地方創生 実情に合った具体策を

 

 有識者らの日本創成会議が、人口減少に伴う「消滅可能性都市」について予測した2014年、政府は、この問題を今後の最重要課題と位置づけ、対策として「まち・ひと・しごと創生法」を制定し、総合的な戦略を打ち出した。


 これが、安倍晋三政権による「地方創生」の端緒である。
 出産や子育てのしやすい地域社会をつくり、地方の雇用機会を創出して、人口減少に歯止めをかける。こうした取り組みに対して、異議を唱える人は少なかろう。
 だが、総務省が発表した今年1月時点の人口動態調査によると、国内の日本人は前年より30万人以上も減っている。調査開始以来、最多で、東京など6都県を除き、京都、滋賀を含む41道府県の人口減は加速していた。
 東京一極集中にとどまらず、集落、そして自治体から人がいなくなる「地方消滅」が、ますます進展しているのではないか。懸念は募る一方である。
 政府は15年、地方創生の基本方針を閣議決定した。
 自治体や官民の共同事業を支援する新型交付金の創設によって、若者の雇用創出、高齢者の移住促進、観光振興組織の設置などの施策を展開する内容だ。その後、企業の本社機能や省庁・国機関の地方移転も唱えた。文化庁の京都移転は、その一つである。
 今年5月には、中間見直しのための新たな基本方針を出した。空き店舗の解消に向けた課税強化、省庁出先拠点の設置実験、東京23区の大学定員増の抑制-が、対策の柱となった。
 それぞれの狙いは分かる。が、あまりにもバラバラで、個々の政策が、どのように関係しているのか見えてこない。
 一連の対策の大きな目標として、「60年に人口1億人程度を維持する」というものがある。
 ところが、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、このままいくと53年には1億人を割り込むとされている。
 目標と現実の隔たりが、大き過ぎる。人口減少の中でも、生活水準を維持する視点も必要だ。地域の実情に合った具体策を求めたい。
 せっかくの衆院選だが、論戦のテーマは憲法、消費税、対朝鮮に収束してきた。各党の公約を見渡しても、地方再生に向けた指針に乏しいといわざるを得ない。
 地方があって、国が成り立つ。地方の政策を、じっくり考える機会にもしてほしい。

[京都新聞 2017年10月17日掲載]