コロナな日々201~法隆寺と中宮寺

 

●2024年5月〇日(〇) 

 

現在、わが家は大凶ともいうべき状況だが(自分は仕事で大失敗、妻は自転車で転倒して骨折、娘はクラス替えで友達・知り合いが皆無、母も転倒して怪我)、家で鬱々としていても事態は一向に好転しないため、元々予定していた通り、外出することにする。行先は、秘仏「救世観音(くせかんのん)」のご開帳のタイミングが合わず、昨秋に訪問できなかった法隆寺である。

 

朝、クルマで出発。高速入口のゲートで、突然ナビから「ETCカードが利用できないため、係員に連絡してください」みたいな音声が流れ、同様のメッセージが画面に表示される。一瞬、パニクる。係員に連絡しろと言われても、すでにゲートを通り過ぎ、本線に合流するため、加速しているところである。止まることはできない。もちろん、こんなことは初めて。

 

取り急ぎ、次のインターで降り、クルマを停車させ、ETCカードを抜き差ししたりしてみた。しかし、原因はよく分からない。そのうちにイライラしてきた。本日の外出は断念か? しかし、ETCカードが使えないんだったら、「一般」ゲートで出入りすれば良いということにようやく気がつき、再出発。高速入口に「一般/ETC」の両方可能なゲートがあったので、試しにそこにゆっくりクルマを入れると、「ETCカードが使用できます」との表示が出て(こんな表示が出たのも初めて)、無事に高速に乗れた。結局、今回のトラブルの原因は不明。やはり良くないことは続けて起こるのだ。何とも嫌な感じ。

 

ランチは、わが家得意のパン食べ放題で、イオンモール大和郡山にある「グレイスガーデン イオンモール大和郡山店」。パン食べ放題の店では、チキンステーキかハンバーグを食べることが多いのだけれど、この日はETCのトラブルがあったせいか、仕事で大失敗したせいか、単なる歳のせいか、肉系を食べる気がしない。魚系なら食べられると思うものの、グレイスガーデンには魚系メニューはない。仕方がない。禁断の「炭水化物+炭水化物」か。好きな麺類のスパゲッティ、それも一番あっさりしていて、最も価格の低い「サーモンとちりめんじゃこと大葉の和風ペペロンチーノ パン食べ放題付き」(税込1,298円)を選択。パン食べ放題で、スパゲッティを食べるのは人生初である。

 

食べてみると、細麺のあっさりしたオイルパスタで、意外に美味しい。ああ、これでいいわ。次回から、パン食べ放題では、スパゲッティをオーダーしても良いかも。

 

グレイスガーデンのパン食べ放題は、自ら取りに行くのではなく、店員さんが自席まで持ってくる。思うようにパンを持ってきてくれないことが多いのだけれど、この日は頻繁にパンを持ってきてくれた。美味しかった上位3種類は、①ニューヨークチーズケーキパン(新メニュー) ②十勝あんパン ③チョコチップメロンパン。なお、パンはどれも小さい一口サイズで、食べごたえがあまりなく(山パンの菓子パンの食べごたえのなさに似ている)、自分は25個程度食べた。

 

奈良県生駒郡斑鳩町の法隆寺へ。社会人1年目に、当時好きだった人と訪れて以来、30年以上ぶり、2回目の訪問。前回訪問時の記憶は、ほとんどない。一緒に訪れた女性は、その5年後ぐらいに自然消滅のような形で音信不通となり、今ではどこでどうしているのか全く分からない。幸せになっていると良いのだけれど。

 

南大門と五重塔。この左手に入口がある。拝観料は大人1,500円(現金のみ)。南大門は室町時代に再建されたもの。

 

五重塔(国宝)と金堂(国宝)。五重塔は飛鳥時代に建てられた世界最古の木造五重塔である。1階の内部には、薬師寺の西塔・東塔と同じく、仏教説話などの塑像(国宝)が東西南北の4面にあり、奈良時代初期に造られたものだという。

 

