22日夜、八王子市の駅ビルで起きた刺殺事件で、犯人が派遣社員と報道され、「え、また派遣!?」と思った人も少なくない。
記憶に新しい秋葉原殺傷事件の犯人も派遣社員だったが、事件の引き金となったのは、派遣社員の過酷な労働だという説もある。凶悪事件と「派遣生活」との因果関係があるとは思えないが、今の日本に派遣社員や、フリーターがすごい勢いで増えていることは間違いない。
「たまたま派遣社員だっただけでしょう? 派遣イコール精神状態が不安定って思われるのは嫌ですね」と、語るのは派遣生活5年の庄司容子さん(30歳)。
庄司さんは、システムエンジニアとして某大手IT企業に勤務。正社員に比較し、2割増し程度の高給をとっている。
「自分の仕事に誇りを持っているし、正社員にならなくてよかった、と思うシーンはしょっちゅうありますよ」と、胸を張る。
だが、本音を言えば、将来に対する漠然とした不安はなくはない。体を壊したらおしまいだ、技術が正社員より劣ったらすぐに首を切られる、という悲壮感は常に持っている。
関東の県立高校に通う水谷麻衣子さん(仮名・16歳)の父親イワオさん(41歳)は、いわゆるフリーターだ。
若者のフリーター化が一時期問題視されたが、最近は中年のフリーターも増えている。ホームレスではなくちゃんと家も家庭もありながら、派遣やアルバイトで食べていくしかないという人たちだ。
「父は大学を出て最初に勤めた会社が2年で倒産してしまい、人生設計が狂ってしまったようです。25歳で最初の失業をして、次に勤めた会社も1年後に倒産。それ以来、アルバイトや日雇いの仕事で食べてきたといってます。私が生まれたときは建設現場でガードマンの仕事をしていたそうです。私が物心ついたときには父はフリーターで家でゴロゴロしていることもずいぶんありました。収入もあったりなかったりで、生活は会計事務所で働いている母の収入で成り立っていました。今でもあまり変わりませんが、私は父のことを軽蔑もしてません。一言でいえば父は運がなかったんだなと思います」。
五十嵐富雄さん(仮名)は33歳。6畳と4畳半の民間アパートで独り暮らしをしている。結婚歴はなし。
工業高校を卒業して、ある機械メーカーに工員として勤めたが6か月で退社。以後、定職に就いたことはない。いわゆる「職を転々」とする人生だ。現在はガス会社の集金員として働いている。もちろん正社員ではなく2年ごとの契約だ。
「今まで20種類ぐらいの仕事を経験してきました。そのうち正社員として採用された会社は1社もないです。ほとんどが契約かアルバイト、パートです。いちばん長くもって2年とちょっと。決して飽きっぽい性格ではないし、仕事にはいつも前向きだと思っています。ただ、雇用条件になかなか合わず、ふと気付いたらアルバイト生活15年……になっていたんですよね」。
五十嵐さんは、もしできることならちゃんとした会社で、きちんと正社員になり収入を安定させたいと考えている。もちろん結婚もしたい、家族もほしい。
未だに童貞で、若い時代が何だかわからないうちに過ぎてしまい、ハッと気付いたら 30歳過ぎ。仕事で自分の個性を生かせず、恋愛もせず、こんな風にただ年を重ねていくだけなら、生きている価値もないのでは、と、時々考えてしまうという。
総務省が発表した平成19年度「就業構造基本調査」によると、正規雇用者いわゆる正社員や正職員が雇用者全体の64.4%を占めている。
次いでパートタイマーが16.6%、アルバイトが7.7 %、以下派遣社員、契約社員、嘱託と続いている。
現在の日本の就業者人口はおよそ6500万人だが、非正規雇用者の数は年々増加している。もちろんトヨタ自動車など、進んで非正規雇用者を正社員化する企業もあるが、全体の数を押し上げるほどではない。
「うちの会社、昔は就職雑誌に広告を出して、正社員を募集していたんだけど、今はほとんど正社員をとっていません。従業員は全部で25人だけど、正社員は5人です」と、語るのは印刷会社を経営する高野孝一さん(仮名・57歳)。
「正社員を雇うのは、社会保険や福利厚生費などさまざまな経費がかかり、会社にとってすごく負担なんです。でも昔は正社員雇用以外に人手を確保する手段がなかった。その点、最近はすぐにアルバイトが雇えるので、とても助かっています」。
今にも潰れそうな小さな会社にとっては、仕事の状況に合わせ社員を増減できるほうがありがたい。
最近は派遣制度が確立し、人手の確保が楽になった。一時的に人件費は割高になるが、会社経営を長い目で見れば、いつでも首を切れる派遣のほうが、扱いやすい。
「正直うちも、倒産の危機は何度もありました。でももしうちが正社員だけでやってきたのなら、とっくの昔に潰れていたでしょうね」と、高野さん。
派遣の増加、フリーターの増加は、バブルがはじけた日本の必然といえなくもない。
雇用される側も「一生この会社に勤める」という意識もなくなり、今の人たちは、根無し草生活に慣れつつあるという。
そう、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」心理だ。だが、社会全体を覆う漠然とした不安感は、日々どこかで破綻をきたし、それがさまざまな事件となって現れているのかもしれない。
(取材/XIXOX金子保知)
+++++
ほとんどの人が「派遣」を捻じ曲げて理解していると思う。
「派遣」にも様々な形態がある。
大きく分ければ、「作業系」、「事務系」、「広告系」。
作業系とは、工場など、昔でいう3Kの職場である。
事務系とは、経理や総務、コールセンター、プログラマーなどである。
広告系とは、ショールーム、イベント会場での接客に当たるものである。
作業系でが、「秋葉原事件」で禁止になった日雇い制、期間制がある。
事務系には紹介制、期間制がある。
広告系には、ほぼ期間制しかない。
これほど一口に「派遣」といっても多岐にわたるにもかかわらず、ひとまとめにするのは、非常に問題がある!
さらに言えば、「派遣」が悪いのではなく、それを食い物にしている派遣会社や企業に大きな問題がある!