狩谷棭齋の『本朝度量権衡攷』の中に次のような一節がある。

 

紀の傍訓に、斛を「ヒトサカ」と訓めり。『拾遺和歌集』に、行基僧正の歌とて「百さかに八十さかそへて賜へりし乳房の報今日ぞ我がする」とある「百サカ」「八十サカ」も百八十斛にて、『心地観経』に、「幼稚の前、飲む所の母の乳、百八十石」とあるを云へるなり〔今本に、「百くさに八十くさ添へて」とあるは誤りなり。『宝物集』に此の歌を載せて「百さかに八十さか」とあるに従ふべし〕。

 

 『宝物集』の証歌の中に、液体を測る単位を見出して度量衡の問題として論じている。『宝物集』の利用の仕方としては極めて特殊である。こういう利用の仕方も出来るということを記憶しておきたい。

 狩谷棭齋は江戸時代の雑学者として名高いが、ここまで気づく点に敬意を表する。

 

<注>テキストは冨谷至校注『本朝度量権衡攷』1(平凡社東洋文庫、1991年8月、100頁)。