663号

まだ10代だったころ、ぼくは「彼女」へのプレゼントに、
ああだこうだと悩んだあげく、1万円の傘を贈ったことがある。
そもそも予算がポッキリそれしかなかった。
もちろん、宝石だってあるけれど、1万円の品なんてたかが知れてるし、
そんなモノなら彼女が自分でも買えるだろう。
どうせなら、本当に喜ばれるインパクトの強い贈り物にしたかった。
それでヒラめいたのが傘だ。
2~3千円のものならナンてことないが、1万円の傘となったら、
メチャクチャカッコよく高級で、見るのも持つのも初めての体験になるはずだ。
普通だったらお金を持っていても、1万円の傘なんて買わないと考えた。
案の定、彼女の喜びぶりは感動もので大受けした。
そこでは、1万円が何倍もの価値を持つことになったのだ。
お金がなかったら、いいモノは買えないなんて考えは間違っている。
仕事でも、いわゆる逆転の発想が必要になると、いつもあの時のことを思い出す。


パッションナビゲーター ~素顔のままで~ より。