この本は紫式部自身が自らの生涯を語るという形式をとった研究書である。
序章にはこうある。
「紫式部」。名前ばかり華々しくもてはやされてものだが、その実この私の人生に、どれだけの華やかさがあったものだろうか。
平安時代のもっとも華やかな時代を生きた彼女の人生を垣間見ることは今まで避けていた分、重たく、考えさせられることが多かった。恋愛、結婚、子育て、現代以上に男性社会であった中で当時の政治の中心人物である藤原道長の娘、中宮彰子に仕えることになった彼女。彼女を知るには、私には最適なものでありました。
「紫式部ひとり語り」 山本淳子著
こちらの書籍の中では彼女の人生をいくつかの出来事に分けて書かれていて、わかりやすかったです。
彼女の人生には出会いと別れがまずあったということ。
この時代なので、母親との別れが早かったことや姉のように慕っていた人物と父親の移動に付き添ったために遠く別れてしまったことなどが彼女の詠んだ歌と共に記されています。
そして、彼女の父親である藤原為時(彼女が藤原家の血筋だとは初めて知りました)が文章堂の人物だったために、弟に漢文を教えていたのを耳学問で覚えてしまったということ。弟と比較して、彼女の方が出来がよかったために、男だったらよかったのにと言われてしまったということ……。漢学にふける彼女に無駄なことはやめなさいと言われてしまったこと。
のちのち、それが彼女の身を助けることになるとは思わなかったでしょうしね。
そして、婚姻した藤原宜孝との間に娘をもうけます。彼は疫病で死亡。紫式部は彼の正妻ではなかったですし、娘のために出家を諦めます。
その悲しみを乗り越えるために短編として源氏物語を書き出したというのですが……。
勿論、私の勉強不足なのですが、彰子のところへ出仕してから書いたものではなかったのに驚いたです
因みに人気があったという「帚木」は読んでいて、最初にアンパンチを繰り出したいと思ったところです、ああ、雅があわない
そこから、彼女にとっては顔を見られることが前提の屈辱しかない後宮へ、道長と彼の正室の倫子からの依頼では断れないですよね。(倫子さんは天皇家の方なのですよ)
そうしてはいった後宮になかなかなれることができなくて、いじめられたりとか、(いじめるほうだと思ってた、ごめんね、式部!)で、家にもどって引きこもったり。
読んでいるうちに、これは源氏にいろんなタイプの女性が出てくるわけだわとなんとなく納得しましたわ(-"-;A ...アセアセ
そうして、一条帝が溺愛していた定子が第二子の出産で亡くなり、ようやく彰子が懐妊。今もそうですが、昔は今以上に命懸けなわけで、しかも皇子を産まなくてはならないプレッシャー。しかも、定子は出産で亡くなっているわけですから。
ストレスフルな日々ですね
こうした彼女のくらした日々を細かく描かれていて、和泉式部や清少納言、在原業平等も出てきて、あーだったとかこーだったとか、本当に世界で最初の文化サロンと言うべきなのでしょうね。
ですが、一条帝が亡くなるとまた情勢は変わり、それに紫式部をはじめとした女性たちは振り回されることになるわけで、いつの時代も変わらないとなんだか寂しくもなりました。
ですが、読み終えたときにこうした環境が、源氏物語を形づくったのだと納得していました。
不思議ですね。源氏物語は一生、教科書で読んだ分でいいやと思ってましたから。(「あさきゆめみしも」読んでいないんですよ、私)
遅れ気味の「枕草子のたくらみ」も同じ先生が書かれているので重複しているところもあるのですが、それだけに読みやすかったのかもしれないです。
古典、いいですね。いままでは上代と鎌倉オンリーに近い状態でしたが(∀`*ゞ)エヘヘ
楽しいものが増えるのはいいことですね♪