中には小柄だが凛とした顔立ちの老婦人が一人…椅子に座ってこちらを向いていた。

手前に置いてあるソファーに手招きされ、腰を下ろす。

一瞬だが机の上に真新しく置いてある名刺に目が届くと、先程の営業マンらしき男性の物だろうか…?
でも確かに名刺に刻まれた会社名は、有名な全国チェーンの大手不動産のもの…

此処っていったい…???


落ち着いた手付きで名刺を近くの戸棚から取り出したファイルにしまいながら、
緊張して固まる私に最初に掛けてくれた言葉は、

『うちの猫がね、』だった。

驚いた私をよそに老婦人は続けて、
『今年の夏は暑かったでしょう?こぉんなに伸びちゃって参ってたわよ』
と、大きく手を広げて見せてくれた。

一気に緊張が解けた私は、自分の自宅の猫の様子を話して返す。

暫く世間話をした後、馴染んだ所でこちらの要望を尋ねられ、

一通り希望を述べてみた。


続く