【名著百読28】ポップス歌手の耐えられない軽さ

 

桑田さん、やっぱ面白いっす。

 

ようやく、読了した。桑田佳祐「ポップス歌手の耐えられない軽さ」(文藝春秋/2021年10月)。発売から9ヵ月。週刊文春に連載されていたのは、2020年1月16日号から2021年5月6・13日合併号までらしいけれど、それすら知らなかった。「高校1年の時から35年以上のサザンファン」、「これまでの人生で最も繰り返し聴いたアルバムはサザンの「Southern All Stars(1990/ジャケ写がカブトムシの交尾のやつね)」、「1988年9月に今は亡き大阪球場で開催されたコンサート「1988大復活祭」を観たことがある」、「原由子さんのご実家の天ぷら店「天吉」(横浜・関内)で天丼を食べたことがある」など、数々のファン自慢も雲散霧消してしまった。

 

やっぱ、面白いっす、桑田さん。文体は、「昭和軽薄体(初期椎名誠の文体ですな)」的な話し言葉で、ラジオ番組かコンサートのMC(トーク)をそのまま書き起こしたような感じになっている。これって、実は結構難しい。実は自分も今回、せっかくなので昭和軽薄体で書いてみようとやりかけたけど、あまりに難しくて断念したほど。「(汗)」、「(泣)」、「(ふ、古い!!)」など、カッコ書きの自己言及の多さも、昭和な感じで、シンパシーを感じる。

 

内容は、「あとがき「女房の日記」」に原由子さんが「言いたい事は、子供の頃から影響を受けたりお世話になった人達への感謝と礼賛だったようだ」と書かれている通りで、ビートルズ、クラプトン、ボブ・ディラン、Tレックス、内山田洋とクール・ファイブ、アントニオ猪木、松田優作などなどについて、熱く語っている。

 

通勤電車の行き帰りに、少しずつ読んでいったので、もう忘れてしまっているところもあるのだけれど(ハードカバー429ページの分厚い本なので)、強く印象に残ったのは次の6点だった。

 

①「メリー・クリスマスショー」(1986・1987)の時、出演はされていないけれど、山下達郎さんに譜面を書いてもらったり、アドバイスをもらったりしている ②映画「稲村ジェーン」を監督として製作したことで、とても多くのことを学び、成長している。また映画を撮ってみたいと思っている ③古今東西の映画、ドラマを観まくっている ④大阪弁に対して、そのノリとファンキーさを高く評価している ⑤松田聖子に曲を提供してみたかった。ユーミンや細野晴臣、松本隆が妬ましい ⑥京都が好き。京都が舞台の沢口靖子主演のTVドラマ「科捜研の女」の熱心なファン

 

桑田さんが考える「一番歌が上手い歌手」「日本の三大名曲」「最強の歌姫」なんていうのも、とても興味深い。

 

桑田さん的 「一番歌が上手い歌手」は、男性は尾崎紀世彦(「また逢う日まで」<1971/オリコン1位(9週連続)/作曲は筒美京平>は大名曲ですな)、女性はちあきなおみ(「喝采」<1972/オリコン2位/作曲は中村泰士>も大名曲ですな)であった。

 

続いて、桑田さん的「日本の三大名曲」は、①ハナ肇とクレージーキャッツ「ハイそれまでョ」(1962) ②笠置シヅ子「買物ブギー」(1950/作詞・作曲は服部良一先生) ③藤本二三吉「祇園小唄」(1930) さすがに、自分にとっては、ちょっと古いかな…。

 

最後は、桑田さん的「最強の歌姫」。桑田さんは、「歌姫」の条件として、①歌がうまい ②エロい ③踊りが上手い ④芝居が上手い ⑤脱げる の5大ポイントをあげ、小柳ルミ子最強説を唱えている。そして、令和の時代には浜崎あゆみに期待しているとのこと。小柳ルミ子か…。「星の砂」(1977/オリコン2位)は好きだけれど…。あゆも、自分的には、あんま魅かれない。歌は確かにうまいと思うけどね。

 

ということで(何がということなんだか)、自分も「最強の歌姫」を考えてみた。自分が思う「歌姫」の条件は、①歌がうまい ②歌声が良い ③名曲を数多く歌っている の3大ポイントである。

 

候補は、以下の通り。松田聖子、松任谷由実、白崎映美&西川郷子(上々颱風)、野宮真貴(ピチカート・ファイヴ)、akko(My Little Lover)、BONNIE PINK、大貫亜美と吉村由美のユニゾン(PUFFY)、玉城千春(Kiroro)、aiko、矢井田瞳、川瀬智子(the brilliant green)、元ちとせ、Salyu、Superfly、やくしまるえつこ(相対性理論)、ikura(YOASOBI)の16組である(番外の外国人枠として、カレン・カーペンター(カーペンターズ)、アグネッタ&フリーダ(ABBA))。

 

歌のうまさは、上々颱風の西川郷子(実際、ライブで何度も観ている)、Salyu、Superflyか。歌声の良さは、癒しのボーカルならマイラバのakko、Kiroroの玉城千春。キュートかつ知的な歌声なら、ピチカートの野宮真貴、相対性理論のやくしまるえつこ。ボーカルの吸引力なら元ちとせ、Salyu、PUFFYの亜美&由美のユニゾンも捨てがたい。名曲の多さは、松田聖子、マイラバのakko、aikoか。

 

中でも、aikoは自ら作詞・作曲を行っているだけに断トツ。名曲は「あなたと握手」(2002)、「かばん」(2004)、「ナキ・ムシ」(1999)、「初恋」(2001)、「KissHug」(2008)、「えりあし」(2003)、「カブトムシ」(1999)、「ボーイフレンド」(2000)、「アンドロメダ」(2003)、「三国駅」(2005)と、少なくとも10曲もある。どの曲も一風変わった「変な曲」かつポップであり、レノン&マッカートニーに近い天才だと、自分はaikoを高く評価する者である。

 

というわけで、自分の考える「最強の歌姫」はaikoに決定した。――などと、サザンファンなら、色々と楽しめる必読の一冊。