金堂も飛鳥時代に建造されたもので、五重塔などを含めた西院伽藍は現存する世界最古の木造建築物である。金堂内の「釈迦三尊像」(しゃかさんぞんぞう/飛鳥時代/国宝)は、法隆寺の本尊で、聖徳太子のために造られた。造ったのは、わが国最古の仏像である飛鳥寺の飛鳥大仏と同じく、渡来系の天才仏師・鞍作止利(くらつくりのとり)である。堂内は撮影禁止のため、以下、全てパンフレットを撮影したもの。

 

北側の大講堂から撮影。左(東側)から金堂、南大門、五重塔。

 

1998年に完成した大宝蔵院へ。最大の見どころは、作者不明、伝来不詳の謎の仏像「百済観音像」(飛鳥時代/国宝)だろう。像高210.9cm。「通常の仏像に比べて著しく痩身で頭部が小さく、8頭身に近い」(ウィキペディア)。実物をこの目で見ると、確かにデカくて、細く、顔が小さい。特異な仏像である。国内で制作されたらしいけれど、大陸の影響は否めない。

 

推古天皇ご所持の仏殿とも伝わる「玉虫厨子」(たまむしのずし/飛鳥時代/国宝)。今はどうか知らないけれど、自分の高校・浪人生時代、日本史の大学入試問題に頻出していた。高さ約2.2m。意外にデカい。

 

百済観音の次に有名な「夢違観音」(ゆめちがいかんのん/白鳳時代/国宝)は、山口県立美術館で行われている「奈良大和路のみほとけ」展に出展しているため、レプリカが置かれていた。残念。なお、この観音の名の由来は、「悪夢を良夢にかえてくれる」という伝説からきている。

 

西院伽藍から東院伽藍へ移動。この日は晴天に恵まれ、気温が上昇し、日差しがきつい。娘だけでなく、妻もへばり気味。暑さには滅法強いと自負している自分も、この強烈な日差しはさすがに厳しい。やっぱ地球温暖化の影響なのかもしれないな。

 

ユニークな八角形のお堂である夢殿(奈良時代/国宝)へ。

 

夢殿には、春と秋の各40日間程度しか公開されない「救世観音」(くせかんのん/飛鳥時代/国宝)が安置されている。明治初期に岡倉天心とフェノロサが再発見するまでの約200年間、約500mもの長さの布でグルグル巻きにされていたという秘仏である。聖徳太子の等身像ともいわれ、この目でしかと見たけれど、確かにそのお顔は仏像というより、おじさんっぽかった。いやマジで。なお、救世観音の写真は、法隆寺のパンフレットにも掲載されていない。

 

東院伽藍に隣接する中宮寺へ、拝観料大人600円。聖徳太子が母の穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのひめみこ)のために創建した尼寺である。

 

本堂は1968年に再建された和風の現代建築。正面から撮影してはいけない旨の注意書きがあったため、向かってやや左側から撮影。

 

本尊は「木造菩薩半跏像」(もくぞうぼさつはんかぞう/飛鳥時代/国宝)。この仏像、個人的に妙に親しみを感じるのはなぜだろうとずっと思っていたのだけれど、今ウィキペディったら、自分の子ども時代の50円切手の意匠だった。なるほど、そういうことか。

 

「天寿国曼荼羅繡帳」(てんじゅこくまんだらしゅうちょう/飛鳥時代/国宝)。「聖徳太子の母、穴穂部間人皇女と聖徳太子の死去を悼んで王妃橘大郎女が多くの采女らとともに造った刺繡、曼荼羅である」(ウィキペディア)。本堂に安置されているのはレプリカで、実物は奈良国立博物館に寄託されている。

 

法隆寺と中宮寺では、やはり「百済観音像」の特異な姿が強く印象に残った。また、夢殿の「救世観音」をこの目で見られたのは、冥途の土産である。あと、もう一回ぐらい見られるか。もしくはこれが最初で最後になるのかもしれない。

 

次回の奈良訪問は、興福寺を参拝し、「阿修羅像」を見る予定である。