このページをめくれば、
あなたのこれまでの人生の全てを失うかもしれない。
「私の消滅」 中村文則著
挑発めいたこの文章から始まるこの物語はある人物とある女性の自己についての物語なのだろうかと、読んでいて思いました。
冒頭、『あなた』と問われた人物は古びたコテージである人物の手記を読み、その指示に従い、小塚亮大という人物になるために必要なもの、住民票、保健証、年金手帳まで、入ったバッグを持っている。
そして、そのコテージに置かれた手記を読み始める。
そこにあるのは小塚亮大という人物の前半生が書かれている。不幸な少年時代を経て、保護された彼は精神科医の養子になり医師となったことなどがかかれている。
そこで、手記は宮崎勤の精神分析へと移り、オウム真理教の事件を語る。
最後にコテージに置かれたスーツケースの中から女性の死体が出て来て、というように物語が進んでいきます。
その記憶をめぐる物語でもあるのかもしれませんが、精神病棟を思わせる描写の中で主人公が他者に成りすましたり、スーツケースから出てきた女性ゆかりが出てくるシーンでは耐えがたい過去のために彼女が医師に頼んで記憶を消していたりと、読んでいて、主題がよくわからなくて
生きていれば、誰だって消したい思いもあるだろうし、小説で描くのであればよりショッキングな方がいいのかもしれません。
中村さんの著作は好きなんですが、この本は理解できないというか、言葉にならない(-_-;)
読み返せば、わかるのかもしれませんが、自分を捨てて他人になる、記憶を捨てる、という行為がどうしても理解できなくて、きれいごとかもしれないけれども、私は私でいたいなぁ。
取りあえずはしばらく時間を置いて、再読したいと思ってます。
話は変わりまして、昨日はお施餓鬼でバタバタしていたので(御住職と母の三回忌の話とかして、その時に法要の数え方がわからない! そして西暦人間の私は元号で云われると何年かわからなくて混乱! )家に帰って、ニュースを見て驚きました。アニメ会社へのテロ……。
私、この会社で作られている作品に好きなものが多いんですね。米澤穂信さん原作の「古典部シリーズ」や賀東昭二さんの「甘木ブリリアントパークへシリーズ」、来年の映画を楽しみにしていた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」( ;∀;)、大好きです。
今回の犯人が小説を盗用されたといううことで恨みを抱いだようですが、人間の考えることなんて、近いものがあって当然なので、なにをもって盗作とするかはこれから裁判などで明らかになっていくと思いたいです。
個人的には会社組織である以上、権利関係はきちんとしていたと思うので、犯人の思い込みだと推測いたしますが。
ですが、そうであっても、何があって一個人がこんな大規模テロへと駆り立てることになったのかはわかりません。
今、私にできるのは一ファンとして、京都アニメーションの亡くなられた方のご冥福と負傷された方の一日も早い回復をお祈り申し上げることだけです。
(感想より長くなってしまった💦 中村さん嫌いじゃないですよ、『掏摸』や『王国』も好きだし『A』も面白かったし、今回は合わなかったんですかねぇ、しょんぼり)