本日はゆったりまったりした作品を読ませていただきました。
最近、話題になることも多いおひとりさまがテーマのアンソロジー。
『おひとりさま信託』なんて商品が信託銀行で販売される時代ですからねぇ。(因みに葬儀から家の片づけまでやってくれますし、定期的に家にも訪問してくれるのでいい商品だと私は思ってます)
気が付けば親戚や友人にもおひとりさまになった人がいる今だから読みたいなぁと思っていた一冊です。
『おひとりさま日和』
『リクと暮らせば』 大崎梢著
夫も亡くなり、子供たちもそれぞれ独立して一人暮らしをしている。同じ一人暮らしをしている友人の家に不審者が現れたと聞く。そして通っているウクレレ教室の講師から番犬を暮らしてはみてはどうかと提案される。
犬の飼うのではなく、番犬をレンタルするという視点が面白かったです。(年齢の問題を考えると安易にペットを飼うことをできないですからね)
それがある騒動につながるのですが、それも面白かったですね。
『幸せの黄色いペンダント』 岸本葉子著
40代に購入したマンションで一人暮らしをしているナツ。体調不良を起こしたことから、操作一つで相談や119や110、警備人に連絡ができるというもの。
色が黄色で目立ちすぎるのが問題だが、安心して大好きなフィギュアの推し活をするためには必要な一品だった。
そんな時、マンションの理事会で知り合った同じフィギュア選手を押しているカズヨとつかず離れずに付き合いをしているのだが。
同じ人物を推していても同担拒否という人もいますしね。
好きなものが同じでも距離ととることも必要だよねと思わず頷く私(;^_^A
でも、そういう人がそばにいるのもいいおひとりさま生活かもしれないなぁと思ったりしましたね。
『永遠語り』 坂井希久子著
東京都で唯一の村に住み草木染めで生計を立てている十和子。師は染色家だった叔父だった。
中規模の広告代理店で働いていた十和子だったが、担当するクライアントが変わって心も体も壊してしまった。そこで静養をするために叔父のもとへ訪れて、そこで彼の草木染めに魅せられてしまったのだ。
そして、今日は恋人が訪ねてくる日、精いっぱいのもてなしをしようとして彼を待つ十和子だが、彼から思いがけない言葉を告げられて……。
恋愛であるとか結婚とかこの話を読んでいて考えてしまった(-ω-;)ウーン
切なくて、でもとても美しい作品でした。
『週末の夜に』 咲沢くれは著
蓮見頼子は教師をしている。離婚して14年。今の楽しみは週末に一人で映画を見に行くこと。
若い女教師には一人で映画を見に行くようにはなりたくないと言われたりする生活。(大きなお世話だと思うけどねぇ。私は基本的に映画や観劇、展覧会は一人で行きたい人間なんで)
その映画を見終わったときに彼女はかつて担当していた問題のあった学生の母親と出会う。問題があった夫と離婚し、その生徒も社会人として働いているということを聞いてうれしくなる頼子。
そして同じように一人で映画を見ることが趣味だということで連絡先を交換するのだが……。
一緒にいることだけが幸せではないと私も思ったりしながら読んでいました。一緒にいてさみしくなることもありますしね。そうなったら、関係は続けられないと思う。
難しいのが人生の面白さなのかもしれませんが、時には自分の孤独を自立と考えて立つことも大事だなぁとも思ったりもしてました。
『サードライフ』 新津きよみ著
終の棲家を購入してすぐに夫を亡くした千枝子。父がいなくなった今、母親が一人暮らしができるわけがないと、娘の薫は詰問するように近くに引っ越してくるように言うのだが……。
それには父の遺産を姉妹で放棄したため、母のもとにお金があること。そばに住んでいれば子供が生まれたときに面倒を見てもらうための詭弁だった。
娘夫婦の会話を聞いてしまった千枝子は夜中の内に荷物をまとめて、終の棲家に戻ってくる。
そして徘徊している女性を助けたことから様々な縁をつなぐことができるのだが、そこへ娘の薫から電話連絡があって……。
ラストシーンが痛快でした。年を取ったからって一人暮らしができないわけではないんですと私は思ってますしね♪
『最上階』 松村比呂美著
マンションで一人暮らしをしている成美は右隣の宍戸さんが段ボール箱を睨みつけているときに通りかかる。話を聞いてみると、夫の実家から送られてくる泥付きの野菜だという。
送る方は良かれと思っていても、泥のついた野菜を分けたり片づけたりするのは大変💦
締め切りも迫っていて涙目になっている宍戸から野菜を捨てるくらいならと譲り受けた成美。そして同じフロアのシングルマザーである三萩野に分けることに。
美容師である三萩野のところで野菜を分けて、キッシュやポトフをつくることになり、そこへ宍戸も呼んでみんなで昼食を。
そこからマンションの中でなにかできないかという話になって……。
こういう明るい話は好きです。きっかけはなんであれ、明るい方へ顔を向ける終わり方の物語はいいですねぇ。
楽しい時間を過ごしました。