ずっと死ぬ事を考えていた。
これと言った理由も無く、ただ死にたいのだ。

そんな馬鹿な。
甘えるんじゃない。

言われて当然。

だけど、死にたいのだ。
漠然と「死」に憧れを持つ。
死んだ自分が愛おしい。

もちろん後の事など考えもしない。

残された人達の悲しみ。
それは、今のワタシの悲しみよりずっと大きく、深く、一生背負っていかなくてはならないものになるだろう。

頭のどこかで考えているはずなのだが、
すぐに消えてしまう、いや消してしまう。

運転中に、声が聞こえた。
とても耳に心地よい声だった。
男性の低い穏やかな声。

「こっちで待ってる。いつでも来てください。
恐れることは無い。今よりずっと楽になれる。
悲しみも苦しみも無い。あなたが望んでいる世界です。
やりたい事が済んだら、来てください。」

その瞬間、フロントガラスに黒い影が過ぎった。
左にハンドルを切った。
ふと我に返り、「まっすぐ前を向かなくては」と言い聞かせた。

今度は、気が付いたら右の車線をまたいでいた。
右にハンドルを切った事さえ分からなかった。
隣の車線に車がいたら、確実に当たっていただろう。


死ぬ前にやりたい事
一つ目

煙草が吸いたかった。
禁煙して12年、一回も吸っていなかったが2本吸った。

美味しかった。
思いっきり肺の中に煙を吸い込んだ。
鼻からも煙を出してみた。
久しぶりの充実感を感じた。
これで一つ目が終わり。