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 三蔵法師と言えば西遊記に出てくる玄奘三蔵が有名ですが、本来の意味としては経蔵(仏教の教え)・律蔵(仏教の戒律)・論蔵(経典や戒律の注釈)の全てを極めた僧侶に対する尊称で、中国の皇帝が経典を招来し翻訳した僧侶に与えることが多いです。

玄奘三蔵も西遊記のメインストーリーであるインドに仏典を求めて旅をし、帰国後唐王朝の全面バックアップのもと翻訳事業を完遂し、その功績により死後に追贈された尊称です。

中華王朝の皇帝が高徳の僧侶に贈る尊称である三蔵ですから、インドから渡来した僧侶・中国人僧侶が多いですが、弘法大師空海や伝教大師最澄と同時期に遣唐使として唐に渡った霊仙三蔵が日本人唯一の三蔵法師としておられます。

 このように仏教界に貴重な存在と認められた証拠ともいえる三蔵の称号ですが、西遊記では美人女優が演じることが多く、あるいは玄奘三蔵を尼僧と勘違いされている方もおられるかもしれませんが玄奘三蔵は美男子と伝わってはいますが女性ではありません。

ではなぜ女優さんが演じることが多いのでしょうか?

それは明・清代に庶民の娯楽であった演劇で西遊記が演じられるとき、孫悟空・猪八戒・沙悟浄をはじめ登場人物が軒並み男性ばかりになってしまいます。

これでは劇団の看板女優にふさわしい役がありませんし、重要な収入源の一つである絵姿の販売にも響いてきます。

そこでアクションが少なく、主要人物の玄奘三蔵を劇団の看板女優が演じることになったのです。

この伝統を引き継いで日本のTVで西遊記が放映されるときも夏目雅子など時代を代表する女優さんが演じているのです。

こうして見てみると仏教と東アジア地域の文化のつながりの深さをかんじますね。