言葉の刃「草地は緑に輝いて」 | 風信子 

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 読むことにタイミングが必要という作家なのに、出た作品は読みたくて仕方がないという小説家が、私には何人かいます。

 その一人であるカヴァン。

 彼女の新刊をようやく完読しました。時間、かかりましたね。

 

 

 「草地は緑に輝いて」 アンナ・カヴァン著

 

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 彼女の作品を読み終えるとずっしりとした重たいものを渡されたような気になります。

 それは例えば、この世界には不幸しか存在していなくて、あなたが望んでいるような幸福なんてないのだと刃のような言葉で切り裂かれる、そんな気持ちですね。

 

 それでも書くことを決してやめることがなかった彼女の気持ちは、もしかしたら自分を世界からはじき出すことだけを望んでいたのだろうかと考えてしまいます。もしくは望んでも受け入れてもらえないか?

 

 遺作となった「氷」の原形のような作品「氷の嵐」や幼い小さなオットセイが死を迎えるまでの日々を男女の視線で書き分けた「或る終わり」

 

 孤児院から里親に引き取られることになった少女が夢想する幸せな家庭の夢「小ネズミ、靴」(もちろん、夢は夢でしかないです)

 

 作品の中でまで自分をここまで傷つけなくてはならないのかと思ったりもするのですが。

 

 「アサイラム・ピース」よりは自傷行為を思わせる作品は少ないですが、やはり重たいですね。

 

 彼女が生きていたら、読みながら思うことがあります。彼女は今の世界に何を見るのだろう。

 メンタル的に弱っているときに読まないほうがいいとは思う作品集です。現在、読んでいる「チェンジ・ザ・ネーム」も、なかなかに厳しい作品です。

 

 親に愛されないで育ったカヴァンにはこうした作品しか書けなかったのかもしれませんね。

 

 明日は谷津先生の本と『無尽』が届くはずです。また日本へ戻りましょうかニヤリ