ある日、太郎は数人の友達と近所の公園に行った。
楽しく鬼ごっこをして遊んでいるとき、公園の隅っこで黙々と土を掘り返している少年を見つけた。
その時太郎は、特に気にも留めなかった。
しかし、その子は、一時間たっても二時間たっても、ずっと土を掘り返し続けている。
さすがに気になった太郎は、友達を集め、少年のことを言ってみた。
太郎「ねぇ、あの公園の隅にいる小さい子見える?」
友達A「見えるけど、それがどうしたんだ?」
太郎「あの子、僕たちが公園に来てからずっと土を掘ってるんだ。」
友達C「ははは。きっとここがおかしいんだよ。」
友達達は頭を指しながら笑っていた。
友達B「ちょっとからかいに行ってこようぜ。」
太郎「さすがにそれはやめとこうよ。近くに親がいたら面倒だし。」
友達B「大丈夫だって。親がいても何とかごまかすよ。」
そういって4人は少年のところへ向かった。
友達B「ねぇ、君。そんなところで何をやってるんだい?」
少年「マインクラフトだよ。知らない?」
友達A「それってゲームだよね?ここは現実だよ?」
4人は笑い転げた。
少年「知ってるよ。でもそんなに現実でマインクラフトをすることがおかしい?」
友達B「はいはい。いつまでもゲームの世界にいないで、現実に戻ってきましょうねー。」
友達C「やめてあげろって。まだおこちゃまだからわからないでしょ。」
少年「子ども扱いするな!もう怒った。お前ら覚えとけよ。」
友達C「あー怖い!まあまあ落ち着いて。じゃ、マインクラフト頑張ってねー。」
笑いをこらえながら友達達は、戻っていった。
しかし、太郎はどうも笑えないでいた。
実は、太郎も小さいころマインクラフトごっこをよくやっていたからだ。
どうも少年がかわいそうになり、太郎は声をかけた。
太郎「大丈夫?なんかごめんね。」
少年「大丈夫だよ。なんでお兄さんはあいつらと一緒に僕の事馬鹿にしなかったの?」
太郎「僕もね、小さいころ、よくマインクラフトごっこをやっていたんだ。」
少年「だから昔の自分を思い出してってこと?」
太郎「まあ、そんなところかな。本当に馬鹿にしちゃってごめんね。」
少年「お兄さんが謝ることないよ。それにあいつらはあとで懲らしめてやるから。」
太郎「まあ、ほどほどにしてね。」
友達A「おーい、太郎。そこらへんにしとけー。」
遠くから呼ぶ声がした。
太郎「そろそろ帰らなきゃ。また会おうね。」
少年「うん、またいつか。」
翌日、また4人で公園へ行くと、またあの少年がいた。
太郎「また、あの子いる。ちょっと不気味なんだけど、、」
友達C「大丈夫だって。あんなのただのアタオカだよ。」
友達B「ちょっと今日もからかいに行ってきますか。」
太郎「あ!ごめん!ちょっと用事思い出した!」
友達C「あ~まじか~。」
太郎「ごめん、ちょっと今日は帰るね。」
友達A「わかった。じゃーねー。」
そう太郎は嘘をつき、こっそり木の陰から少年と友達達を見ていた。
少年へ近づいていく友達達。
何かを話しかけ、笑いあう3人。
少年の悲しそうな顔が遠くからでも見える。
太郎は自分の無力さを痛感した。
友達を止められなかった自分をもどかしく思った。
でもなかなか勇気ある一歩は踏み出せなかった。
友達を失うのが怖い。
学校でいじめられたら嫌だ。
友達に嫌われたくない。
様々な思いが交差して、心の中でぐちゃぐちゃになった。
言葉に出せない感情が生まれた。
気づいたら友達も少年もどこかへいってしまってい、あたりも暗くなっていた。
僕はどうすればいいんだろう、、、
と自問自答を繰り返しながら寝てしまったのだろう。
次の日も友達と遊ぶために、友達の家を訪ねて回った。
しかし、どの友達の親も
「まだ帰ってきていない。」
と言っていた。
太郎は疑問に思った。
そんなはずはない。
