気持ち良く寝ていた頃、「バサッ」と強い風が吹き、ブルーシートがめくれて僕を覆った。
それで目が覚めた。
20分程寝ていたのだろうか。
少しでも寝られたことで、幾分疲れも取れた。
僕は再び頭に水をかけて走り出した。
ゴールまで約20キロ。
残り時間は5時間半ある。
これはいけるだろう。
そう思った。
しかし、このレースはそれほど甘くはない。
すぐに登り坂に入る。
その登りが険しい。
延々と歩く。
あと少しでゴール、そんな淡い気持ちを吹き飛ばすかのような延々と続く登る道。
このレースは、5キロ毎に標識があるのだが、80キロから85キロの標識を見るまで、1時間半かかった。
このペースでいくと、残り15キロに4時間半かかることになる。
それでは20時までの制限時間に間に合わない。
歩いているだけではダメだ。
走らないと。
そう危機感を抱いた時、下り坂が見えた。
ここからは走ろう。
そう決めて、下り坂を走りだした。
しかし、体が相当疲れている。
走りやすいはずの下りも、しばらくすると苦しくなって止まってしまう。
足も心肺も疲れている。
走っては歩き、走っては歩きを繰り返す。
道はもうひたすら下り。
山から一気に下山するようだ。
下りは好きなのだけど、ここまで痛烈に長い下りだと足への負担も大きい。
全体重が交互の片足にかかる。
右足を踏み込む度に、右足首が痛む。
ようやく山を抜け、小エイドステーションに入った。
「あと6キロですよ。もう少し。」
続けて走る気力もなく、そのエイドで座り込み休んだ。
「大丈夫ですか?」と、スタッフに声をかけてもらうも、「少し休ませてください」としか言えなかった。
あと6キロなんだ。
時間は17時過ぎ。
がんばれば18時までにゴールできるかもしれない。
僕はスタッフにお礼を言って、歩きだした。
休んだ直後は、筋肉が固くて走れないのだ。
道は平坦か下り。
走っては歩き、走っては歩きを繰り返す。
前にいる何人かを抜いた。
苦しいのは皆同じなのだ。
あと2キロという標識が見えた。
あと少し。
だが、疲れていると、この2キロさえも長く感じる。
ゴール会場のある公園が見えた。
それなのにゴール会場とは、反対方向の道へと曲がっていく。
あと1キロ。
ゴール会場からまた離れていくコース設定。
本当にどSなコースだ。
ゴールが見えた。
何人かの人が声援をくれた。
手を振って応える。
僕は両手を上げたままゴールへと向かった。
ゴール。
17時間52分18秒。
18時までにゴールできた。
![$タカヒロのなりたい自分になるブログ-ゴール](https://stat.ameba.jp/user_images/20110720/14/konishitakahiroameba/39/d9/j/t02200165_0800060011362030210.jpg?caw=800)
やっと終わった。
100マイルに参加していた仲間が出迎えてくれた。
僕のゴールを待っていてくれたのだ。
炎天下の外で感謝である。
残念ながら100マイルは途中でリタイアしたとのこと。
僕らは宿に直行して、風呂に入った。
体のあちこちがこすれた傷でしみる。
でもそんなのはもう関係ない。
ビールを飲み、夕食を頂く。
そしてようやく布団に入れる。
寝られることがこんなに幸せなんて。
僕は安堵の眠りについた。