたようでした。
夫とお互い無言のまま時間が過ぎ、暫くすると不動産屋さんと思われる男性がチャイムを鳴らします。
「ピンポーン」
誠実そうで仕事ができる印象の50歳ぐらいの男性が、玄関で名刺を渡し自己紹介をしてくれました。
「A不動産の北(きた)と申します。本日はよろしくお願いします」
名刺には"代表取締役"と書かれていました。
小さい会社なので社長自ら業務をこなしてるのでしょうか。
夫は、私以外の第三者に対してはいつも通り優しい笑顔で温厚な人格のままのようです。
にこやかに「こちらへどうぞ」とスリッパを出し、ダイニングテーブルに案内していました。
「失礼いたします」
北社長はテーブルに座り、私たちは向かいに並んで座りました。
北社長は、私たちの普通ではない異様な空気感を察知してか、すぐに自宅売却の資料を取り出し不動産売却の流れについて説明を始めました。
夫の半径30cm内にいるのは1ヵ月ぶり。
先月までここで仲良くご飯を食べていたのに。
家族なのに家族じゃない。
隣にいる人は誰なんだろう…
不思議な気持ちで横目で夫を眺め、「ともき髪伸びたな」「この人、背中痩せた?」とぼんやりと考えました。
こうやってまた知らない2人に戻っていくんだ。
専門用語が多く、今の私の精神状態では全く頭に入ってきません。
適当に北社長の顔を見て頷いたり相づちを打ったりして30分程度話を聞いていました。
その後、北社長は「お写真を撮らせてください」と言って何枚か写真を撮っていかれました。
床暖房設備やキッチン、水回りの機能設備の確認、2階も部屋数をチェックして、
「まだ1年… 新しいし、和モダンでいいお家ですね」と言いました。
そんな事を言われてもどう反応していいのか判らず、気まずくなった私は思わず目をそらしました。
夫はいつものように「ありがとうございます」と温厚な笑顔で答えました。
(信じられない・・・・・・)
北社長は、「では、また見積もりができたらご主人にメールで連絡します」と丁寧に頭を下げて帰って行かれました。
この家で夫と2人になりたくなかったので、北社長の後を追うように私も早々に家を出ました。
(苦しい、、、 辛かった・・・・・・・)