僕が小学生の頃、夏休みに田舎へ帰省していた。
午前は図書館、午後は海の日々。
父がよく、海岸より先にある防波堤へ向かって泳いでいた。
小学生の僕には足など届くはずもないその場所へ向かう父を、浮き輪につかまりながら、目で追っていく。
父の泳ぎはバタフライだった。
海中から海面へ両手を広げて跳ね上がる時、父の背中がとても広く見える。
当時泳げなかった自分は、ただただすごいと眺めていた。
先日、水泳のレッスンを受けた。
泳ぎはバタフライ。
コーチから、「ヒザを曲げすぎないで」「水面をぬうように」「力抜いて」などいろいろアドバイスを受けながら練習。
まだまだぎこちなく、25mを泳ぐのが精一杯。
浮き輪につかまりながら父の背中を見ていた時から、およそ30年。
あの時見た父の背中には、まだまだ追いついてない。