「トムトム」という楽器がある。名前はそんなに一般的ではないかもしれない。ドラムやっていてもあまりトムトムとは呼ばない、どちらかというと「タム」って呼ぶ気がする。ちなみに「タムタム」とは呼ばない。オーケストラや吹奏楽やってると割と耳にするかもしれないけど「タムタム」は銅鑼のこと。それと区別する意味でも「トムトム」と呼ぶのがはっきりしてる。
萩さんが2001年「うたう男たち」の時に作曲した「My Favorite Tom-tom」という歌がある。伴奏は5つのトムトムだけ。「サウンドオブミュージック」の「私のお気に入り」のパロディらしいけど、三拍子ってとこ以外にあまり原型が残っていない気がする。
こんにゃく座では歌のステージでよくこの「My Favorite Tom-tom」を演奏する。今だと『タング』のツアーで演奏している。私も2015年に一度だけ参加した『ソング・シング・ソング』で初めて演奏した。
基本的にこんにゃく座でこの曲を演奏する場合に使う楽器はトムトムではなくて「ハンドドラム」あるいは「フレームドラム」と呼ばれる楽器。タンバリンと同じような構造で、薄い木製の縁の片面に皮が張られているもの。こんにゃく座の楽器はチューニングキーで調律ができるタイプで、もう生産されていないという話も聞いたことがある。貴重な楽器。
こんにゃく座ではこの楽器で「My Favorite Tom-tom」を演奏しすぎていて、座員の中でもフレームドラムのことを「トムトム」という楽器だと思い込んでいる人がたまにいる。学校公演などで聞く子供たちならなおのこと、この歌を聞いて初めて「トムトム」という名前を耳にし、楽器を目にする場合は多いだろう。
とすると、薄くて持ち運びに便利、という理由があるにせよ「この楽器はトムトムという名前です」と言わんばかりにこの曲を演奏し続けるのも教育的にいかがなものか。そんな個人的想いも長いことあったために、それから今期の『タング』ツアーと『ソング・シング・ソング』ツアーが重なってしまって楽器が足りなくなっていたために、思い切って初演に立ち返り本当にトムトムを使ってこの曲をやろう、となったのがこないだ10月頃。
やはり本物のトムトムは良い。特に座のトムトムはメロディック・タム、つまり片面のみ皮が張られるシングルヘッドのもの。なので頭にかぶることができるのだ。子供たちには「太鼓を頭にかぶっちゃダメ」とさんざん怒られたけれど、ちょうど良いサイズなんだからかぶりたくなるでしょう。
フレームドラムのように片手で持つのは難しい、そして素手で叩くのもイマイチ。なので『ネズミの涙』で使っているチャング用の紐を通して、肩や首に掛けられるようにした。そして全員マレットで叩くことにした。
この曲がもっといろんなやり方で演奏されるのを見てみたい。うまく組んでしまえば一人で演奏することだって出来るはずなのだ。実際初演の演奏の前半は酒井さん一人しか叩いてないし歌ってないではないか。