室長室で薪は頭を抱えていた。
葉の香り
遠い昔、たくさんの香りを嗅いだ記憶がおぼろげながらある。
でも、あんな香りは…
「チベットに自生する、人を狂気に陥れる葉ですよ。ただ、人によってどんな化け物になるかわからない…例えば、貝沼のような…」
青木が言った
「貝沼?」
青木の顔が曇り
「あの惨劇さえ、忘れてしまったとは…」
貝沼…
薪に記憶はないが、心に大きなトゲが刺さる気がした。
「それと、薪さん」
「何だ?」
「あの天使はこの上ない、いわば 潔癖症ですよ」
「それがどうした?」
「私が以前、お仕えした方の人生をうまい具合に翻弄し、多くの人間をいとも簡単に殺した。…
悪魔の真似事をしたがる馬鹿ものです。
けして、近づいてはいけません」
「あいつも悪魔か?」
「いいえ、天使ですよ。」
天使…
「なぜ…」
「やつの口癖…不浄で消せ!とんだ潔癖症だ」
「まさか…あの女やあの司祭たち…」
「おそらく、やつです」
青木は目を赤くし
しかも、最上級に仕上げた私の美しい魂を その記憶を消し去った。
「お前が支えた主人とは誰だ」
「あなたによく似た方でした。」
そう、失ってしまった、私の宝…
私の坊っちゃん
しかし、その魂とそっくりの人間に会えるとは…
長生きするものだな