私のばあちゃんが亡くなってから
母は狂いに狂っていた。
あたしの知らないところで
母が泣いていたのも何度か見たこともある。
そんなある日
わが家の空き部屋に入った。
桐タンスとちっさな押し入れ。
桐のタンスには
わたしの知らない
思い出いっぱいのものが山のようにあった
個性の強いばあちゃんは
柄物の洋服や毛皮のコート、
着物やアクセサリーが大好きで
数十万もする品物をいくつか所持していた。
そう。
それらがあのタンスの中に入っていたのである。
今思えば、ばあちゃんはお洒落で
かっこいかったな。
こいこいと煙草がよく似合う人だったと思う。
ああ。
そういえば、ばあちゃんがあたしによく言ってたな。
「ばあちゃんがね死んだら
この指輪ゆかりに全部くれてやる。
これはね、ルビーので、これはアメジスト。ゆかりにやっからね」
その時は指輪の美しさなんて
分からなかったし
ふ~んとしか思わなかったけど
今となっては永遠の宝物です。
さて、年月が経って、
私は沢山の人と出会った
出会いと別れ、出会いと別れの繰り返し。
そんなこんなで、もう29歳。
ううん。まだ29歳。
高校卒業したてのころから
男がいる気配なんて全くなかった私。
片手ぐらいかな
本当に恋したの。