北欧神話のバルドル殺害について | 風信子 

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 いらっしゃいませ。こちらは読書日記中心のサイトになります。本を好きな方が一時楽しんでくだされば嬉しいです。

 こっそりと見続けるうちにいよいよ最終回ですか、「神あそ」


 エッダネタが最後になるわけね。


 やはりこの展開を見ていて思いだすのが水野先生の『生と死の北欧神話』だったり、する……。


 原点のバルドルの不死はバルドルが気がかりな夢を見たというところから始まります。(エッダ神話の中で『バルドルの夢』と呼ばれるものがそう)


 そこでオージンの正妻でバルドルの母である、フリッグが彼を案じて世界のありとあらゆるものに対して、バルドルを傷つけないという盟約を取り付ける。


 唯一、アースガルドの西に生えているヤドリギだけは盟約を結ばせるには若いと思ったために契約をさせることはなかった。それを知ったロキが悪心を起こし、侍女に化けてフリッグからそのことを聞き出す。(なんにでも化けるなぁ、ロキ)


 一方、不死身になったバルドルにたいして神々はいろんな武器できりかかり、神話学上バルドルいじめとも呼ばれる、ものすっごく北欧らしいんだけど殺し合いの遊戯を仕掛ける。


 一方ロキは、フリッグが唯一盟約を取らなかったヤドリギで弓矢を作り、バルドルの兄弟で盲目のホズになんで神々の遊びに参加しないのかと問いかける。


 それに対してホズは自分は盲目でバルドルの居場所がわからないし、武器もないと答える。


 ロキは場所は自分が教えるし、武器もあると言って彼にバルドルを弓矢で狙わせて、結果としてヤドリギの矢で射抜かれたバルドルは死ぬ。


 どうしても息子の死を受け入れることができなかったフリッグは自分の全ての寵愛を与えることを条件にニブルヘイムの女王ヘラから息子を取り戻すように神々に依頼する。


 この提案を受けたのがヘルモーズと云う名の神。


 彼の願いにニブルヘイムの女王ヘラはそんなにバルドルが全てのものに愛されているのならば、その証拠として生きとし生けるもの全てが彼の為に嘆く姿を見せよと条件を出す。


 ヘルモーズは全てのものにバルドルの為に嘆き悲しむように頼み、一見成功したように見えたが、最後に声をかけた巨人族の老婆に断れてしまう。(これはロキが化けた者)


 こうしてバルドルは地上に戻ることができなくなった。


 というのが北欧神話のバルドル譚ですね。なかなか面白い話ですよ。これは『バルドルの夢』だけじゃなくて他の話も読まないと細かいところまではわからないですが、『巫女の予言』はわずか数行だし^_^;


 水野先生が凄いところはバルドルが不死になったせいで世界のバランスが崩れてしまった、ゆえにかれはこのバランスを元通りにするために死ななくてはならなかったという着目点。


 目からうろこでしたね。この本自体が日本神話と北欧神話の比較論なので、イザナギ、イザナミの黄泉の下りも比較として出てきます。


 生と死はバランスが取れていなくてはならない。おおって感じでしたよ。これを読んだ時期にはすでにギルガメシュ叙事詩なども読んでいましたから、不老不死は本当にタブーなのだなぁと思いましたもん。


 生まれてくるものは死んでいくものよりもわずかに多い世界がバランスが取れていると、古代から人間は無意識に思っていたんでしょうね。


 これは本当に楽しいだけでなく、とっても勉強になった本でもありますね。


 比較神話論の本としてもとても価値が高いと、私は思っています。個人的に古事記も北欧関係はエッダやサガを読み込んでいるせいもあるのでしょうが……。


 こそこそと見るのも、あと一回か。ロキがかっこよければすべてよし!


 えー、あの、『神々の悪戯』がというより私が北欧神話で一番好きな神様なんですよね。だからです……。


注:ギルガメッシュ叙事詩は古代オリエントの神話です。主人公のギルガメッシュは半神半人の人物です。前半は英雄譚ですが、後半で彼の親友のエンキドゥが彼の為に死んだことで不死を望んだ彼はその方法を求めて世界中をさまよいます。ようやく不死は無理だが、不老を与えることができる薬を持ったある老人(ノアの箱舟のノアのモデルの人物)と出会い、薬を譲り受けるのですが、彼はその薬を蛇に呑まれてしまいます、という話ですね。



『神あそ』で北欧神話に興味をもたれた方に紹介。こんな本がありますよ。(既に絶版のものもありますが、読んでみるのも面白いかと。



これはアイスランド語の勉強にもなりますし、かなり以前に購入しました。これは一般向きではないですが、直接古アイスランド語で作品に接することができるのはやはりうれしい。

巫女の予言―エッダ詩校訂本/東海大学出版会
¥5,940
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この新潮社の本が一番、お勧めです。谷口先生の翻訳も素晴らしいし、北欧神話を知りたいならこれを一冊読んでおけばOKですね。

エッダ―古代北欧歌謡集/新潮社
¥2,808
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山室先生のお勧めの一冊。でも、こちらは出版社が倒産していますので、古書で探していただくようになると思います。(私は初版で持ってますが)

サガとエッダの世界 アイスランドの歴史と文化 (現代教養文庫ライブラリー)/インタープレイ
¥価格不明
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おそらく一番最初に翻訳されたものです、なので間違いも多くてあまりお勧めではないですが、

手に入りやすいのはこちらでしょう。

中世文学集〈3〉エッダ;グレティルのサガ (ちくま文庫)/筑摩書房
¥929
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エッダとサガ―北欧古典への案内 (新潮選書)/新潮社
¥1,258
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これはロシアの研究者が書かれたものです。現在、アイスランドでは古代北欧神を信じることが法律で認めています。オージン教というのはそれですね。全世界にそれなりに信者はいるそうですよ。(ちなみに私は信者じゃないよ)
オージンのいる風景―オージン教とエッダ/東海大学出版会
¥3,240
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一緒にギリシャ神話も読めるお得な一冊ですが、如何せん北欧はおまけです(笑)

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)/岩波書店
¥972
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北欧神話の世界―神々の死と復活/青土社
¥2,592
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生と死の北欧神話/松柏社
¥2,592
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北欧神話/東京書籍
¥1,886
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ゲルマン神話―北欧のロマン/大修館書店
¥2,700
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アスガルドの秘密―北欧神話冒険紀行/東海大学出版会
¥4,536
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北欧神話と伝説/新潮社
¥1,888
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ここで紹介させていただいたのは、私が持っているものの一部です。(これにヴァイキングとアイスランド、アイスランド語、サガを入れるとそれなりにはなるとは思います)


さすがに全部は紹介できないので、それから私がこちらを集め始めたのは大学生になってアルバイトをするようになってから、なのでお値段的にはなんでこんなに上がったのと云うものもあります。


岩波なんて高校生の時に買ったから、かなり古いかな。当時、友人と北欧ではなくてケルト関係の本を探しまくって、たどりついたのがこれ。


クーフーリンなのか、クフーリンなのかが知りたくて(笑)

今も謎のままです。なんでこだわっていたか、おわかりの方は通ですよ。


横道にそれちゃったけど、北欧神話で閉めてくれるのは私個人としてはうれしいかな。