数時間前、友達と一緒に学校から帰ったではないか。
太郎は少しパニックになりながら、友達達を探した。
よく買い食いしていたスーパー。
秘密基地だった森。
そして、昨日の公園。
公園には、昨日と同じように、少年が土を黙々と掘っていた。
少し穴が大きくなっているような気がした。
もしかしたら少年なら何か知っているかもしれない。
そう思い、少年へ話しかけに行った。
しかし、目を疑う光景がそこにはあった。
なんと、穴の中に小さくなったランドセルが落ちているではないか。
水があるわけでもないのにぷかぷか浮いているように見えた。
常識はずれな物体を目の当たりにして、太郎は動揺していた。
太郎「ねぇ、君。なんでランドセルがこんなに小さくなっているの?」
少年「あ!お兄さん。これはね、いらないアイテムだから、ここにドロップしたんだ。」
ここは現実なはずだ。
なぜ、こんなことが起こっているのか。
太郎は全てが理解できなかった。
太郎「本当にここはマインクラフトの世界ってこと?」
少年「うん。僕の周りだけね。」
そして、太郎はもっと驚くべきことに気が付いた。
太郎「それ、友達のランドセルだよね。」
少年「あ~。あのからかってきた奴らのだよ。」
太郎「あれ、あいつらどこに行ったの?」
少年「もういないよ。」
意味が分からなかった。
太郎「もう、、いない?」
少年「うん。もういない。」
太郎「なんで?数時間前は一緒に帰ってたのに!」
泣き叫ぶように太郎は聞いた。
少年「僕が殺したんだ。」
太郎「!?」
少年「ほら穴を見て。石が少し掘られてるでしょ?」
太郎は真相がわかってしまった。
友達達はこの少年に殺されたんだ。
凶器は石の剣で。
太郎「なんでそんなことしたの?」
少年「一人ずつのこのこやってきて、僕の事からかってくるんだもん。」
友達達はそれぞれ、帰る途中にこの公園に寄り、少年をからかっていたという。
少年「ついカッとなって、、、ね。」
少年のカラッとした態度に太郎は腹が立った。
太郎「さすがに殺すのはやりすぎじゃない?いくらカっとなったからと言って!」
太郎は涙が止まらなかった。
少年「あー。そのことなんだけど、、、」
少年は遠慮がちに言った。
少年「ゲームのマインクラフトの世界ならリスポーンするでしょ。」
太郎「だから、現実でもリスポーンするってこと!?」
太郎は少し希望を持って聞いた。
少年「そうなるはずだったんだ。でも、現実は違ったんだ。」
太郎「どういうこと?」
見えてきた一筋の希望の光が消えそうになり、太郎は狂いそうだった。
少年「現実ではリスポーンしなかったんだ。つまり人生は一度きりのハードコアモードだったんだな。」
太郎「そんな、、、」
少年が少し上手いことを言ったので、さらに太郎は腹が立った。
そして、友達がもう二度と帰ってこないという事実に絶望した。
少年「本当にごめん、、、」
太郎は腹の底からふつふつと湧き上がる怒りを抑えられなかった。
太郎「どうして、どうして、どうして殺したんだよ!」
少年の胸ぐらをつかみ、押し倒した。
芝の青いにおいが鼻を突く。
少年「ちょっと!落ち着いて!」
太郎「落ち着けるか!お前のせいで大切な友達を失ったんだよ!」
太郎は少年を一発殴った。
するとその時、パリンとガラスの割れる音が2回した。
太郎が疑問に思った瞬間、猛烈な吐き気がして、周りが真っ暗になった。
太郎は身動きが取れなくなった。
太郎「なんだ、、、これ、、、」
少年「君はいい人だから殺したくないんだ。じゃあね。」
少年が立ち去っていく足音が聞こえた。
数分後、太郎が元に戻ると、何も変わらないいつもの公園だった。
太郎は立ち上がりあたりを見回した。
なぜかとても冷静だった。
そして、穴が埋まっていることに気づいた。
その上には、友達のランドセルが、いつもの大きさに戻っていた、、、