俺には大大大大っ嫌いなヤツがいる。
そう今、俺の夢の中で高笑いをしているあいつ。
俺の彼女を蹴飛ばしているあいつ。
俺の両親を殴っているあいつ。
俺の親友を階段から突き落としているあいつ。
あいつはいつも、俺のなにかを傷つけていた。
夢の世界だけの話であったなら、どれほどマシだっただろう。
でも、やめてくれ、と叫ぶことのできない俺のほうがよっぽど最低なんだ。
・・・・・・・・・・・+
蒼井虎歌(アオイ コウタ)という学園最強の男がいる。
その男、監査委員長であり、現生徒会長のご友人であらせられる蒼井虎歌サマは、その完璧な容姿、ステータスから、全生徒から一目置かれるお方である。
そして、俺、広報委員長はその蒼井虎歌サマの幼なじみである。
「と、まあ・・・そういうわけだ、一年生諸君」
「いや、蒼井くんよ。君の名字について一年生諸君は聞きたいと思っているんだよ」
「大重(オオシゲ)っち、俺を名字で呼ばないで!全身に変な湿疹が大量発生しちゃうから!」
「はあ・・・。白世(シラセ)はやっぱり秘密にしちゃうわけだ、蒼井様との関係」
俺、蒼井白世の親友、広報副委員長、大重正貴(マサタカ)がいつものようにため息をつきながら広報室の巨大ソファに寝転がった。
そのソファの周りに姿勢良く並んだ広報委員の新たなメンバーである一年生たちに、俺は片目を瞑ってごめんね、と言った。
ここ、鳩羽(ハトバ)学園の現七不思議の一つらしい、俺と蒼井虎歌サマの関係について、俺は一切教える気はなかった。
幼なじみってことだけはちゃんと教えているのだから、勘弁してはもらえないだろうか。
蒼井虎歌サマ親衛隊(笑)のチワワちゃんたちに毎朝囲まれて質問攻めに合う今の状況を打破したくて、俺はそんなことを考えながら、資料に目を戻した。
一年生たちは諦めたようで、しぶしぶ広報委員会の仕事に戻っていった。
ひとまずは安心、といったところか。
俺は気づかれないように息を吐き、広報委員長としての久々の仕事に集中した。
今日は鳩羽学園の全委員会の初仕事日である。
生徒会と監査委員会は年中無休らしいが・・・。
そんな今日は、どの委員会も新メンバーの一年生と初の顔合わせをする。
生徒会は生徒選挙、監査委員会はスカウト制だから、また違うけど・・・。
と、まあ、わかりやすく生徒会と監査委員会は特別な組織だ。
鳩羽学園を統率する最高機関の生徒会が特別なのはわかるだろうが、監査委員会が何故特別なのか。
理由は、彼らが唯一生徒会と並ぶ権力を持ち、生徒会のみならず、全委員会のリコール権を持っているからだ。
つまり、鳩羽学園全体を監査するのが監査委員会の仕事なのだ。
資料をパラパラとめくり、生徒会からの新入生歓迎会に関する資料に目が留まった時、広報室のドアがけたたましい音を立てて開いた。
なんだ、広報室のドアを壊す気かコノヤロウ。
俺がドアを睨み上げると、そこには世にも恐ろしいお顔の現生徒会長、國見有真(クニミ アルマ)が俺を睨み付けていた。
おいおい、アルマジロ、いったいどうしたというんだ。
「ハロー、アルマジ・・・」
「白世っ!!!!」
「はいっ!?」
アルマジロが般若を背負いながら、ずんずんと俺のデスクに近づいてきた。
やばい、この空気はやばいよ、ヤバスギルヨ!!!!
「お前、虎歌になにを・・・。あー、いや、お前、今日のことを一つ残らず俺に話せ」
「今日のこととは・・・」
「朝起きるとっからに決まってンだろぉが」
やん、ここに不良様がいらっしゃるじゃありませんか。
いったい、何をしてしまったんだ、俺ーーーーーーっっ!!