医学的リハビリテーションは、リハビリテーション専門医の指導でリハビリテーション看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など多数の専門職の協業によって行われる医療行為です。
さて、病気やケガの人が病院に行く目的はなんでしょうか。『医術や医薬で病気や負傷を治してもらうため』ですね。治る人が少ない病院は『あそこはヤブだ』などと言います。
ところが脳梗塞や脳出血などで、約半年間もリハビリテーション治療を受けても、痲痺した手が動くようにならない人が非常に多い。でも、自分の受けたリハビリテーションに文句を言う人は、あまり聞かないように思います。何故でしょうか。
手が動くようにならない患者は、『障害が重いから仕方がない』と言います。本音でしょうか。『障害が重いから手は動くようにならない』と医療側にインプットされているのではないでしょうか。そういう人も居られるとは思いますが、全員の障害が本当に重いのでしょうか。
『回復期リハビリテーション病棟では、患者の入院時と退院時の状態を比べ、改善度の良好な患者がどれだけいるか』で評価する成果主義が取り入れられていると聞きますが本当でしょうか。
急性期病院から、『回復の可能性がある患者』として送り込まれるのが回復期リハビリテーション病棟であると理解しています。だとすれば、スタッフ全員が一丸となって痲痺を回復させるべきであると考えます。
そして本当に日常生活活動を自立させて自宅復帰させる「自宅復帰率」を上げるべきではないでしょうか。
痲痺を回復させるには『訓練の質と量』を重視すべきですが、『土曜・日曜・祝日も休まずに訓練を行う』とするリハビリテーション病院もある。
『訓練の量』を謳うのではなく、『訓練の質』と言うか「歩けるようになった人が何人中何人」、「痲痺手が少しは動くようになった人が何人中何人」、「両手が使えるようになった人が何人中何人」と成果を示すことは出来ないのでしょうか。
もっと重要なのは、「退院後の自主訓練を指導して麻痺改善に成功した人が何人中何人」かを退院後の年数別にデーターを集めて公表出来ればと思うのですが、時間と費用の掛かることはしないでしょうね。
このような成果を公表することで、『訓練の質』を競争し合うことがリハビリテーション医療を改善進歩させることが出来ると考えるのでが、『成果主義』を取り上げると直ぐに、真の意味の『質の評価』から離れて、数字に振り回されるようになります。
脳梗塞や脳出血などを起こして障害が残っても、「リハビリでかなり回復して社会復帰を果たす人は多いし、職場復帰を成し遂げる人も多い」。このような明るい言葉を聞きたいと思っている。
光があるから前を向いて歩ける。希望をもっていれば生きていける。」というのが私達の気持ちなのです。
私は4ヶ月半の入院リハビリで杖なしで何とか歩けるようになり、痲痺の左手も補助的に使えるようになって自宅復帰し、2週間の自宅療養を経て元の職場に電車通勤で復帰しました。
リハビリテーション病院の指導で、自宅でも通勤電車内でも職場でも両手を使い続けた。そして退院から半年後には麻痺は残っているが殆どのことが両手で出来るようになっていた。
『痲痺の回復は半年で止まる』などは、事実ではありません。一日も早く、両手を使うことを始めてください。リハビリ病院ではADL向上のためにと利き手交換の訓練を含む片手動作の訓練を指導する方が回復に時間が掛かる痲痺手の訓練よりも、とにかく片手動作で何とかなるから、在宅復帰させてしまえば医療報酬のポイントが高い。
こんな考えでは、リハビリテーション医療は崩壊する。もちろん利き手交換や片手動作の訓練そのものを否定したのではありません。