そんな困難をかいくぐって成立した恋愛は、きっと、やたらと燃えるものなのだろう。
トクダくんは、
今までずっと勉強一筋。
どうやら彼女がいた経験は一度も無かったらしく、付き合い始めると
驚くほど素直に、どんどん私を好いてくれた。
そしてついに、
彼の家へ——
彼の「部屋」に遊びに行くことになる。
もちろん、
名目は「一緒に勉強」。
彼のお母さまも、
茶菓子を持参し、
きちんと挨拶をする私を見て、
少し安心された様子だった。
(今思えば、
この時点で私は
“安心できる彼女役”を
それなりに演じられていたのだと思う)
初めての来訪で、
おそらく……
キスくらいは、したのではないかと思う。
そして、
そのキスは——
甘かった。
勘違いしてほしくないのだが、
キスが上手かったわけではない。
運命を感じたわけでもない。
むしろ、
下手だった。
唇の手前で、
舌を入れていいのか、
入れてはいけないのか。
チロチロと迷っているのが
手に取るように分かるキスだった。
だが——
甘い。
とにかく、甘い。
唾液が甘い。
……桃の味がする。
一瞬、脳がバグった。
だが理由はすぐに分かった。
彼はキスの直前、
口臭を気にして
「ピンキー・ピーチミント味」を
食べていたのだ。
今はもう存在しない、
「ピンキーちょうだい
ピンキーちょうだい♪」
というフレーズで
CMが流れていた、
あの古のお菓子である。
なるほど!!!!
キスは下手でも、
唾液が美味しければ、
そこまで嫌じゃない。
私は、ここで一つ学んだ。
それから数十年後——
私のキスもまた、
桃味のタブレットによって
甘くなったのである。
(笑)
