キックオフが待ち遠しい。そんな決勝戦です。オールブラックスとスプリングボクス。ラグビーというスポーツを形成してきた2チームが相まみえる。20世紀初頭、欧州をあっと言わせた二大巨人が、21世紀のフランスで激突する。歴史に残る好勝負が展開されるでしょう。




 

 ニュージーランドのメンバーはほぼ変わらず。ロックを入れ替え(ホワイトロック⇔レタリック)、プロップにネポ・ラウララをリザーブに入れてきました。バックスの主要メンバーはここの所変わりません。スプリングボクスとしてはSOのモウンガを狙いたい。ここに強いFWをぶつけて局地戦で上回りたい。ここの攻防が一つのカギとなるか。12番にはフィジカルに長けたジョーディ・バレットが控えます。

 



 ボクスはメンバーを見て熱くなりました。FW7人、BK1人という偏ったリザーブ編成。ハーフ団は9番デクラーク、10番ポラードを先発させ、リザーブにスクラムハーフを入れない!思い切った作戦を取ってきました。これまで、FW5人、BK3人という比較的オーソドックスな編成でしたが、これはもうFWが死ぬほど走りまくる決意表明に他なりません。序盤からFWがハードにプレーして、どんどんリザーブを投入して、最後の20分で走り勝ちたい。FW7人ということは一人だけ代わらない選手は誰なのか。いろいろありましたが、ンボナンビは先発。これまでの流れを考えるとンボナンビ以外の7人を交代させる戦略をとると思いますが、果たして3試合フル出場で大丈夫か、ンボナンビ。フーリーはフッカーのリザーブですが、これまでフランカーで出ることが多かった。今回はどうするのでしょうか。

 

 私の予想では残念ながらオールブラックスの勝ち。ボクス推しであることは変わりないのですが、やはり優勝回数で上を行くのはオールブラックスか。8月に惨敗していることも(この試合はレッドカードが出たので参考にはならないのですが)オールブラックス有利に作用しそうな気がします。あくまで気がします。ボクスはやっぱり得点力でやや劣るのではないかと思います。とはいえフランスの高速アタックを耐え抜いたボクスの底知れぬ強さはやっぱりあると思います。

 

 注目点はオールブラックスが「取り切れる」か。トライを取り切る力は長けているオールブラックスが攻めあぐねるようだと、試合の流れはボクスに傾きます。ボール争奪戦から、切り返しの速さ、判断の速さでボクスを上回れるか。はたまたそうさせないボクスの圧力が上回るか。

 

 もちろん、スクラム、ラインアウトのセットプレーの優劣も重要。ここでオールブラックスが崩れると、試合はボクス有利になる。ペナルティから敵陣深く入り込んだボクスがしっかりトライを取り切れるか。チャンスはそうないと思うので、少ないチャンスでゴールラインを陥れることができるか。

 

 あとはもうラッキー、アンラッキーの世界ですよ。楕円形のボールの弾み方ひとつでチャンスにもピンチにもなる。それがラグビーです。そういう部分が案外試合を左右するかもしれない。

 

 見たくないのはカードです。高いタックルや悪質なプレーでカードが出てしまうと、試合はおかしくなる。ここまでカードが左右した試合が少なかった大会だけに、最後に興醒めとなるなるようなカードは見たくない。でも、やってしまうかもしれないのも、決勝戦ならでは。

 

 熱くチームを率いるボクスのシヤ・コリシと名門の重圧を背負ってキャプテンを立派に務めあげてきたサム・ケーン。ボクスの6番とオールブラックスの7番は同じオープンサイドフランカーの背番号。6番は初優勝時のキャプテン、フランソワ・ピナールの背番号であり、ネルソン・マンデラが決勝戦を観戦したときに着たボクスの背番号も6。ボクスにとっては特別な数字です。一方、オールブラックスも背番号7はW杯連覇を果たしオールブラックス史上最多キャップを誇るキャプテン、リッチー・マコウの背番号。これまた特別な数字です。それゆえ、同じ背番号でキャプテンを務めるケーンの重圧は計り知れません。互いの「覚悟」は互角でしょう。

 

 世界ランク5位まで下がったオールブラックスがカップを奪い返して世界ランク1位に返り咲くのか。はたまた、ボクスが連覇を達成し、名実ともに「オールブラックス越え」を果たすのか。

 

 さあさあ、決戦です。